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<ハノキア踏査編> 62.残党の中に

<レヴルストラ以外の主な登場人物>

【エンゼン・フィグイッツ】

ティフェレト人類議会の次席マスターヒューであったがグレイアンの侵略によってマスターヒューが死亡したため繰り上がってマスターヒュー代理を務めている。本人は代理ではなく正式なマスターヒューとなっていると思っている。虚言癖があり周囲がついてこず無能な人物ではあるが上には気に入られる処世術をもっており、ホドの元老院最高議長候補者として選ばれたが、ニル・ゼントに破れた。

62.残党の中に


 「よかった‥‥」


 エストレアは腰を抜かしたかのようにその場に崩れるように膝をついた。

 スノウがあっという間に人類議会(ヒューパラメンタル)の反乱を制圧し戻ってきたからだ。

 

 「おいおい一刻の主がそんなビビリじゃこの先やっていけないぞ?」

 「う、煩いわね!あんたには分からないわよ!この重圧が!」

 「ははは!そうかもな。なので諦めて腹を括れ。何にも動じない肝っ玉女王になってみろ」

 「なによそれ!これでも繊細な乙女なんだからね」

 「ぷっ!」

 「ぶふっ!」


 スノウは思わず吹き出してしまったが、老執事も吹き出した。


 「な!なんなのあんたたち!」

 「はっはっは!まぁそれだけの元気があれば大丈夫だな。それで話を戻すと人類議会(ヒューパラメンタル)の反乱を指揮していたのはどうやら三足烏(サンズウー)らしいんだ」

 「なんですって?!まさかホウゲキが?!」

 「いや、違う。ホウゲキが率いていた三足烏(サンズウー)・烈は今回ティフェレトに来る前にホドで遭遇し何度も戦闘になったが、ホウゲキはいなくて連隊長はジラ‥‥」


 スノウは“しまった”という表情を一瞬見せた。

 かつてホドでエストレアと行動を共にし、元ガルガンチュアの隊員と名乗っていたライジは三足烏(サンズウー)・烈の第一分隊長ジライであり、ホウゲキたちとの決戦の際にレヴルストラを騙していたことを暴露し、結果アレックス、エントワを失い、ニンフィーが行方不明になった原因を作ったと言ってもよいほどの裏切りをしてのけた人物の名をスノウは軽々しく口にしてしまったのだった。

 ジライのスパイ行為を誰もが許せなかったが、一番信頼していたエストレアが最もショックを受けていたのを知っていながらスノウは言わずともよいことを口にしてしまった。


 「そう‥‥ジライがホウゲキの後を継いで三足烏(サンズウー)・烈を率いているのね‥‥」

 「だ、だが、安心してくれ!三足烏(サンズウー)・烈はぶっ潰した!生憎ジライたち数名は三足烏(サンズウー)の幹部によって連れ去られてしまったけどな‥‥」

 「そっか‥‥」

 

 スノウは気まずい雰囲気に何を言えば良いのか分からず言葉を失ってしまった。


 「ありがとう、話してくれて。それで人類議会(ヒューパラメンタル)を指揮していたのは三足烏(サンズウー)の何者だったの?」

 「あ、ああ、どの連隊なのかは分からないが素早さを武器に戦うやつらだったよ。音攻撃を使うリュラーでもスピードの追いつくのがやっとだったな」

 「そっか‥‥リュラーは実質ティフェレトの最高武力だけど、それが歯が立たないとなれば、武力、戦力を見直さなければならないね‥‥貴方たちがいてくれればいいんだけど‥‥」

 「エスティ‥‥」

 「‥‥なぁんてね!冗談よ冗談!これでもホド最大キュリアのガルガンチュア総帥だった時もあったのよ?武力増強なんてお手のものよ!」

 「‥‥だよな‥‥」


 スノウは上手く笑顔が作れずにぎこちない表情で答えた。


 「それで、人類議会(ヒューパラメンタル)の残党たちはどうなったの?」

 「ああ。サイファノス宰相に依頼してリュラーたちに追跡してもらってるよ。ゼノもいるし返り討ちにあうことはないと思うし、やつらのアジトを突き止めたら戻ってくるはずだ。その際はおれに連絡を寄越すようお願いしているから、連絡あり次第ぶっ潰してくるよ」

 「ありがと‥‥」

 「お安いご用だよ。お前はレヴルストラの一員だからな」

 「スノウ‥‥うぅぅぅ」


 エストレアはずっと我慢していた感情がスノウの言葉で一気に溢れ出てしまったのか、泣き出してしまった。


 「お、おい‥‥」

 「うぅぅぅごめぇん‥‥うぅぅ‥ずずずうぅぅ!」

 「女王の泣き方じゃないな。まったく‥‥」

 「うるざいばよぉぉぉうぅぅぅ」

 「あ、忘れない内に確認だが、ここの人類議会(ヒューパラメンタル)ってのは細々と活動していたらしいが、エンゼン・フィグイッツって人物のことは知ってるか?」


 スノウは泣いているエストレアにお構いなしとばかりに質問をぶつけた。

 それで一気に我に返って冷静になったのか落ち着いた口調でエストレアは答え始めた。


 「知ってるわ。宰相に以前調べさせたのだけど、元々はキタラ聖教会の信徒だったみたい。ソニック、ソニアも知っているはずだわ。最初は敬虔な信徒だったみたいで、当時ユーダに近い立場でも活動していたらしいの。でも野心家で虚言癖があることが分かって一般信徒扱いされたらしくて、それを逆恨みしたのか、人類議会(ヒューパラメンタル)を立ち上げたって聞いたわ」

 「立ち上げた?」

 (エンゼン・フィグイッツが人類議会(ヒューパラメンタル)を作ったってことか?いやそれはないな。カエーサルが作ったと聞けば信じられるが、そんな下っ端が作れるような組織じゃない。おそらくエンゼンに吹き込んだか、そそのかした者がいたはずだ。そしてそれはおそらくニルヴァーナや元老院とも繋がっている‥‥三足烏(サンズウー)と元老院の繋がり、三足烏(サンズウー)人類議会(ヒューパラメンタル)の繋がり、そして元老院はニルヴァーナと繋がっている。だとすれば人類議会(ヒューパラメンタル)には相当巨大な組織がバックについていることになる。エンゼンを捕まえてそれを吐かせるか‥‥)

 「エスティ、悪い、ちょっと用事が出来た」

 「は、はぁ?!」


 スノウはあっという間に窓から飛び出してどこかへ飛んでいってしまった。


 「全くもう!なんて人!」


 怒り口調でありつつもその表情には優しい笑みが浮かんでいた。


・・・・・


 ヒュウゥゥン‥‥スタ‥‥


 スノウはロゴスの感知系クラス2魔法のエクステンドライフソナーを展開し数名の生命反応を感知した場所に降り立った。

 感知した相手はリュラーのナザ・ルノスと三足烏(サンズウー)のジン・ワムという名の初老の戦士と残党だった。


 「お前はスノウ・ウルスラグナ。何をしに来たのだ?」

 「お前は確かリュラーのナザ・ルノスだったな。あのじいさんとの戦闘は止めない。存分にやってくれ。だが、その前にあのじいさんに聞きたいことがある。質問が終わったら戦って構わない」

 「勝手なことを言うな余所者が」

 「余所者扱い結構だ。おいそこのじじい!」


 スノウはジン・ワムに話しかけた。


 「アノマリーか。まさかここまで追ってくるとは。まぁよいわ。冥土の土産にお前さんの腕一本くらいは貰っていくぞ」

 「腕一本斬り落とされても再生できるから意味ないけどな」

 「戯言を。そのようなレベルの回復など‥‥なるほど。アノマリー。貴様なら出来るということか。ならばこのちっぽけでとるに足らん命はここで捨てるわけにはいかんな。我は家族を守らねばならぬからな」

 「好きにしろ。おれはお前との戦いに興味はない。こいつと存分に戦ってくれ」

 

 スノウは親指でナザを指差した。


 「ほう。では何しに来たのだ?」

 「エンゼン・フィグイッツという人物を探している。どこにいるか教え‥‥なるほど。そこにいるんだな」


 スノウはエンゼン・フィグイッツという名を口にした瞬間に僅かに肩を動かした人物に注目した。


 「なるほど。人類議会(ヒューパラメンタル)の総大将の首を取ればこの戦いを完全な勝利にできるわけだ。態々ここまで来たのも納得だ。それで、お前はエンゼン・フィグイッツがいれば我らに手を出すことはないのだな?」

 「おれは手をくださない。やるのはあくまでリュラー、ナザ・ルノスだ。おれはエンゼン・フィグイッツに聞きたいことがある。それだけだ。聞きたいことが聞ければあとはどうでもいい」

 「なるほど。であれば話は早い」


 初老の戦士ジン・ワムは親指で後方にいる数人の中のひとりを指差した。


 「こやつがエンゼンだ」

 「き、貴様!雇われ人の癖に俺を売るってのか?!」

 

 突然指さされた者が怒り口調でジン・ワムに向かって怒鳴りつけた。


 「やれやれ」

 (自分から名乗り出る馬鹿だったとは。このような者に従って命をおとした者がいるとすればその者たちは浮かばれず死んでも死にきれない思いだったはず。こやつに用はない)


 初老の戦士ジン・ワムは武器を構えた直後凄まじい速さで動き一人の人物の首根っこを掴んでスノウの前に差し出した。


 「こやつがエンゼンだ。だが降伏の証ではない。こやつは軍を率いて戦う素質もなければ組織をまとめ拡大していく素質もない。おまけに虚言癖まである。もはや我らにとって無用な男。このような者は消えてよいと思っている。従って煮るなり焼くなり好きにするがいい」

 「き、貴様!俺を誰だと思っているのだ!ティフェレトの人類議会(ヒューパラメンタル)のマスターヒュー・エンゼンフィグイッツ様だぞ!」

 「底抜けに間抜けな男よ」

 「何を?!」

 「それじゃ貰っていく。ナザ。あとは好きにしろ。どうしても助けが欲しければ宰相経由でおれに連絡をよこせ」

 「貴様‥‥」

 「おれは優しいんだ」


 そう言うとスノウはエンゼンの首根っこを掴んで飛び去った。


 「さて。お膳立てを済んだような」

 「ふん。どこからでもかかってこい初老の戦士よ」

 「ジン・ワムだ。お前を倒す男として覚えておくがよい」

 「ふん。くだらん」


・・・・・


 「リュクス、転送だ」

 “はいスノウ船長。船長が捕まえている人物は同じく転送しますか?”

 「してくれ‥‥」

 (はぁ、おれ、空飛んでいるのにおれだけ転送したらこいつ真っ逆さまに落下してぐちゃぐちゃになるぞ全く。配慮の足りなさはまだまだ折り紙つきだ)


 キィィィィィィィィン‥‥


 スノウとエンゼンはヴィマナ内に転送された。

 スノウは会議室に来られる者は集まるように指示を出した。


 

 


いつも読んで頂きありがとうございます。

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