<ハノキア踏査編> 61.人類議会の反乱
<レヴルストラ以外の本話の登場人物>
【ルー・サイファノス】
ラザレ王国元宰相。今はグレイの攻撃から逃れるため白の塔に引きこもっているが、小太りの中年男性の見た目からは想像もできない高貴で威圧感あるオーラを発している。
【ゼノルファス・ガロン】
ティフェレトを守護するリュラーのひとりで音破をあやつるリュラー最強の剣士でありリュラー統括を担っている。ルー・サイファノスと共にグレイの脅威から逃れるため白の塔におり、他のリュラーとともに単独行動のグレイを捕らえては拷問し魔物に変えられた人々を元に戻す方法を聞き出そうとしている。
【レーノス・ムーザント】
ティフェレトを守護するリュラーのひとりで音速の音魔法で戦う。素早さはリュラー随一だが、剣技はそれほどでもない。ゼノルファスの弟子でソニック、ソニアにとっての兄弟子。
【ルーナ・テッセン】
ティフェレトを守護するリュラーのひとりで音撃の音魔法を操る女剣士。強さに執着する性格で自分の剣技に自信を持っているが、実は努力家であり、剣技への自信は努力の裏返しでもある。
61.人類議会の反乱
「人類議会‥‥‥‥!」
スノウは目を見開いて驚きの表情を見せた。
「ヒュー‥何?何なのスノウ!」
エストレアはスノウほどの男が驚愕の顔を見せていることに不安を覚えた。
「エスティ、大丈夫だ。そこのあんた、場所を教えてくれ。今すぐ出向く」
「貴方は何者ですか?!女王様とご一緒ということは女王様のご友人かなにかですか?!」
「そうだ。そしておれはその反乱を止められる。場所を教えてくれ」
「場所を教えて!この人が言っていることは本当よ!この人なら反乱を止められる!」
「わ、わかりました!」
執事は地図を書き始め場所を示した。
「既にサイファノス宰相は陣頭指揮にあたられており、リュラー共も反乱軍と戦っております」
「リュラー‥‥ゼノたちか。エスティ、お前はここで待っていろ」
「はぁ?!何でよ!」
「お前はこの国、いやこの世界の女王だぞ?いちいち揉め事に出向いて何かあったらどうすんだよ」
「大丈夫よ!私の実力は貴方も知っているでしょう?!」
「知ってるよ。知ってて言っている」
「はぁ?!」
「お前は思うほど強くない。いや、強いかもしれないが、おれ達には遠く及ばない。そしておれ達が対峙している相手もお前の強さを遥かに超えている。お前は確かにアウロスを操り世界を救った。その実力は誰もが認める。だがそれはアウロスの舞の効果がある相手だけだ。圧倒的武力前ではお前は戦力にすらならない」
「!!」
エストレアは驚きの表情を見せた後、悔しそうな表情を見せた。
彼女は自分自身の実力を分かっていたのだ。
「行って‥」
「?」
「早く行きなさいよ!」
ドン!
「おい‥」
エストレアはスノウを窓から突き落とす勢いで押した。
スタ‥ヒュゥゥゥン‥‥
スノウはそのまま窓から飛び降りるようにしてノーンザーレに向かって飛んでいった。
・・・・・
ドッゴォォォン!!
バシュシュシュン!
ドゴゴォォォン!!
ノーンザーレの東側で激しい戦闘が繰り広げられていた。
ERNというノーンザーレを一周するリニアモーターカーの駅であるイーストノーンの駅は見る影もなく破壊されている。
東側は真東に中流層の住宅街、北東に農業地域、南東に工業地域がありノーンザーレの経済を支えている地域と言っても過言ではない。
それどころか、ラザレ王国に様々な工業製品や農作物を供給する生産拠点でもあり、ここが破壊されるということはラザレ王国としては大きな痛手であった。
「報告はまだか」
街の中央に張っている本陣で指揮をとっているのはルー・サイファノス宰相だった。
そこへ伝令係がやってきた。
「最前線にいるリュラーが辛うじて抑えていますが、反乱軍の猛攻激しく、厳しい戦況が続いております!」
「相手はニンゲンだろうが!リュラー共は何を苦戦しているのだ!」
「そ、それが、異常に強い者が数人いるようでして、リュラー様方もその者を抑えるのが精一杯のようでして‥‥」
「他に強い冒険者はいないのか!」
「み、皆反乱軍の強者にやられてしまっております‥‥」
ガタン!
サイファノスは目の前のテーブルを蹴り飛ばした。
ヒュゥゥゥゥン‥‥スタ‥
本陣にスノウが降り立った。
「貴様はスノウ・ウルスラグナ。何しに来たのだ?エストレア女王と共に異形の者共を撃退し世界を救ったようだが、こんな些細な反乱に手こずっている我らを嘲笑いに来たか」
「そんなわけないだろ。戦況は?」
「ふん、貴様に頼るとでも思うたか?」
「頼るとか頼らないとかそういう次元の話じゃない。おれは単純にティフェレトを救いたいだけだ。戦況はどうなってる?」
「ちっ‥‥苦戦している。リュラーも手こずる相手がいるようだ」
「そうか」
スノウは先ほどサイファノスが蹴り飛ばしたテーブルの上にあった地図を拾い上げて確認した。
「‥‥‥‥」
スノウは戦況の激しい場所を確認した。
「把握できた」
「ちょっと待て!」
「何だよ」
「ノーンザーレの東側には多くの中流層の住民がいる。農業区域と工業区域もだ。彼らの命と生活を破壊するような戦いは控えよ」
「誰に言ってんだよ」
ヒュゥゥン!
スノウは飛び立った。
・・・・・
スタ‥
ガキキン!!
シャヴァバン!
スノウが降りたった先で激しい戦闘が繰り広げられていたのだが、そこで戦っているのはルーナ・テッセンだった。
そしてルーナの相手には見覚えがあった。
「あいつ‥‥どこかで‥‥」
スノウは戦況から目を離さずに記憶を辿った。
「確かケテルで戦ったジン‥何とかってやつらだな。人類議会の武闘派集団だったはず」
(っていうか、ルーナ苦戦してるじゃないか‥‥)
ルーナ・テッセンと戦っているのはスノウ達がケテルで遭遇した人類議会の武闘派のヒューナイツのひとりだった。
ザザン!ガキィィン!!
スノウはルーナとヒューナイツの間に入り双方の剣を止めた。
「貴様はスノウ・ウルスラグナ!」
「スノウ・ウルスラグナ‥‥アノマリーか!」
ガキィィィン!!ダシュゥゥゥン!!
「何しに来たのだスノウ・ウルスラグナ!」
ルーナ・テッセンはヒューナイツに視線と剣を向けつつスノウに叫んだ。
(へぇ、一応リュラーも剣士のはしくれか。敵から意識を逸らすことなくおれと話すんだな)
「随分と手こずってるじゃないか。この程度の相手に」
「煩い!ほざくな!」
「お前がこんなことでは困るんだよ。ノーンザーレの復興に時間がかかるほどダメージを受けるじゃないか」
ヒュン‥‥ズバン!!
「ぐぁ!」
スノウは一瞬でヒューナイトの背後に周りフラガラッハで斬りつけた。
ズン!
「全く。こんなの相手に苦戦しているようじゃリュラーも地に落ちたってことだな。因みにソニック、ソニアも今のおれの攻撃と同じことができる。この意味分かるよな?」
「くっ!」
「じゃぁな」
ヒュン‥‥
スノウは凄まじい速さで飛んでいった。
「スノウ・ウルスラグナ!」
ルーナの悔しさ紛れの声が一瞬響いた。
・・・・・
ヒュゥゥゥン‥‥ズン!
スノウは今度は真東の中流層居住区に降り立った。
そこではゼノルファス・ガロンとレーノス・ムーザントが三人のヒューナイツと戦っていた。
「あれは‥」
スノウの目線の先には人類議会の武闘派集団のナイトヒューと呼ばれていたジン・ザンと初老の戦士のヒューナイツが映っていた。
「スノウ!」
レーノスがスノウに気づき叫んだ。
その声でナイトヒューと初老のヒューナイツは距離を取り武器を構えたままスノウを見た。
「何故お前がここにいるだ?!アノマリー!」
「ザンよ、そう驚くこともあるまい。やつは越界者。しかも本部の情報ではヴィマナの越界機能を取り戻したとある。それよりここの戦況のことを考えるのだ。こやつが来たとなれば、人類議会は劣勢となるはず。引くも勇気となるだろう」
「引くなどと!そのような決断はできん!我らは三足烏・迅!素早さで右に出る者はいない!ケテルでの汚名返上とさせてもらう!」
「お前今、三足烏と言ったのか!?」
『!!』
ナイトヒューと初老のヒューナイツはしまったという表情を見せた。
(人類議会は三足烏と繋がりがあったとは)
「そういえばさっきここから少し南にいたお前らのお仲間もぶった斬ったところだ。でも安心しろ、お前らもすぐに同じところへ送ってやるよ」
『!!』
「おのれアノマリー!」
「ザンよ、ここは引くぞ。お前はオクを拾ってから本陣へ迎え」
「ワム様はどうするんだ?!」
「ここでアノマリーを食い止める。といっても保って数分だがな」
「ご武運を!」
ザンと呼ばれたナイトヒューは煙のように消えた。
「逃げ足は速いんだな」
「攻撃も速いぞ!」
ガキィィン!シュキキィン!!ガカキィン!
凄まじい剣の応酬が始まった。
それを見ていたゼノルファスとレーノスは圧倒されていた。
「何という速さだ」
「音速が聞いて呆れるくらいです‥‥」
「いや、彼らの次元が‥そうではない、スノウの次元が違い過ぎるのだ」
ズバッァァン!!
「ぐっばぁぁ!!」
スノウはワムと呼ばれた初老のヒューナイツの胴体を正面から斜めに斬った。
断末魔の叫びのような声とともに血飛沫が派手に飛び散った。
スノウは血飛沫を避けようと後方に下がったが、次の瞬間ワムを見失ったことに気づいた。
「やっぱり逃げだけは足速いじゃないか」
ヒュゥゥゥン‥‥スタ‥‥
スノウはゼノルファスとレーノスのもとに着地した。
「スノウ、すまない。我らが不甲斐ないはかりにここまで街を傷つけてしまった。君の助けがなければ被害はさらに広まっていたはずだ。北の方もどうやら反乱軍は引いたようだ。おそらく先ほどの部隊長らしきものの指示だろう。本当にありがとう」
「いや、いいよ。それより傷ついた住民や兵達の手当てを。治癒魔法を使える音魔法師はいるよな?」
「ああ。レーノス」
「はい!」
レーノスはすぐに治癒魔法部隊の方へ傷ついた人々の治癒に回るよう指示を出しに向かった。
「しかし、一体何なんだよこれは。突然人類議会が何で街を襲い出したんだ?」
「これは推測だが、エンゼン・フィグイッツという人物が人類議会という活動を行っていたのは以前から把握していたが、少人数であったし活動も街の下っ端のチンピラを捕まえては暴行を加えるという形で正義感を振り翳している団体で、住民には被害がないことから見逃していたのだ。脅威にはなり得ないとな。それが今回のグレイの侵略の件で、密かに魔物化を逃れた人々を集めて魔物化は王家の失態だと吹聴したのだろう。それでグレイが消え去った瞬間を見計らって攻撃を仕掛けたのだと思う」
「なるほど。火事場泥棒みたいなものか。それでどうするんだ?このまま追って人類議会の本部を徹底的に叩き破壊するか?」
「いや、我らに決定権はない。宰相に報告しご判断頂く」
「そうか」
(全く融通が効かないというか、これじゃぁエスティも苦労するよな‥‥)
「じゃぁおれはこれで」
ヒュゥン!
スノウはラザレ王宮都の王城へと戻っていった。
いつも読んで頂きありがとうございます。




