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<ハノキア踏査編> 58.アウロスの舞

 58.アウロスの舞


 スノウはグレイアンとの戦闘の振り返りを始めようとした時、エストレアが手を挙げた。


 「待ってスノウ!こうしている間にも魔物化された人々が本当に魔物になってしまうかもしれない!アヌの力でティフェレトの人々を救って欲しいの!」


 スノウは軽く頷いた。


 「エスティの言う通りだ。おれはおれ達の行動を優先してしまった。ソニック、ソニアが元通りになって安心してしまった。アヌ、お願いだらけですまないが、ティフェレト全土の魔物化した人族を元の姿に戻してくれないか?」


 スノウの言葉にフランシアに抱き抱えられているアヌが反応する。


 “図々しいぞ無知者スノウ。だが貴様は僕を檻から出してくれた。それに免じて図々しいのは許してやろう‥‥‥‥終わったぞ”

 「え?!」

 「リュクス、スクリーンにどこかの街の様子を映し出せるか?」

 「勿論ですスノウ船長」


 スクリーンに街の様子が映し出された。大勢のグレイたちが戸惑ったようにうろついており、そこに敗れた布を纏った人間が襲いかかっていた。

 そのような光景が至るところで散見された。


 「これって‥‥」

 「間違いない。半裸の人々は魔物だった人たちだ。元に戻ったんだよエスティ。そしてグレイは化けの皮が剥がれ、今襲われている状態だ」

 「助けに行かなきゃ!相手はグレイだからティフェレトの人たちが負けてしまうことだってあるわよね」


 現にグレイの攻撃を受けて女性や老人、子供たちは怪我をしたり、殺される者までいるのが確認できた。


 「許さない!」

 

 エストレアは怒りに体を震わせていた。

 その時、グレイに襲いかかる者たちが現れた。

 リュラーたちだった。


 「あれはゼノ!それにレーノス、ルーナまで!」


 凄まじい速さでグレイたちを斬り倒していく。

 それ以外にも方々から武器を持った者たちが現れグレイを襲い始めた。


 「レジスタンスの者たちだな」

 「ええ‥‥うぅぅ」


 エストレアは涙を流しながら顔を覆った。


 「エスティ。レジスタンスの数は少ない。お前の力も必要だろう。また救って来い。以前救ったようにな」


 バッ‥


 エストレアは何かに気づいたように顔をあげスノウを見た。


 「うん!」

 

 元気よく返事をしたエストレアはスクリーンを見ながら言った。


 「リュクス、ヴィマナを浮上させて甲板を海面に出して私を甲板に転送してくれる?」

 「既に準備は整っておりますエストレア」

 「ありがとう!じゃぁ行ってくるね!」


 キュィィィィィィン‥‥


 エストレアはヴィマナの甲板に転送された。


・・・・・


 キュィィィィィィン‥‥


 ヴィマナの甲板にエストレアが転送された。 


 シャ‥‥


 エストレアは聖なるタクトのアウロスを手に取ると、静かに手をあげて舞の体勢をとった。


 ス‥‥


 そして静かに舞を踊り始めた。

 アウロスは小さく振られると空間が美しく揺らぎ、大きく振られると波紋のように空間に波を起こした。

 そしてその波は徐々に広がっていき、美しいオーロラのように輝きながらティフェレトを包んでいく。

 それぞれの街でグレイたちが突然体を崩し始めた。

 まるで飴細工が溶けるようにその場に崩れ落ちた。

 中からコアが転がると人々はそれを足で踏んだり、物で叩いたりして壊し始めた。

 そして空を見上げる。

 ティフェレトの人々は皆、この波を覚えていた。


 「エストレア様だ!」

 「女王様がお救い下さったのだ!」

 「エストレア様!」


 やがて全ての街でグレイが破壊され、人々は皆歓喜の涙を流しながらエストレアを讃え始めた。

 その光景をヴィマナから見ていたレヴルストラの面々は笑顔を見せていた。


 「綺麗な舞だな」

 「天使でもあそこまでの舞を出来る者はいませんね」

 「悪魔の俺でもあの舞を美しいと感じる」

 「ああ。芸術には興味はなかったが、美しいものは美しいのだな」

 「やっと分かってくれたかシルズ!俺の芸術センスが」


 ドス!!


 「ふぐえ!」

 「興が削がれる。黙ってろハーク」


 シルゼヴァの凄まじい膝蹴りがヘラクレスの鳩尾にヒットした。

 それを当たり前のこととして無視しながら皆、エストレアの舞に目を奪われていた。


 エストレアの舞は続き、ついに最後の1体が破壊された。

 ティフェレトの全ての街から歓喜の声が聞こえてきた。


 ギュィィィン‥‥


 ”エストレア。今からティフェレトの人々に言葉を発してください。ヴィマナの技術で貴方の声を世界中に届けます”


 シルゼヴァの作った通信機を通して突然エストレアにリュクスが話しかけてきた。

 

 「リュクス?」

 ”ええ。さぁ準備はいいですか?”

 「勿論よ!」


 エストレアは大きく息を吸った。


 ”ティフェレトのみんな!”


 突如ティフェレト全土に響き渡る声が聞こえ始めた。

 リュクスがヴィマナの力を使い、猛魅禍槌(タケミカヅチ)にエストレアの声を乗せて世界中に放ったのだ。

 エストレアの言葉は猛魅禍槌(タケミカヅチ)の波動によって広がり、声を伝えると消えていく。

 リュクスが行った粋な計らいであった。


 ”ティフェレトを襲った悲劇は今消え去りました。魔物になっていた皆さん、遅くなって本当にごめんなさい”


 エストレアの言葉を聞き、安堵と魔物化していた時の苦しい感情が込み上げて皆涙した。 


 ”みんなを襲ったのはグレイアンという空の向こうのさらに先から来た存在なの。でも私や私の仲間はその存在を突き止めて、なんとかみんなを解放し、元の姿に戻すことができました。それでもこんなに時間がかかってしまって、みんなには本当に辛い思いをさせてしまった‥‥ごめんなさい‥‥”


 ティフェレトの者たちは皆、悲痛な思いでエストレアの言葉を聞いていた。


 ”でももう大丈夫です!私にはとても強く頼りになる仲間がいます!それは言い換えればみんなの仲間でもある!この世界は救われましたが、まだやることがあります!各国の復興はこれからになると思うけど、みんな諦めずにかつての生活を取り戻すべく力を向けてほしい。真の平和を取り戻せるまで私は戦う。だからみんなもめげずに自分たちの生活を取り戻すために歯を食いしばってほしいの”


 「女王様!」

 「俺たちは頑張るぜ!」

 「女王様だけに大変な思いはさせないよ!」

 「私には私たちの出来ることがあるから!それを頑張ります!」


 方々から様々な声が発せられた。

 その声はエストレアに届くことはないが、その思いはエストレアに空気の振動として伝わった。


 ”みんなありがとう!私は必ずラザレに戻ります!私はみんなと共にあります!一緒にティフェレトを復興させましょう!”


 『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』


 ティフェレトの全ての街や村から歓喜の声が発せられた。

 エストレアの言葉に勇気をもらい、復興の未来に心を震わせた瞬間だった。


・・・・・


 しばらくして、エストレアがヴィマナに戻ってきた。


 「ありがとう‥‥みんなのおかげでティフェレトは救われました‥‥うぅぅ‥‥この恩は一生かかっても返しきれないね‥‥本当にありがとう‥‥」

 「気にするなエスティ。お前もオレたち同様にレヴルストラだ。仲間の窮地を救うのは当たり前だろ」

 「いつになく優しい言葉かけるじゃねぇかよワサン」


 ヘラクレスが意地悪そうな表情でワサンに言った。


 「う、うるせぇな!お前はシルゼヴァに蹴られてろ!」

 「うほ!それは嬉しいな!」

 「ドMか!」

 『あっはっは!』


 皆大声で笑い出した。

 そんな面々を見てエストレアは大粒の涙を流しながら笑った。


 「エスティ。お前はこれからもおれ達の仲間だ。忘れるなよ」

 「うん‥‥ありがとうスノウ‥‥」

 「まだおれ達にはやらなきゃならないことがあるはずだ。エスティの言葉に心を奮い立たせているティフェレトの人たちにこれ以上大変な思いをさせるわけにはいかない。作戦会議を続けよう」

 『おう!』


 レヴルストラの面々は作戦会議を始めた。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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