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<ハノキア踏査編> 57.帰還

57.帰還


 昆虫グレイアンが雄叫びを上げると多勢のグレイがルナリとエルティエルの行手を阻み始め、自身のところへ辿り着こうと鬼神のような形相でもがいているルナリを確認すると昆虫グレイアンは無言のまま昆虫グレイアンはシンザに鎌の刃はシンザに深く突き刺さっていく。


 「ぐあぁぁぁ!」


 グザァァ!!


 「やぁめろ!!」


 ルナリの叫びも虚しく昆虫グレイアンはシンザに致命傷を与えた。


 「がっばぁ!」


 シンザは大量の血を吐いた。

 ルナリとエルティエルの心に絶望感が生まれた次の瞬間。


 キィィィィン‥‥


 周囲を張り詰めた空気が覆った。


 ドッパァァァァン!!


 突如周囲に凄まじい衝撃波が広がった。


 『?!』


 砂埃が立ち上りルナリとエルティエルの視界から昆虫グレイアン、シンザ、ケリーの姿が隠された。


 (何が起こった?!)


 ピィン!ヒュン!ヒュン!


 突如次々にグレイたちが破壊され始めた。


 「?!」


 ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュン!!

 バババババババババババァァン!!


 ほんの数秒で全てのグレイが破壊された。

 

 「まさか!」


 ルナリとエルティエルは上空を見上げた。

 何とそこには浮遊する巨大な島があった。


 「ヴィマナか!」

 「師匠たち!」


 グレイたちが突如弾けるように破壊され尽くしたのはヴィマナが放ったタケミカヅチによるものだったのだ。

 そして砂煙が流され昆虫グレイアン、シンザ、ケリーのいた場所が露わになっていくとそこには信じられない光景があった。


 「スノウ!!」


 フラガラッハで昆虫グレイアンを縦に真っ二つに切断し、シンザとケリーの傷を魔法で治癒したスノウが立っていたのだ。


 「間に合ったな」


 ズバババババババン!!


 スノウは凄まじい速さで昆虫グレイアンを細切れにし、再生出来ないレベルで破壊した。


 「おおおお!!」


 大粒の涙を流しながらルナリはシンザのもとへ駆け寄り抱き上げる。


 「だ、大丈夫だよルナリ‥‥それよりケリーは?」

 「大丈夫だ。既にスノウが治癒し意識も回復している」

 「シンザ、あたしは大丈夫。大好きなスノウに治してもらったからね。守ってくれてありがとうシンザ」

 「ははは‥‥良かったぁ」


 その光景を見てスノウは優しく微笑んだ。


 「みんなよく頑張ってくれた。そしてルナリ。何よりお前の予感が的中したな。お前たちが地上に残ってくれていなければ今頃ティフェレトから元人族の魔物は消えてしまっていただろう。本当によくやってくれた」


 その言葉にホッとしたのかエルティエル、シンザ、ケリーは腰が抜けたようにその場にへたり込んだ。


 「はぁ!間一髪!久々に緊張感ある瞬間だったわ。師匠も演出しすぎではないですか?」

 「演出?これでも急いで戻って来たんだぜ?ってこんなところで会話もなんだな。リュクス聞こえるか?」

 "はい聞こえますスノウ船長"

 「おれ達をヴィマナに転送だ」

 "承知しました"


 キィィィィィィィィン‥‥


 スノウ達はブリッジに転送された。

 

 ガシィ!!


 「みんなありがとう!!」


 転送されるや否や、いきなりエストレアがルナリたちを抱きしめた。

 魔物化された人々を守ってくれたことが嬉しかったようで大粒の涙を流していた。


 「い、痛いですよエスティさん!」

 「あ!ごめんなさい!」

 

 エストレアは顔を真っ赤にして抱擁を解いた。


 「エスティ、すまないがシンザたちを医務室へ運んでくれ。休ませてあげたいんだ」

 「も、もちろんよ!精のつく食事も作るわ!」

 「そ、それはお断りします!」

 

 シンザが青ざめた顔で言った。


 「〜〜〜!!」


 エストレアは何かを言いたげだったが言葉を飲み込んだ。


 "スノウ船長、着水コースに入りました。大きな衝撃が来ます"

 「了解だ。アリオク、シルゼヴァ、着水に向けた防御シールドは準備問題ないか?」

 "誰に言っているのだスノウ。俺とアリオク、ガースが対応しているのだ。既に万全の状態だ。抜かりあるはずが無かろう"

 「フ‥了解だ。ヴィマナはティフェレトの海に着水する。乗組員全員衝撃に備えてくれ」


 スノウの言葉がヴィマナ全域に伝えられた。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‥‥


 凄まじい風切音と共にヴィマナが急速に落下し始めた。

 それと共に内臓が宙に浮くような感覚と激しい振動がレヴルストラの面々を襲った。


 "着水まで10秒‥‥9‥‥8‥‥"


 リュクスによるカウントダウンが始まった。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‥‥‥


 振動が激しくなる。


 "4‥‥3‥‥2‥‥1‥‥着水"


 ドッゴォォォォン!


 ヴィマナ全体を激しい衝撃が襲った。

 

 ズゴゴゴゴゴゴゴォォォォ!!!


 轟音と共にゆっくりと降下し始めてやがて振動はおさまった。

 スクリーンには大波が周囲に広がっていく景色が映し出されていた。

 ヴィマナは無事に宇宙から帰還した。


 シンザとケリーはスノウの治癒魔法でほぼ完治しているとはいえ念の為ということで医務室で休むことにした。


 「ワサンさん!」


 シンザは思わず叫んだ。

 何故ならワサンが至る所に包帯が巻かれた状態でベッドに寝ていたからだ。

 だが意識はしっかりあったため、うるさいと言わんばかりの表情で反応した。


 「何だ?珍しいもん見たような顔しやがって」

 「そりゃそうですよ!ワサンさんほどの人が傷だらけじゃないですか!」

 「ははは、まぁな。昆虫グレイアンにこっ酷くやられたぜ」

 「回復魔法使ってないんですか?」

 「いや、スノウが回復魔法ガンガンに唱えてくれたよ。だがちょっと特殊な事情で十分な治癒には至ってねぇんだ」

 「特殊な事情?」

 「まぁ気にすんな。取り敢えず致命傷はねぇし、こうして意識もしっかりしてる」


 ワサンは獣化を試みたことで体の体質変化したのか、魔法耐性が異常に向上しており、攻撃魔法への耐性は勿論だが回復魔法までもが効果が薄れるという状態になっていたのだ。

 そのため療養することにし、ベッドに寝ていたのだった。


 「それよりシンザ。もっと驚くのが隣で寝てるぜ」

 

 ワサンはカーテンで仕切られた部分に親指を向けて中を見るように促した。

 

 シャァァ‥‥


 「ソニック!」


 ベッドに寝ているソニックを見てシンザは先ほど以上に大声で叫んだ。

 だが今度は目を覚ます様子は見られなかった。


 「ソニック?」

 「大丈夫だシンザ。命には別状はない。魔物化してた頃の影響で意識が混濁しているだけだ。今は寝かせておいてやれ」

 「分かりました。とにかく生きているって事ですよね」

 「ああ」


 "スノウ船長からの指示で10分後、会議室に来ることが可能な方は会議室へお越し下さい。作戦会議を行います"


 突如リュクスのアナウンスがあった。


・・・・・


ーー10分後ーー


 スノウ、フランシア、シルゼヴァ、ヘラクレス、ルナリ、アリオク、エルティエル、エストレアが会議室に集まっていた。

 ワサン、ソニック、シンザ、ケリーは大事をとって医務室で休んでおり、ガースは機関室で番をしているため不参加となった。

 最古神の一柱であるアヌは何故かフランシアに抱き抱えられている。


 「みんな、集まってくれてありがとう。ここに来ていない者には後で情報を共有する。早速会議を始めよう」


 皆静かに頷いた。


 「今回の議題はグレイアンとの戦闘の振り返りと今後の計画についてだ。特に今後の計画については最優先で魔物化した人々を元に戻す対応を取る」

 「魔物化した者どもを元に戻す術を得たという事で良いのだな?スノウ」

 「その通りだルナリ。今シアが抱いている最古の神族の一柱であるアヌの力で魔物化した人々を元に戻す」


 ギィィィィィィィィィィィィィィィン!


 周囲に突如耐え難いほどの不快音が鳴り響いた。

 不快音の元凶はアヌだった。

 スノウとルナリ以外は立っていられずその場にへたり込んだ。


 「スノウ‥‥そいつに不快音を出すの止めさせろ」

 シルゼヴァの指示でスノウはアヌに不快音を止めるようお願いした。

 するとすぐに不快音は止んだ。


 "僕に指図は無用だぞ無知者スノウ"

 「分かっているよアヌ。不快音を止めてくれてありがとう」

 "ふ、ふん!何だ?礼を言ったのか?当然だが僕に礼を言ったのか?"


 アヌは口調は変わらないものの嬉しそうにしていた。


 「みんな。この最古の神族であるアヌがティフェレトの元人族の魔物を元に戻してくれる」

 "そんなことは簡単だ。何故なら僕は神だからだ。しかも最古の神だ。あらゆる神にと呼ばれる存在の頂点に君臨する神なのだ。僕を崇め奉れ"

 「何だこの芋虫みてぇな肉片は?」

 "貴様はヘラクレス。神を自称する雑魚とニンゲンの間の子。僕に吐いた暴言は自ら受け取るがいい"


 ボォォン‥‥


 ヘラクレスは巨大な芋虫に変わった。


 「‥‥‥‥!」


 芋虫と化したヘラクレスは何かを訴えかけるようにモゾモゾと動いている。


 「アヌ、頼むよ、ヘラクレスを許してやってくれないか?」

 "ふん、いいだろう"


 ボォォン‥


 ヘラクレスは元の姿に戻った。


 「がっはぁ!はぁ!がぁぁ!」


 ヘラクレスには珍しく凄まじい恐怖を味わったといった表情でうずくまっている。


 「それではまずグレイアンとの戦闘の振り返りだ」

 

 スノウは話を始めた。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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