第9話 索敵補完
(現在時間)
レイコは、滾る怒りを胸に鎮め…静かに氣を練っていた、召喚した花束をリカの遺体に手向けて。
(私のリカに…何してくれてんねん。大阪弁、移ってしもたやんけ、ヤバイヤバイ。)
その表情から、彼女の心を読むゼノ。
「姉さん、本音が出たね。」
「何言ってるの、お姉ちゃんが愛してるのは、ゼノ…あなただけよ。チュッ!」
弟に照れ隠しの、投げキッスをするレイコだったが…そっちもまた、本心である。
回想シーンの間…少し時間は経過し、棺桶の中にリカの死体が入れられ、花で埋め尽くされているのと、斧から人に戻ったドリームは何処かに消えていた…
「さっきまでの威勢はどうしましたの?」
行儀良く、リカへの献花を待っていたララ。
「バサラ…」
レイコが謎の呪文を唱えると、リカの血を吸った棺の薔薇が、勢いよく飛び出す…
「姉さん…ソレ、あの時の。」
「そう、出会った時のリカを殺した、バカ兄貴の使い魔よ。」
シュルシュルシュルッ!
ララの身体を縛りつける。
「コラッ、離しなさい。ワタクシは、残忍様の眷属ですわよ。」
「あんまり動かないでね…後で使う時、傷があるとイヤだから。お前も気をつけるのよ!」
バラの化け物に命令するレイコ。
「ララちゃん、コレ見て。」
上着をめくり、胸元の巨大な瞳を見せるゼノ。
「やめて…そんなモノ見せないで。」
ピカッ!
強い光に一瞬目を奪われたものの…ララは、命からがらツルを手刀で切断し、脱出に成功した。
(日常に戻ったララ:ゼノナレーション)
僕達との戦いから、逃走した彼女は一旦自宅に帰る事にしたんだ。
(クソッ、何なのよアイツら。変態姉弟に、幼児女って。)
えらい言われ方である。
(まあいいわ。姉の最大の武器、斧を破壊したし、リカを倒したんですもの…残忍様に褒めてもらえるはず。)
安アパートの階段を登ろうとすると…
「ニヤ〜ン…」
錆びた鉄の足場の下に、白い子猫がうずくまっていた。
「ふんっ、そんな甘えた声出したった知りませんわ。ワタクシ、自分が食べるだけで精一杯ですもの。(ホント、安月給の職場なの)」
足下に、脱ぎっぱなしのストッキングと、ビールの空き缶の散乱する部屋に戻り、TVのスイッチを入れ、コタツにくるまるララ。
「お〜寒寒…(あ、あの子猫)」
あんなに冷たくしておきながら、何かが気になっている様子。
「もう…仕方ないですわね。」
ドテラを羽織り、外に出るララだったが、さっきの場所に猫は、もういない。
「ふんっ、べ、別にどうでもいいですわ。」
「フギャ〜!」
「はっ?」
声を聞いて、建物の裏に回ると…子猫が、山から降りてきた、熊に襲われていた。
「きゃっ、血が…」
似合わない可愛い声で、傷ついたその子を心配する。
「爆…」
ズンッ!バキバキ…
地面のコンクリートを、踏み出した足で砕き…そのまま、前に出した方の掌を拳に変え、熊めがけて爆撃拳を打ち出したララ。
ズボッ!!スポンッ…
彼女の拳の形で、熊の腹に穴が空き…反対側の風景が見える。
ブシャ〜!
血の雨が降る中、子猫を抱き抱え…濡れない様に守りながら、その場を去った。
「よしよし…」
慣れない手つきで撫でながら、散らかった部屋に連れ帰る。
「TV、つけっぱなしでしたわ。」
その後、怪我が直った猫を引き取ったララは、見かけによらず大切に育てていった。
そんなある日、すっかり懐いた猫と片付いた部屋で戯れていると…
「ふふふ、ニヤ〜子スリスリ…」
ピンポ〜ン!
来客のチャイムが鳴る。
「ハ〜イ」
ガチャッ!
玄関の扉を開けると、ひとりの女性が立っていた。
「失礼します…お宅で、家のジュディを預かって下さってるって、お聞きしたんですが?」
「いえ、きっと人違い…じゃ無く、猫違いですわ。」
「ニヤ〜!」
子猫は走って、一直線に来客者に抱きついた。
「あらあら…ジュディちゃん、甘えん坊さん。」
そのまま子猫は、飼い主に連れ帰られてしまう。
「ニヤ〜子…ワタクシの」
意気消沈するララ。ふと、子猫が残したエサのチュ〜るを口にする…
「う…苦しい、ど、毒が。ブハッ!」
吐血し、苦しむララの目の前に…見覚えのある生足が。
(ゼノの演劇光線が解ける)
「ハイッ」
パンッ!手を叩くレイカ。
「ゴホッゴホッ…ワタクシの、ニヤ〜子ちゃんを返してですわ。」
苦みながら、トチ狂うララ。
「ハ〜イ!ニヤ〜子役、私でしたぁ〜。」
手を挙げるレイコ。
「ちなみに、熊と飼い主の二役は僕です。女装はちょっと抵抗が…穴開けられたお腹も痛かったな。」
バッテンのバンソウコウを、お腹に貼っているゼノ。
「良かった夢で。フフフ、グハッ!ガクッ…」
吐血し、謎の笑顔で息絶えるララ。
「さてと…」
グサッ!グチュグチュッ
「リカの中…気持ちいいよ」
手刀で、棺桶のリカの死骸の腹を切り裂き…手を突っ込むレイコ。
「オギャ〜!オギャ〜!」
血まみれの赤ん坊が現れる。
「リカ、新しいカラダよ。」
ララの死体に近づいてゆき…その胴体にその子を物理的に突っ込む。
パチッ!
元、ララだった者の目が開く…
「ママ…オッパイ、バブバブ。」




