第8話 最後…シェット
その後も、ウチと師匠は人里離れた山奥で、修行に励んだ。ちなみに、現実時空の現代のお話やで
(ま、俗世の人間にとってはファンタジーな世界線やろうけどな…バブ)
「師匠、師匠、新聞見た?」
「あぁ…この近くで起きてる、大量殺人事件の事か。」
古い木造建築の民家で、ウチらは暮らしてた。TVは無かったが、街のコンビニに新聞だけ買いに行ってたんや。
(TVは、虚偽と邪気をバラ撒く狂人製造機って、師匠は言うとった。ま、新聞も殆どウソやけど、情報収集の役には立つらしいな。)
「リカには、今のうちに話とく…ボクの子供達の事。」
ドリーム師匠は、旦那を殺された事、(プラトニックやったそうやが)次男を改造された事、最強の娘を作った事…そんで、騒動の元凶の長男残忍が、死霊を使って悪さしてる事を、話してくれた。
「あの子は、この世界に破滅をもたらす存在。ま、元々この世界は狂った場所だから、彼には居心地いいんだろうケド…」
「行動原理が、理解出来ひんな?」
「恐らく、次男のゼノを使って…最終戦争に勝ち残る事ね」
「最終戦争?って、何バブ」
「もう始まってるよ。神の最終選別さ…」
ドンドンドンッ!ガンガンガンッ!
簡易的な、南京錠しか付けられていない玄関の扉を、強く叩く音が…
「ああいった連中が、地獄へ…」
師匠が言い終わらないうちに、物音が響く。
ドガンッ!バリバリバリバリ〜!
「なんや、あんたら。バブ」
冴えない制服の警官ふたりと、手に鎌や斧を持った村人が数人…戸をこじ開けて入って来てた。
(あんたら、修理代弁償してや。)
「お前ら!妖怪だろ…見てたぞ、死体使っておかしな事してるの。」
年いき気味のオッサンが、イキリ立っとる。
「リカ…手を出しちゃダメ。」
「せやかて、このままやったら冤罪で。」
「背中…見て。」
師匠にそう言われ、バカ共を確認すると…
(なんや…憑かれとんのんか。)
「野良の死霊と違って作為的なのは…つまり私達を狙って来たって事は、残忍の手下か。アンタ達、息子に頼まれてボク達を殺しに来たんでしょ。いいよ、ボクを殺して…ただし、この娘リカだけは助けてあげて。」
ズキュ〜ン、ズキュ〜ンッ!
師匠が言い終わらないうちに、その腹部を銃弾が貫いた…
(アカンアカン、この人は…ウチの最愛の人やねん)
「リカ…それは、もうすぐ見つかる…ボクじゃないよ。」
ウチの心を読んだ師匠は、そのまま血を流して仰向けに倒れた。
ゴゴゴゴゴ…ガキンガキンッ!
(なんや、このイヤな気配…)
警官と市民団体は、霊を纏いながら…ウチらの前で、有機的に結合していった。緑色の液体に絡みついた、気色の悪い触手が全体を統合し…トーテムポールみたいな、複数の顔を持つ塔の怪物と化した。
「母様…やっとアナタを、俺のモノに出来る。安心して、父さんもこの中にいるよ…」
巨大化したバケモンからの声…それがあの残忍のものっていうのは、ウチの悪い頭でも容易に予測がつく。
(アカン、勝てへん。こんな奴…)
「リカ、これは残忍じゃないよ。あの子は、遠隔で操作してるの。だから…」
倒れた師匠の声が、直接脳に伝わってくる。
「ウチでも、勝てるってこっちゃな。バブバブ〜…うっ、ぐはっ!」
グサッ!グリグリグリ〜!ググググ…
尖った薔薇の枝の様な腕が、腹に突き刺さり、そのままの勢いで…持ち上げられた。
(カラダ、宙に浮いてるやん…怖っわ。)
ドクドクッ!ビュ〜!
「バブ〜ッ、痛いのんが始まったで…血ぃ出過ぎやって、オイッ」
黒みがかった赤い液体が、ウチの腹から噴き出す。
「終わりか?お嬢ちゃん」
「おっ、初めて話かけられた…ウチリカちゃんちゅうねん、よろしゅうに。バブ」
「お前が、大天使様の弟子か。て、ことは…」
パシーンッ!
そいつは、おしゃぶりを弾き飛ばした。
(知っとんのんか、オモロいやんけ。)
「ウチと、怪獣大戦争始めたいんやな…オオオオ〜!」
全身を膨張させ、腹の枝を抜き、(ちゅうか砕き)ウチは変身する。コイツとおんなじ怪物に…
スパンッ!
「あれ?」
(どう考えても、逆転のタイミングやん…何で、ワンチョップで負けとんねんバブ。)
刃物と化したソイツの腕は、容易くウチの首を切断した。かなりの高さから、落下する意識…
(やっぱ、頭に精神は存在してたんやな?落ちる堕ちる…でも、まだ死にとうないな。)
ストッ…
巨大なウチの頭を素手で受け止める、温かくて柔らかい掌…
「あっちゃ〜、手遅れだったわね。」
「姉さん、リアクション古いし…不謹慎ですよ。」
美しい黒髪を靡かせ、勇者スタイルの少女と、ちょっと気弱で優しそうな青年のふたりが…光と共にやって来た。
「私は、レイコ…地上最強の拳精よ。」
「僕は…」
(アカン、聞き取る前に死にそうや…)
「フフ…またな、ゼノ。」
今怪物から、人の意識が抜き去られるってのが分かった、何となくやケド…つまり残忍はそこから消えたってワケ。
(アイツ、上手い事ゆうて逃げよったな。)
「ママ、力借りるわよ。神獣召喚っ!」
火の鳥、空飛ぶ亀、青いドラゴン、白い虎…レイコの背中から這い出して、それぞれ凶暴な咆哮を上げ、口から炎を吐き、一瞬で怪物を焼き尽くす…横で倒れてる、ウチのカラダ諸共。
「姉さん、やり過ぎ。リカさんの身体も、燃えてるよ。」
「ブスブスブス…もう、アカンわ…ガクッ」
こうしてウチは、短い人生を終えたのでした。
バブバブバブバブ(めでたしめでたし)…




