第13話 釈迦の置き土産
「約7秒間…全てのモノは引き上げられ、次に地面に叩きつけられる。それで世界は終わる。」
そう言いながら、未来予知の確認をする残忍の予測通りの現象が、今再現されようとしていた。
演劇でスキを突かれ、本性を現したヒムラ・サタンはアザトホースへと回帰する。そしてブラックホールの正体を現し、地球の重力を奪い…全てのモノを天空に引き上げ、7秒後に墜落させる。さらに人々を胎内から発した、無数の悪魔達の餌食にしようとしていたのだ…
「師匠、コレって?バブ」
レイコの腰斧に疑問を投げかけるリカ、まだ赤ちゃんのコスプレのままで。
「そうだな、残忍が仕掛ける予定の最終戦争前に、完全なる無…アザトホース、つまりブラックホールがやって来て、先に全ての者を無に帰そうとしている…既に地球は、奴に取り込まれてたのさ。」
触手を持つ無辺の暗黒存在たるソレ。雲かクラゲかタコにも見える、ソイツは重力を破壊し、今もまた、人も物も区別無く持ち上げる…人々の叫びだけが、響き渡っていた。
「行くわよっ!」
いち早く、飛び上がり…背中から発した光る五獣(龍、虎、蛇、鶴、豹)を使い、浮き上がった人々を掴んでは、ゆっくり地面に降ろし…次々と助けるレイコ。
「姉さん、キリがないよ。ベアード、お願い。」
「アレが、我の本体と知っての命令か?」
元アザトホースの一部であり、反抗の意を示すゼノの胸元の悪魔だったが…天空より飛来する、無数の傀儡達の姿を見た時(アレが、本来の自分の姿か?まっぴらゴメンだ。)心に異変が起きた。
「時間停止!」
一回瞬きしてから、大きく開かれたその目は、暗黒の空に光を与え…落下する人々の動きを止めた。
黒の一角は、無数の蠅である。その魔物は、集合体でひとつの形をなしている。
「残忍はん、頼むで…バブ。」
リカの意図を瞬時に理解する残忍は、既に死んだ人間を含む、無限の死霊をその手の中に集結させ、リカに送る。百鬼夜行の妖怪達も含め。
「おいで…ウチの中に、チュパッ!」
怪しい微笑みで、おしゃぶりを外し…赤ちゃん服から、いつものセーラー服に戻ったリカは、たわわな胸元を大きく開く。すると集まった霊体が、谷間に吸い込まれてゆく…
「リカちゃん、パンツ見えるよ。」
だんだんと巨大化する彼女を、下から見上げるゼノ。
一通り市民を避難させたレイコは、腰の斧を自分より数百メートル膨張させ…振り回しながら、嘴で攻撃する鳥の怪物を次々と切り刻む。ちぎれた鳥の首は、即座に再生し…それぞれが別の大蛇へと形を変えた時、さらに大きく口を開くレイコの使い魔のスネークが、その牙で、一匹一匹丁寧に相手の眉間を噛み砕くと、潰れた敵蛇から飛び出した眼球が七つ集まり、複数の頭となった…そしてソイツは、真っ黒な狂犬の魔獣となる。翼竜の羽根を羽ばたかせながら…
グァルルルルルル…
その気持ちの悪い、いななきに大地は震え…声に反応する様に、砕けた土の中からスカイツリーより大きい、残忍の部下巨大髑髏が這い出す。
「なっ?」
宙に浮きながら、足元を見下ろしたレイコがその光景に目を奪われたその隙を狙い
ガヴヴッ!ブチッ!
犬の魔獣が右脚を食い千切る…落下する膝から下の部分を、ジャンプして受け取った残忍は、魔力を結晶化し…そこから幼児期のレイコを再生する。
「お兄ちゃん…おんぶぅ。」
脚から変形した、赤いランドセルを背負った幼稚園児のレイコが甘える。
「いい子いい子…」
妹の頭を優しく撫でて背負い…全身に光を纏わせ、空を飛ぶ残忍。
「ガシャドクロ、やれっ!」
グロロロロ…シャア〜!
彼の命令で巨大ガイコツは、腕を振るい…大人レイコと戦っていた犬魔獣を、叩き落とす。
グドドドドド…グシャッ!
地面に叩きつけられ、コンクリートにめり込むと…そいつは自ら腹を裂き、ワニの胴体に、上半身裸の美女がくっついた化け物を吐き出す。全身にヌルヌルの内臓と粘液を纏って。
ピシュンッ!ゴァッ…ビシュルルル〜!
背後で巨大化したリカが、口からプロミネンス火炎を放射し…蠅の魔物を灰に変えている。残った蠅達が、尻尾からトゲを打ってくると、下にいるゼノがベアードの加護を放射し、リカを守る。
「おおきに、せやけどコイツらしつこいな…ゼノ君、ちょっと目ぇつむっといてんか。」
胸元を開き、赤いブラを外すリカ。
「ほな行くでっ…恥ずかしな。オ、オッパイビーム!アンドォ、乳首フラッシュや!」
ビジビジビジッ!ピカッ!キィィ〜ン…ズドドドドドォ〜ン!
乳首から、雷を数本掛け合わせた電光が絡み、一塊となって…全方位に放出され、強烈な光を放ち、炸裂する。気がつくと、周囲の敵は消滅していた。そのあおりを受けた、前段のワニ女の胴体も切断され…女の上半身だけが、地べたを虫の様に這っている。
「え〜い!」
残忍の背中から、飛び降り落下しつつ、背中のランドセルから、三角定規を取り出した子供レイコは…
「えいえいっ、やぁ〜!」
グサッ!グリグリッ…
女の背中にその尖った部分を突き刺し、楽しそうに前後左右に動かし、苦痛を与える。
一方、片足のオリジナルレイコは、切断面から発射される血液の推進力で、さらに上昇してゆく…巨大な斧をたずさえて。
「サタンちゃん、待っててね♡」




