第14話 最終回スペシャル
(長かったウチらの戦いも、遂に終止符やねん。あの後…オリジナルのレイコちゃんは、アザトホースに決戦を挑んだまま、帰ってけーへんかった。せやけど、ブラックホールが消滅しとるって事は、勝ったんやろな…あの、ヒムラ・サタンとか言う実体に。
ややこしいいい方したけど、アザトホースもブラックホールもヒムラも同意義やで。)
「よしよし…バブ」
おしゃぶりを咥え、元のサイズに戻ったリカは、子供のレイコをおんぶして、あやす。
「兄さん、僕達勝ったんですか?」
無傷のゼノが、胸元の眼を閉じさせ…残忍に問う。
「アザトホースに、勝敗の概念は無いよ。ただ、俺達が認識出来なくなったに過ぎない…」
その頃、銀河の果て…暗黒のブラックホールの中に浮かぶ、片足飛行のレイコと、対峙する元の形に戻ったヒムラ。
「ここなら、邪魔は入らないわね。サタンお姉様…神の試練に耐える覚悟は出来て?」
八本の腕、それぞれに刃先の恐ろしく長い剣を握って威嚇する、彼女の額の第三の目が黒く輝き瘴気を発する。
「いらっしゃい…お嬢ちゃん。お姉さんが、可愛がってあげるっ!」
シュンシュン…シュパシュパッ!
「七死剣っ!」
ヒムラが手首を分離させ、その剣撃でそれぞれ、レイコの首、四肢、胴体を切断し…最後に頭からもう一回、縦一文字に切断する。
分割されても、空間にその形を一応留めるレイコは、切り口から血を噴き出しながら…
「あと、一本余ってるんじゃない?」
「あぁ…」
勝利を確信しているヒムラは、レイコの方に目も向けず、地上に意識を飛ばす…
「さて、仲良しごっこもここまでだ。」
残忍は、リカの頭を掴み…妖気電流を流し込む。
「な、何すんねん…バ、バブ。あ、暴れんなって。」
痙攣しながら、子レイコを落とし…体内の死霊達のざわめきに苦しんだ。
「妖魔香も効いてるわ。」
手元に香炉を持ち、その煙をゼノに向け…バックベアードを眠らせる子レイコ。
「兄さん、やめ…グハッ!」
リカの胸から、槍と化した乳房が突き出し…ゼノの腹部を貫いた。
「やっぱり、ベアードは返してもらう。お前では、役不足だ。」
意図せずして、ゼノをリスペクトしている事に気付かない残忍。
「カラダが、言う事聞かへん…ゼノ君、バブ」
「お前の中の死霊に、犯されて死ね。」
「あ〜ん!アカンて、やめてぇや。ウチは永遠に処女なんや、バブ…」
無数の顔や手が、リカの皮膚の内側で暴れているのが、外から見ても認識出来る。
シュンシュン…グサッ!
空から降ってきた、ヒムラの第8の腕が手にした長剣が、子レイコの頭を貫こうとした瞬間、無意識にかばってしまう残忍の頭部に突き刺さる。
(ブラックホール空間)
「外したか…お前の最期の断片を」
「アソコに私はいないよ…ガクッ」
バラバラになって、息絶えるレイコ。その体内から光が抜け出して、消える…
(地上…)
「レイコちゃん…ウチの中においで、バブ。」
おしゃぶりを外したリカは、背中から五獣を解き放つ…そして頭に剣の刺さった残忍に対し、龍は締め上げ、蛇は毒牙で噛みつき、虎は顔面を掻きむしり、鶴は眼をエグリだし、豹はその腹部を食いちぎる…
ビビビビビビ…
傷ついたゼノを、掌から放射する治癒魔法で直すリカ。
「その力…姉さんの。」
「ええ、レイコちゃんの魂は、ウチの中や…バブ。」
「死ねっ!」
残忍の死体から抜いた剣で、リカを襲う子レイコ。
「お待たせ…子供達。」
空から落ちて来たレイコの聖霊斧が、その小娘の剣を破壊した、そして瞬時に状況を理解するゼノ。
「レイコの姿をしたお前は、今は兄さんだ…そもそも姉さんが貴方になんかに、甘えてたのがおかしかった。あの時、姉の脚から作成されたのは、お前の傀儡だった。
で、今度自分がリカちゃんにヤられる直前…偽レイコに、残忍の魂を転移させたんだ。」
「何やよ〜分からんケド、こいつを引き剥がさせてもらいまっさ…バブ」
バリバリバリッ!
その子供レイコの背後に手を突っ込み、残忍の霊体を引きずり出すリカ。
「んでもって、ここにはレイコちゃん…お帰りなさい…」
口から、レイコの魂を吐き出し…子供にキスをするリカ。
「ん…んん、舌挿れないで。」
子供レイコは、オリジナルに憑依され、元の意識を取り戻した。
「ほんでから…コイツはぁ。」
ポイッ!
手に持った残忍の霊体を、空中に放り投げるリカ。
キィ〜ン!
その先に、斧を追って飛んで来た、ヒムラの姿が…
カシーン!ピッカ〜ン!!
合体し…ヒムラの額の3つ目の瞳が、ふたつに分離し四つ目となり、光る。
「しまった、神の断片をヤツに与えてしまう。あ、その方がいいか…」
良い方の結末を予測するゼノ。
光に包まれたヒムラ・サタンは、白く輝き…背中から白い羽根を生やす。その姿は美しい天使となり、微笑をもたらした。
「次元上昇!」
螺旋を描き次元を越える…その光の子には何の迷いも感じられない。
「見て見て、あれが物理的悟りってヤツよね、グスン…」
その美しくも儚い姿で入滅するサタンに、奇しくも涙するレイコ。
「終わったなぁ。これで全部、やっとや…バブ。」
レイコとゼノと、真ん中で手を繋ぐリカ。
「ううん…あの暗黒の塊を見ちゃった。」
不穏な事を言い出すちっちゃいレイコ。
「ええ、上昇する直前、吐き出しましたよ…神の欠片を無くした兄さんを。」
「ほな、今度は神の意識を一切持たへん、完全な悪かいな。面倒くさ…バブバブ。」
「いいじゃん、私この3人で、(腰の斧を見る)4人で旅するの好きよ…」
カワイイ事を言い出すレイコ。
「ウチは、レイコちゃんの事、大好きぃ…バブ。」
レイコの手を(恋人繋ぎ)強く握るリカ。
「僕は…リカちゃんが好きだよ。」
恐る恐るリカの指先を掴むゼノ…三人が繋がった腕を、嬉しそうに前後に振るレイコ。
「私はゼノの事、実弟だけどずっと好き…でもね」
その視線がこちら側を向く。
「私を好きだって思ってくれてる…貴方の事を、一番愛してるわ。」
そう言うレイコは、いつの間にか元の大きさに戻っていた。
彼等の進む先は、天国か地獄か、その運命は客観者に委ねられた…
この物語はフィクションですが…一部事実では無い、真実が含まれている事をご了承下さい。




