第12話 夏の雨を待ちながら
残忍のアジトで、お菓子を食べながら、TVを見てくつろぐ3人…
「ゼノ…そろそろいいか?お前しか、ベアードの力をコントロール出来んからな。」
しびれを切らした残忍が、催促する。
「兄さん、この感じでいい?」
TVの画面を指さすゼノ。
「土曜日のお昼に、タイムスリップするのか…」
何かを感じ取る残忍。
(ベアードの妖力は、茶番劇に世界を巻き込む事、僕は発動した。以下シナリオ形式で、リスタートする。と…)
パロディ喜劇
〈殺し屋は、夜明け前に目覚める〉
作・演出:ゼノ・デビル
大阪弁指導:デアボ・リカ
出演:
残忍・デビル/レイコ・デビル/ヒムラ・サタン/ゼノ・デビル/デアボ・リカ/
妖怪の皆さん
ホンワカパッパッ、ホンワカパッパッ、ホンワカホンワカファ…
とぼけたBGMが流れる中、幕が上がり…舞台が映し出される。
食堂のセットに座る妖怪達。
子泣きジジイ「兄ちゃん、勘定して〜」
奥から店員姿のゼノが現れる。
ゼノ「ハイッ…え〜とラーメン四杯で、400万円ですぅ〜。」
ズッテ〜ン!
椅子からズリ落ち、ズッコける子泣きと猫娘、ぬりかべ、一反木綿。
ゼノ「あっ、間違えました。400円です…」
子泣き「安っすぃなぁ〜(財布を取り出し、金を出す素振りを見せて)…つけといて!」
ドテ〜ン!
今度は、ゼノがすっ転ぶ。
妖怪達が退場し、横の席に座る二人組レイコと残忍がその様子を見ていた。
残忍「ちょっと、トイレ行ってくるわ。」
レイコ「何しに?」
残忍「何しにって…お花摘みに決まってんがな。」
レイコ「お花摘みって…カバがひき殺された様な顔して。」
残忍「誰がカバやねん!」
言いつつ、トイレに入る残忍。しばらくして、顔を覗かせると。
残忍「おいっ、レイやん…」
レイコ「なんや?」
残忍「紙無いねん…持って来て。」
レイコ「しゃ〜ないな…ビリッ!ホレ。」
読んでた新聞の小さな切れ端を手渡す。
残忍「こんなモンで、足りるかぁ〜!」
レイコ「お前の尻の穴より、大っきいやろ。」
残忍「もっと大きい紙、持ってこんかい!」
バリバリバリッ!
レイコ、畳んで積んであった大きい段ボールを、便所に放り込むと…慌てて中から怒った残忍が飛び出して来る。
残忍「お前は、俺をバカにしとるんかい?」
レイコ「うん、バカにしてるわよ♡」
オギャ〜!オギャ〜!
厨房から、赤ん坊の泣き声が響く。
残忍「なんや、うるさいな。大将この声は?」
ゼノ「すんまへん、捨て子ですねん…店の前に今朝がた。」
あやしながら、赤子(演:ちっちゃくなったリカ)を抱いたゼノが出て来る。
ジリリーン
電話が鳴りゼノが取り、出前の注文を聞いている。
ゼノ「こまったなぁ〜赤ちゃん連れて、配達行かれへんな。そうや、兄ちゃんら、そのラーメンタダにするさかい、ちょっと間この子見といてくれへんか?」
残忍「まぁ、ちょっとくらいなら…」
礼を言って、出て行く店主。赤ん坊を抱く残忍。不機嫌そうなレイコ…
レイコ「面倒くさっ、何で私らが。」
残忍「そない言うなや、カワイイやろ…ベロベロバ〜!」
ギャア〜!
泣きわめく赤子。
レイコ「貸してみ。ほ〜ら、高い高〜い」
残忍から取り上げ、その体を天井まで放り投げるレイコ。
残忍「コラッ!死んでまうぞ。」
キャハハハ…
笑って喜ぶ赤ん坊。
残忍「また、ちょっとトイレ行ってくるさかい、この子見とってや。」
レイコ「またトイレかいな、ゆるいケツの穴やな。」
トイレに入る残忍。赤ん坊と、取り残されるレイコ。その時、また大声で泣き始めた。
レイコ「なんや今度は…お腹すいたんか?」
周りをキョロキョロするレイコは、赤ん坊を抱き…おもむろに上着の胸をめくる。
レイコ「ちょっと待って、乳首立てるから…」
言いつつ、赤ん坊に乳房を吸わせる。
レイコ「んっ…こ、この子テクニシャンやわ…あ、あ、アカンて…ソコ、ソコぉ…オーノー!あぁ〜んイックウゥ〜!!」
のけぞるレイコと、トイレから帰った残忍の目が合う。
ふたり、声合わせ「わっ!」
レイコ「何見とんねん!この、変態!」
残忍「お前こそ、何してんねん。赤ちゃん使って、変態プレイか?」
レイコ「誰が変質者やねん…そんな事言うてるてと、シバキ回すぞ…このマザーファッカーがぁ〜!!」
限度を越えた大声で、叫ぶレイコ…
ズンズンチャチャ、ズンズンチャチャ、ズンズンチャチャ、ズンズンチャチャ、ピィ〜ユィン、チャ〜チャ、チャ〜チャチャ…
勢いのある音楽が流れ出すと、赤いふんどし姿のヒムラが、平泳ぎの動作をしながら…舞台前面を駆け抜けてゆく。そして、周回軌道の果て…停止する。
ヒムラ「何だ、この姿は…恥ずかしい〜!」
彼の体内から巨大な暗黒が溢れ出し…舞台の天井を破り、上昇してゆく。
残忍「やはりな…アザトホースはお前だったか、俺の部下にしては優秀過ぎると思ってた。」
その時…重力は失われ、空中に浮かび上がるセットと観客達。
ゼノ「演劇空間解除っ!兄さんの思惑通りに災悪は絞り出せた、でもコレは僕達の手には…」
バキバキバキッ!ギュウイイイ〜ン!
廃墟の街…浮かび上がる人、車、砕けて上昇する建物。
「見ろ、始まったぞ…」
空を見上げる残忍の視線につられ、天空に目をやるレイコ、ゼノ、リカ。
「フフフ…私を覚醒させる為、こんな茶番を?」
そう言って、空全面を覆い尽くす巨大な闇と同化してゆくヒムラの姿は、触手の生えた雲のようだった…




