消えて崩れて壊れて創る 4
「うそ....なんで....なんで....」
レントゥスと剣で打ち合いながら定まらない思考を掴もうとする。
レントゥスは、優しげに微笑んだ。
その右目は、血を流しているのに。
紫の瞳なのに瞳孔だけ朱色という気味の悪いその瞳は、私にも埋め込まれている。
「クノギ....ごめんね。」
強く振られた剣をかわして反射的に剣を降り下ろした。
その剣は、本当はあたらない筈なのにレントゥスは自分からあたりにいった。
私の中で時が止まった。
ズルリと剣が滑って落ちた。
レントゥスが崩れ落ちる前に彼を抱き止める。
周りが酷くうるさい。
「レントゥスっ....レントゥスごめっ」
罪悪感と悲しみで涙が溢れる。
前が滲んで彼がぼやけて見える。
「クノギ...ごめんね。
僕には時間が無かったんだ....君を守りたいのに....ごめんね」
傷付けてごめんと彼は、申し訳なさそうにに言った。
「レントゥスっ!やだっ....やだっ!レントゥス!!」
なにが嫌か口に出来ないほどその光景は見覚えがあった。
自分が斬った後の彼等にそっくりなのだ。
安心と切なさの混じったその瞳に私はすがるように彼にしがみついた。
「ごめんね...本当にごめん。君を守るために仕方が無かったんだ。君を助けるためには....これしか無かったんだ...」
ずるずると崩れる彼を抱き締めながらへたりこむ。
「ごめんねっ....君に全てを背負わせてしまう僕を許さないでくれッ....クノギッ」
どんどん温度を失う彼に強く抱き締められて酷く苦しげに告げられた言葉に驚く。
「...やだよ...謝らないでよ....全部全部許すから死なないでッ!やだよっ!やっと....やっとッ」
会えたのにと伝えようとした言葉は彼によって塞がれた。
「クノギ...ごめんね....君に本当に会いたかった....君の全てを奪って酷いことを背負わせてしまう僕だけど....君だけを見てるから」
ついばむようなキスを落として彼は、綺麗に微笑んだ。
「ごめんね....好きだよ、クノギ....優しい君が好きだよ....」
弱くなっていく彼の腕にはっとして目を見る。
「....僕の眼を代価に君に....力をって....頼んだんだ」
ズルリと床に倒れかけるレントゥスをなんとか抱えながら彼の言葉を聞く。
「クノギ....優しい、君に....頼みがある」
浅くなっていく息に、弱くなる彼の手の力に涙が溢れてとまらない。
「彼らを救って欲しい....傷付いて死んでしまう彼らを....どうか....救って....」
ただ、彼に死んでほしくなくてただ頷く。
「はは、僕....ひどい....やつ、だね」
レントゥスの瞳から涙が溢れた。
「好き....な、子に....こ.....な........」
ふっと口が動いているのに息しか聞こえない
ゆるりと細められた瞳から涙がまた溢れた。
あぁ....あぁ....嫌だ....
世界とは、なんて醜いのだろう....
世界とは、なんて酷いのだろう....
周りから聞こえる罵声も嘲りもなにもかもが汚ならしい
「....レントゥス........」
涙がポタリと彼に落ちる。
私は、酷い女だ。
彼を殺したのに彼に愛されてうれしい。
なのに....憎しみが溢れてとまらない。
「ねぇ....私の願いを叶えてくれる?」
左目を撫でて呟くと見えないはずの黒猫がニヤリと笑って現れた。
『死者は蘇らないよ?それに彼の願いは
「それに私の強化された感覚全てを上乗せして」うん?』
黒猫は、歪んだ笑みを浮かべて首をかしげた。
「この国を滅ぼせるだけの力を頂戴」
レントゥスを苦しめた全てを殺そう
彼が望む彼らを守ろう。
きっとレントゥスは、実験された人達を守って欲しいのだろう。
ならば、こんな国....壊してしまえばいいのだ。
『ふふ....いいよ、いいよ....その願い....』
叶えてあげる
ざわりと私の周りが黒く歪んだ。
黒猫は、妖しく笑っている。
『秘泪の魔族の秘術はね、召喚魔法さ』
黒い壁が私とレントゥスを囲んでいく。
『全ての神の動物達を使役し神すらも傅かせる。』
レントゥスの右目が靄に包まれていく。
私の身体を霧が包んでいく。
『禁術 集約召喚魔術を君に』
何かが抜けていくのを感じて歯を食いしばる。
『さあ、最初に何を呼ぶ?』
妖しく歪んだ笑みを浮かべて黒猫は問う。
「死神」




