九頭会議開催
お久し振りです。お待たせしてすみません。
毎日毎日暑いですね。
毎朝死にそうになります。
朝すら暑いって何なんでしょうね。
という訳で本編再開です。
短編番外は、別の場所に移動します。
気が向いたら読んでください。
紙が黒に染まる様を....私はただ見ていた。
目の前のアカが綺羅びやかに輝く。
美しい獣の瞳。
私が路を踏み外した時、きっと彼は私を殺してくれる。
だから、私は...この悪道を進んでいける。
ドサッという重たいものが落ちた音で緩く意識が戻ってくる。
まだ眠気を払おうと軽く頭をふると周りを見渡した。
ファクルの屋敷にある自分の客室に間違いない。
本がこれでもかというほど散乱しているが此木にとってはいつもと変わらない部屋だ。
山と積まれている本が崩れたらしく雪崩があったかのように床を埋めている。
しばらくぼんやりとそれを見詰めていたがドアがノックされたことにより意識をかき集めた。
「おーい、クルス起きてっかあー?」
仮にも自分の上司に対する態度ではないだろうと思いながら足場を選びながらドアに向かう。
「クルス殿はまだ寝ていられるのでは?
拙者が忍び込んで「黙ってろペド野郎」
...ペドは、私に対する侮辱ではないだろうかと思いつつドアを開けた。
『......なに』
自分が思ったより幾分か低い声が出たが気にしない。
寝起きは、機嫌が悪くなるのはきっと低血圧の者に限らずたくさんいるはずだ。
「お前仮にもリーダーなんだからそんな格好で出てくんなよ」
ハイガが心底呆れたように言いつつもドM忍者に目潰しをかけていた。
朝にもならぬ時間から元気なこったと思いながら要件を言えという。
「九頭が揃った。会議すっから出てこいだとよ」
眉間にしわが寄ったのが分かった。
こんな時間から会議とは一体なにがあったというのか。
教国は、こちらに気付いてはいるが下手につつけば藪蛇ということは分かっているはずだ。
別の国か都市でも反乱が続いているし飢饉や疫病の対処でこちらに構う時間はないはずだけど。
『...緊急なの?』
遅くまで魔法論文と魔力操作の訓練をしていたからかあまり頭が働かない。
額に手を当ててため息をつくとハイガがニヤリと笑った。
「カールハーバントン都市が動き出した。
向こうも狙われる理由が分かってたかなんだか知らねーけどこっちに宣戦布告出してきたぜ」
頭が痛いとはこのことだろう。
あまりの頭痛の種に頭を抱えてうずくまりたくなった。
ディミオスがカールハーバントン都市を狙うのは三つの理由がある。
一つ目は、商業が盛んで教国の収入源のひとつだから。
二つ目は、亜人奴隷の取引が盛んで随分悪趣味な貴族がこぞってここで買うから。
三つ目は、教国の王族の一人がここの領主だからだ。
現国王の叔父がここを統治している。
金の運用か上手いからこそここまでの商業都市を築き上げたのだろうがやり方は真っ黒を通り越してゲス黒である。
汚い手を使い商人から絞るだけ搾り取り贅沢をしているのだ。
王族に名を連ねている為下手に動けば一生商いも出来ないだろうし生きることすら難しくなるだろう。
この時代は、王族が神であり権力と金がモノをいうのだ。
ヘドが出ると思いながらも逆らうことは難しいのだ。
亜人達が絶滅しようと彼等は、止めないだろう。
それが分かっているから誰も今まで動かなかったのだ。
「あとイノバシオンとカバリェッロが騒いでるんだよ。」
頭痛が更に酷くなり鋭い舌打ちが出た。
苛々しつつも了承し黒い軍服に袖を通した。
「あら、ごきげんよう。シロカラスさん」
金髪碧眼に白い肌。
厚く赤い唇に長いまつげ。
細い体躯に豊満な胸部。
天使もかくやという見た目をしたカバリェッロのリーダー《アリシータ》を見て心底げんなりした。
この悪女が反乱軍にいることがどれだけ損失を与えるかファクルは理解しているのだろうか。
『こんばんは、カバリェッロさん』
私たちは、絶対に名前を呼ばない。
何故ならアリシータは、亜人などどうでもいいと思っているからだ。
むしろ毛嫌いしている。
だから、亜人ばかり居るシロカラスが目障りなのだろう。
彼女は、人間至上主義者だ。
その優しげに見える瞳の奥にははっきりとした嫌悪感が見えている。
ならば何故、反乱軍にいるかというと教国に自分の居場所を造るためだ。
新たな宗教の教祖として平和と平等を掲げ後の神として崇められたいが為にここにいるのだ。
過去を隠蔽し姿を変えたその手腕には感動すらするが如何せん信用は出来ない。
(亜人虐殺者が教祖になるとはね)
思わず据わりそうになる目をつむり大人しく席につく。
今から戦争をしなければならないのだ。
今までの小競り合いとは訳が違う。
王族殺しをするのだから世間への宣伝にもなるしある意味一番大事な作業だ。
「よぅ、嬢ちゃん。元気にしてたか?」
隣に座り楽しげに話し掛けてきたのは、ユートピアのリーダー《トムグ》だ。
『そこそこです。トムグさん』
彼には、色々と世話になっている。
中世あたりに使われていた武器に魔法を付与出来ないか、という実験に付き合って貰ったのだ。
実験は、成功し武器の威力も上がったが魔力を喰う為実用できても二回が限界という淋しいものだったが。
彼に気に入られて今でもコンパスやらカッターやらの文房具や細かい作業に使えそうなものをつくって貰っている。
よく工事現場に居るおじさんを思わせる風体だが細かい作業の方が得意というちくばくした感じの気のいい人だ。
なんというか父性みたいな?好好爺みたいな感じがして割りと好きな人である。
「こないだ作ったドールハウス良かったぞ!
精功な造りでタンスもベッドも良く出来ている。
あれだけの技量がありゃあ自分でも色んなもんできるだろ?
うちにはいっておいでや」
だが、私の無駄な知識のせいでドールハウス造りに夢中という残念な人でもある。
あと、リーダーを引き抜こうとするのはやめてほしい。
『仲間のが大事なので。あとあれは趣味ですから』
苦笑いしながら断るとトムグさんは、しぶしぶ引き下がった。
私の前に座ったカバリェッロは、訝しげにこちらを見ながら優雅にお茶をして居る。
「失礼します」
小さな声で左に座ったのは、フラルのリーダー《リトゥリア》だ。
気弱な性格だが魔法が関わると途端に性格が変わる不思議な人だ。
この人は、いつも私の左隣に座る。
子供が隣にいると安心するらしい。
これでも十六なのだが...と言うと更に安心された。
私は、年相応にみえないらしい。
ちなみに女性のように整った顔立ちをしているが男性である。
名前も女性名なのは深い理由があるそうなのだが苦々しい顔をするので聞かないでおいた。
彼もよく実験に付き合ってくれる人だ。
魔法道具を一から組み上げるというのはまず考えないそうでこの世界にある魔法道具のほとんどは、迷宮品か時が経って知を得たものだけらしい。
魔水晶(色付ビー玉みたいなの)と魔宝石を使った魔法具もあるがあまり長持ちはしないため使い捨てだ。
莫大な金がかかるものを使い捨てにするのは冒険者か貴族のどちらからしい。
どちらも命を狙われるからだろうなとは、思うがもったいない気もする。
それから十分ほど三人で談笑しながら他を待っていた。
最後にファクルが現れて厳かな口調で宣言した。
「これより、九頭会議を始める」




