七日間の旅 4
荷物をまとめて宿で銅貨十二枚払い乗り合い馬車に向かう。
「今さらだけど、馬車に乗るときもフード?」
「いや、客によるが魔洞窟都市に行く馬車には、獣人もよく乗るからフードはずしても大丈夫だ。」
その言葉にすこしほっとした。
フードが嫌いな訳じゃないんだけど人の目線が気になって仕方ない。
なにあれ?とみる目が少し不愉快で息苦しかった。
「まぁ、此木は平気だろうけど俺らは微妙だよな。乗れても難癖つけられるだろうし」
ハイガは、うっとおしそうに呟いた。
「....フード被っとく」
なにかあった時私がフードを外せば目は誤魔化せるはずだ。
私より不愉快な目にあっているのに我慢している彼らに申し訳なくなる。
「クルスは、馬車はじめて?」
マグリスさんが優しく笑って言う。
気を使われてるなあと内心で苦笑した。
「うん。馬を見るのも初めて。町も木造が多いんだね。石とかレンガが多いと思ってたよ。」
マグリスさんに目を見開かれて首をかしげる。
なにか、おかしいこと言ったかな?
「...そっか。石とかは切り出しが難しいから貴族や貴重な建物に使われるんだ。
小さい町とかは、ほとんど木で出来てるよ。
というか、レンガ?ってなに?」
「へ?えっと確か、粘土と砂と石灰?と水を混ぜて型に入れて固めるやつ。組み立てながら間にセメント?あー、粘土だっけ?なんかそういうの挟みながら乗せてくと丈夫な壁になるんだよ。」
マインク○フトでレンガの家作るために大量にかまどで焼いた覚えがあるよ。
地味に大変なんだよね、あれ。
「へぇ。クルスは、物知りだね。」
....いや、無駄な雑学なんですけど。
マイン○ラフトで、作るために色々調べまくっただけなんです。
少し居たたまれなくてラットさんに話しかけにいった。
「そういえばラットさん、私ってどういう扱い?落ち人って事みんなに言ったっけ?」
「不用意にその言葉を出すな。
お前の素性は、ここのメンバーとラミとユランしか知らない。
落ち人というのは、王国の召喚者、人間の勇者という意味合いが強い。
知らない知識を豊富にもつ賢者という奴もいるが召喚されたほとんどの者は力に特化していたという。
弱く聡明というのは、教会が神の力を与えられて強くなったとする為のデマだ。」
わぉ、キナ臭いね。
お金と権力で握りつぶされた真実がありそうだ。
「へぇ....じゃぁ教会も敵だね」
頭の奥が冷えて残酷な刃が脳裏に浮かぶ。
「無理矢理従わされた可能性もあるし...過去を脚色して好き勝手弄れるのは権力者だけだ。」
この世界を恨んで死んだ同郷がいるのなら尚更この世界を壊さなければならない。
神だろうとなんだろうと、許すわけがない。
「....あまり、喧嘩を売りすぎるなよ。
一つに絞れ。あちこち寄り道出来るような夢じゃないんだ。」
ラットさんが呆れたように言った。
「今更だよ。世界に喧嘩売るんだから。
人の為の神様なんかいないんだよ。
あるのは、ねじ曲げた真理と教典を使う神の信徒なんて馬鹿な偶像を崇め奉るクズだけ。
神社の孫娘が言うんだから間違いないよ。
神様は、人を見てるんじゃない。世界を見てるんだから。たかが、砂粒一つを大事にするなんてあり得ないね。」
馬鹿にしたように言えばハイガが小さく笑ってカミウさんが苦笑しターラさんは小さく拍手した。
マグリスさんとラットさんは、キョトンとした顔をした。
「ちゃんと神様が見ているなら神社の孫娘がこんな場所に落ちるわけない。
まぁ、ただの八つ当たりだけどね。」
肩をすくめて言えばみんなが小さく笑う。
「ジンジャというのは教会みたいなものか?」
「違うけど、神様がいるわけだし似たようなものかもね。
でも、大分違うのかもしれない。向こうとこっちじゃ文明も教育も信仰も違うと思うし。」
少なくとも差別するような教会はないはずだ。
動物だろうとひとつの命でそれは尊ぶものだって感じのものが多い気がする。
正しく学んだ訳じゃないし、家も継ぐ気は更々なかったし。
信仰足りないって?都合のいいときしか神様を頼らない人が多い現代社会で信仰もなにもない気がするけど。
「お前は、過激だな」
ハイガが笑いながら私の頭を軽く撫でた。
「考え方が違うだけだよ。」
まぁ、ただ気に入らないってのもあるけど。
勇者なんてこの世にいるわけないじゃん。
物語の中でさえ生け贄のように戦い続けているのに。
「でも、クルスは頭が良い。
難しい言葉が次々に出てきて凄い不思議な気持ちになる。」
カミウさんが私の事を見下ろしていう。
その瞳は、フードに隠れてよくわからない。
「頭は良くないよ。向こうじゃ普通だったし。でも、手より口が早いってよく言われた。」
「確かにな。口喧嘩じゃ勝てそうにない」
カミウさんが軽く笑って言う。
それでも、お母さんには勝てないからなあ。
なにが優れているとは明確に言えない。
日本では、成績も中の上をいったり来たりで学年全生徒の見事半分という順位をだしたこともある。
それは、ある意味凄いと誉められたけど結局私は、平凡でしかなかった。
学校に通って友人と好きな漫画やアニメの話をして部活で絵描いて、帰りに本屋によって立ち読み。
母と父とは、普通に仲良くてゲーマーな兄と不良擬きな弟とも仲良かったし。
年の離れた従姉のお姉さんにお古貰ってたまにお洒落したりするのも好きだった。
....そう、私は、平凡だった。
なのに、今の私は人を殺すのに躊躇いも躊躇もない。
あの実験で色々壊れたのは自覚してるけど....これは....本当に....
「此木?どうした?」
ラットさんに声をかけられてはっと我にかえる。
「なんでもないよ。」
私は、本当に私なのだろうか?
そう考えてしまう自分の思考にふたをして見なかったことにした。
今は、この人達を助けることに集中しよう。
「でも、クルス。魔法は神様が与える神秘なんだよ?魔法や魔術はまず魔力がなきゃ使えないし。」
ターラさんが屈んでからなにか呟くと火がふわりと現れた。
マジか。いや、魔法って技術的なやつじゃないの?
マジで?神様いるわけ?
「魔力って最初からあるんじゃないの?」
「あるわよ?神様が邪悪なものを退けるために与えたんですって。」
私は、首をかしげる。
それは、環境に適応するために動物が進化しただけではないだろうか。
魔力が元々あるならそれを使うための理論を作った人が偉大なのであって神様は偉くないんじゃないか。
「魔法を知るための魔道具かギルドにあるからそれでクルスをみてもらわないとな。
私では、看破できなかった。」
「あの魔道具不思議よね。本人以外確認できないようになってる上に発明した人分からないなんて。」
....えぇ....マジで?え?神様いるの?
現人神とかじゃくて?マジで神様?
うわぁ....喧嘩売っちゃったよ。
まぁ、見てないよね。平気なはずだ。
いや、本当に....大丈夫だろうか、私。




