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不遇スキル【撤退】しか持たない商家の三男、死ぬたびに最適解を見つけてダンジョン攻略  作者: 昼ライス


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第53話 帰ってきた場所

毎日20時投稿

東ダンジョンを攻略してから、数日が過ぎていた。


街の空気は明るい。


ダンジョン帰りの冒険者たちの顔にも、どこか余裕がある。


以前のような張り詰めた空気はなくなっていた。


理由は分かっている。


東ダンジョンが、静かになったからだ。


モンスターの出現は減り、浅層の危険度も下がった。


初心者でも入りやすくなったと、ギルドでは噂になっている。


ロイはそれを、少し離れた場所から聞いていた。


自分がやったことだという実感は、まだ薄い。


ただ――。


終わった、という感覚だけはあった。




久しぶりに家の扉を開ける。


「ただいま」


声をかけると、すぐに足音が近づいてきた。


「ロイ!」


母が顔を出す。


安堵したように、そして少しだけ怒ったように眉を寄せた。


「無事なのは聞いてたけど……顔を見ないと安心できないのよ」


「悪かったよ」


ロイは苦笑した。


ダンジョンに潜るようになってから、家にいる時間は減っていた。


仕方がないことだと思っていたが、こうして迎えられると少しだけ申し訳なくなる。


「今日はちゃんとご飯食べていきなさい」


「そのつもりだよ」




食卓には、見慣れた料理が並んでいた。


豪華ではない。


だが落ち着く味だ。


父はいつも通り、静かに席についている。


長男のルイも仕事から戻ってきていた。


「噂は聞いたぞ」


ルイが言う。


「東を抜けたんだってな」


「まあね」


ロイは肩をすくめる。


大げさに語る気はなかった。


だが、家族の前では少しだけ誇らしい。


「無茶はしてないだろうな」


父が低く言う。


「してないよ」


即答だった。


嘘ではない。


無茶をしないことこそ、ここまで生き残った理由だからだ。


父は小さく頷いた。


それ以上は何も言わない。


だが、その表情はどこか柔らかかった。




食事の途中で、扉が開いた。


「悪い、遅くなった!」


次男のレイが入ってくる。


隣町の仕事から戻ったばかりらしく、まだ外套を脱ぎきっていない。


「ロイ!」


顔を見るなり、ほっとしたように笑った。


「攻略したって聞いたぞ。誕生日のときいなかったの、まだ気にしてたんだ」


「もういいって」


ロイは苦笑する。


「これ、まだ持ってるか?」


レイが首元を指差した。


被ダメージ軽減のネックレス。


ダンジョンに入る時は必ず身につけている。


「うん。おかげで何度か助かった」


正直な言葉だった。


レイは嬉しそうに笑う。


「ならよかった」




食事は、いつもより長く続いた。


商売の話。


街の景気の話。


最近増えた冒険者の話。


ダンジョンの話も出たが、父は深くは聞かなかった。


ただ一度だけ言った。


「冒険者も商人も同じだ」


ロイが顔を上げる。


「最後に生きて帰ったやつが勝ちだ」


その言葉に、ロイは小さく頷いた。


それは、自分がこの数ヶ月で学んだことそのものだった。




夜。


自室のベッドに倒れ込む。


天井を見上げる。


静かだった。


ダンジョンの圧も、戦闘の緊張もない。


ただの夜だ。


「……久しぶりだな」


「なにが?」


リアが枕元に浮かぶ。


「何も考えなくていいの」


ロイは目を閉じた。


東ダンジョンは攻略した。


もう、あの巨大蜘蛛はいない。


しばらくは、普通に過ごしてもいいはずだ。


「少し休むか」


そう呟く。


リアは何も言わなかった。


ただ、静かに宙を漂っている。




窓の外では、街の灯りが揺れていた。


いつもと変わらない夜。


守られている日常。


ロイはそのまま、ゆっくりと眠りに落ちていった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


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もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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