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不遇スキル【撤退】しか持たない商家の三男、死ぬたびに最適解を見つけてダンジョン攻略  作者: 昼ライス


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第41話 まだ足りない

毎日20時投稿

東ダンジョンへ向かう道すがら、ロイは何度も頭の中で手順をなぞっていた。


巣の外縁を焼く。


中型蜘蛛を先に外へ出す。


巨大蜘蛛が動いたら、深追いさせずに後退する。


狭い通路まで誘導する。


そこで初めて戦う。


単純な作戦だ。


だが、単純だからこそ崩れやすい。


「今日はやるんだね」


リアが隣で言う。


「ああ」


ロイは頷いた。


「ただし、倒すのが目的じゃない」


「逃げ道優先」


「そうだ」


今回の目的は成功ではない。


成立するかどうかの確認だ。




中層へ降りる。


糸の量は相変わらず多い。


だが、以前ほど気にならない。


焼ける。


それが分かっているだけで、精神的な余裕が違った。


巣の外縁まで進む。


気配はある。


中型蜘蛛が巡回している。


巨大な影も、奥で静かに動いているのが分かる。


「……始める」


ロイは油瓶を取り出した。




油を撒く。


糸に染み込む。


火属性魔石を転がす。


火が走った。


乾いた音とともに糸が焼け落ちる。


小蜘蛛が一斉に散った。


予定通りだ。


煙が上がり、視界が開く。


すぐに気配が動く。


中型蜘蛛が一体、外へ出てきた。


「来た」


ロイは下がりながら槍を構える。


広い場所では戦わない。


通路寄りへ誘導する。


中型蜘蛛が踏み込む。


槍で牽制し、距離を保つ。


火を使う必要もない。


動きは読める。


数度の攻防のあと、隙を突いて突き倒す。


問題ない。


ここまでは、すべて予定通りだった。




だが、次の瞬間だった。


巣の奥で、空気が変わる。


糸が一斉に震えた。


「……来る」


リアの声が小さくなる。


巨大蜘蛛が動いた。


ゆっくりと、だが確実に。


影が持ち上がる。


一本の脚が外へ出るだけで、圧が違う。


床がわずかに軋む。


ロイはすぐに後退を始めた。


ここからが本番だ。


引き出す。


それだけでいい。




だが、違和感があった。


気配がもう一つある。


「……?」


振り向いた瞬間、背後の壁を中型蜘蛛が走ってきた。


「もう一体!?」


想定外だった。


巡回個体を見落としていた。


前に巨大蜘蛛。


後ろに中型蜘蛛。


挟まれる形になる。


「まずい」


即座に油を投げる。


火を走らせる。


だが、焦りがあった。


火が広がりすぎる。


退路の一部まで燃え上がった。


「くそ……!」


通路が狭まる。


巨大蜘蛛がさらに一歩前へ出る。


距離が近い。


思っていたより、速い。




糸が飛ぶ。


ロイは横に転がって避ける。


腕にかすった糸が張り付いた。


強い。


引かれる。


すぐに短剣で切り払う。


中型蜘蛛が迫る。


投擲ダガーを投げ、動きを止める。


戦っている場合ではない。


離脱だ。




「ロイ!」


「分かってる!」


油をもう一本投げる。


火を走らせる。


炎が壁を覆い、一瞬だけ視界を遮った。


その隙に走る。


糸を踏み切り、通路へ飛び込む。


背後で重い音が響く。


巨大蜘蛛が通路の入口まで出てきていた。


だが、それ以上は追ってこない。


しばらくして、気配が遠ざかる。




安全圏まで戻り、ロイは壁にもたれた。


心臓の音がうるさい。


呼吸が荒い。


怪我はない。


だが――。


「……危なかった」


リアも珍しく黙っていた。


しばらくしてから、ようやく口を開く。


「惜しかったね」


「ああ」


ロイは頷く。


やり方は間違っていない。


巨大蜘蛛は動いた。


誘導は可能だ。


だが――。


「一対一にできてない」


それがすべてだった。


中型蜘蛛の存在を完全に切り離せていない。


そして、火の扱いもまだ不完全だ。


焦れば、自分の逃げ道を塞ぐ。




ロイはゆっくり息を吐いた。


「これじゃ死ぬな」


静かな言葉だった。


リアは否定しなかった。


軽口もない。


ただ、小さく頷く。


巨大蜘蛛は動かせる。


だが、今のままでは勝てない。


次は、もっと詰めなければならない。


そうしなければ――。


本当に、死ぬ。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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