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不遇スキル【撤退】しか持たない商家の三男、死ぬたびに最適解を見つけてダンジョン攻略  作者: 昼ライス


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第40話 動かせるか

毎日20時投稿

東ダンジョンの入口に立った時、リアはロイの荷物がいつもより軽いことに気づいた。


油は少なめ。


火属性魔石も予備を含めて数個だけ。


戦う装備ではない。


観察のための装備だった。


「今日は本当にやらないんだね」


リアが肩の横を飛びながら言う。


「ああ」


ロイは頷いた。


「倒さない。試すだけだ」


巨大蜘蛛を思い出す。


あの大きさ。あの糸の量。あの空間。


準備なしに踏み込めば終わる。


それはもう分かっている。


だから今日は、近づくだけだ。




中層へ降りる。


糸の量は変わらない。


いや、少し増えているようにも見える。


小蜘蛛が壁を走り、中型蜘蛛の気配も遠くに感じる。


だがロイは戦わない。


必要以上に近づかない。


目的は別にある。




巣に近づくにつれて、空気が変わる。


音が減る。


代わりに、糸がわずかに擦れる音が聞こえる。


風もないのに、細く震えている。


「……ここからだな」


ロイは足を止めた。


前方には、糸の壁。


その奥に、広い空間がある。


前に一度見た場所だ。


「今日は近いね」


「見ないと分からないからな」


ロイは身を低くし、糸を揺らさないように進む。


中型蜘蛛が一体、壁を移動しているのが見えた。


こちらには気づいていない。


巡回しているようだった。




広間の縁に出る。


奥は暗く、全体は見えない。


だが、いる。


気配だけで分かる。


巨大蜘蛛。


糸の中心に、巨大な影が沈んでいる。


動いていない。


待っているようにも見える。


「……動かないな」


ロイは小さく呟いた。


「寝てる?」


「違うな」


周囲の糸が、わずかに震えている。


完全に静止しているわけではない。


感知している。


巣そのものが、目と耳の代わりになっている。




ロイは腰から投擲ダガーを一本取り出した。


「やるの?」


「小さくだけな」


狙うのは巨大蜘蛛ではない。


巣の端。


糸が集中している場所。


投げる。


刃が糸を切り裂き、束が崩れ落ちた。


その瞬間。


巨大蜘蛛の脚が、わずかに動いた。


「……反応した」


リアが小声で言う。


だが、それだけだった。


巨大蜘蛛はその場から動かない。


代わりに、中型蜘蛛が一体、こちらへ向かってくる。


「なるほどな」


ロイはすぐに後退した。


これは予想通りだった。


中心は動かない。


外側の個体が対応する。




さらに距離を取る。


中型蜘蛛は一定の場所まで来ると止まり、再び巣の方向へ戻っていった。


深追いはしない。


縄張りがはっきりしている。


「出てこないね」


「ああ」


ロイは広間の奥を見つめた。


巨大蜘蛛は動かない。


巣の中心から離れる気配がない。


ここが安全だと理解している。


「理由がないんだな」


自然と口に出た。


外へ出る理由がない。


危険を冒す必要がない。




もう一度だけ試す。


油を少量撒き、火属性魔石を転がす。


小さな火が走り、糸が燃える。


煙が上がる。


その時、巨大蜘蛛の影が少しだけ持ち上がった。


だが――。


それ以上は動かない。


火が消えるのを待つように、再び沈んだ。


「……だめか」


ロイは呟いた。


火だけでは足りない。


巣を焼く程度では、動く理由にならない。




十分だった。


これ以上は意味がない。


「戻る」


ロイは即座に判断した。


リアも何も言わずついてくる。


今日はここまでだ。




帰路につきながら、ロイは考えていた。


方法は間違っていない。


だが条件が足りない。


巨大蜘蛛は巣を捨てない。


安全だからだ。


「自分の場所から出る気ないね」


リアが言う。


「ああ」


ロイは頷いた。


「なら――」


少しだけ考え、続ける。


「出る理由を作るしかない」


何をすれば動くのか。


何を失えば動くのか。


それを見つけなければならない。


巨大蜘蛛を倒すためではなく。


戦う場所まで、連れてくるために。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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