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第百五十四話 ピンク髪のアフロヘアな女性2


「はい。その……義手を作ってもらいたくて」


「なるほどね。でも、ウチは結構高いよ」


 ピンク髪の女性は俺たち三人を見回す。

 店も目の前にいるピンク髪のアフロヘアな女性もかなりへんてこりんではあるが、この女性は六天将であり魔術の申し子と呼ばれた一応俺の師匠でもあるダーレン・ラルストンが自分よりも優れた魔道具師であると認めた人物らしい。……まあ、あのおっさんが魔法師として凄いこと知っているけど、魔道具師としての腕は知らないから認められたことが凄いのかは分からないけど。

 まあでも、腕の立ちそうな狼顔の冒険者がこの工房に依頼していたわけだし、実力は確かではあると思う。


「それって、いくらぐらいなんですか?」


「王都とかそういう大きい街で一軒家を立てるくらいの費用は最低限かな」


 都市部の一軒家くらいってことか!?吹っかけているんじゃないか!?とびっくりするが、目の前にいる人物は金をむしり取ろうと考えそうなタイプには見えない。

 俺にそんな大金があるはずもなく、やっぱり頼ることになるのかと思いながら手提げ鞄に手を突っ込んで紹介状を取り出し目の前にいる女性へ渡す。


「これは?……カーリン商会?エリザベス?……なんだい君たち、エリザベスお嬢様の知り合いだったのか」


「はい」


 ピンクのアフロヘアな女性がエリザベスお嬢様呼びしたことに驚きを覚えながらも頷いた。なんというか……これは完全な偏見なんだけど、人に興味がないタイプだと思っていたから、エリザベスさんの名前を見ただけでエリザベスという個人を特定できたことを意外に思ったのだ。


「それならむげに断ることもできないなぁ……。カーリン商会に、それもエリザベスお嬢様には返しきれない恩があるし……。義手を作ってほしいんだっけ?」

 

 頷くとピンクのアフロヘアな女性は、確かにエリザベスお嬢様には恩があるけど義手をタダで作るわけには、もう食べれる野草を探す生活には戻りたくないし、なんて独り言をつぶやき始める。

 結論が出るまで待とうと思っていたら、接客モードのクローディアさんが話しかけた。


「あの、中に入って話し合いませんか?」


「……ん?それもそうか。中に入って」


 

 


 お店の内装は真っピンクで棚にはぬいぐるみや人形が並んでいた。女の子が好きそうな動物のぬいぐるみや男の子が好きそうな勇者っぽい人形、もじゃもじゃのよく分からない奴や触手を生やした気味の悪いものなどと好みがいまいちつかめない。


「ピンクがお好きなんですね」


「いや、好きじゃないよ」


「いえでも、ええっと……」


 予想外の回答だったのだろう。クローディアさんは目を真ん丸とさせながら部屋を見まわしながら言いよどむ。


「経営戦略ってやつだよ。ほら私って女でしょ。で、女が工房長ところってあんまりないわけだからさ、メインターゲット層を女にしてみたってわけ。やっぱりそういう人達ってピンクとか人形が好きでしょ」


「はあ……」


 クローディアさんは納得いってなさそうな生返事をする。

 女性をターゲット層にするからといって部屋を真っピンクにするのは極端すぎるし、ぬいぐるみや人形も女性受けが悪そうな物も並んでいるから納得いかないのは当然だろう。

 そもそもここに来るような女性は冒険者でファンシーな方が好みである可能性はそこまで高くなさそうだし、腕はあるわけだからそんな幅の狭そうな層を狙うよりもちゃんと名の知れた冒険者をターゲットにした方が良さそうな気がする。このことを口にしたら、話が横道に逸れそうなので指摘はしないが。


「ああ、私のことはマイラって呼んで」

 

 思い出したかのようにピンク髪のアフロヘアな女性――マイラさんはそう言う。さっきからすっげえ心臓がバクバクといっていたんだけど、マイラさんの隙というかズレたところというか、人間性みたいなものが少し垣間見えたからなのかちょっと落ち着く。 

 それで決心がついた。


「あの、お金の話なんですけど。エリザベスさんからの紹介だからっていってお金関係を有耶無耶にするつもりはないですよ」


「そうなの?何か当てがあるのかい?」


「……いやっ!まあ一応、ここで冒険者として一山当てて、っていうつもりではありまして……」


「ふーん」


 マイラさんは俺たちへ胡乱げな目を向ける。女二人と片腕のない男のパーティーが、冒険者として稼ぐと言われても説得力がないのは分かっていたが……信用を掴むのは難しそうだ。


「冒険者ランクはいくつなんだい?」


「まあ……一応冒険者ランクはEだったんですけど、それは過去の話でして、今は護衛の仕事をやって腕を磨いているので、実力に関しては問題ありません!」


 それは、という部分からめちゃくちゃ声を張って言い切ると、マイラさんはまた、ふーん、と言う。

 どうせわかるわけがないんだしCランク位に盛っておけばよかったか、と後悔していたら、リオノーラさんが口を開く。


「セオドアさんの実力は保証しますよ。確かに今は右腕を失っていることで戦力ダウンしていますけれども、マイラさんがその右腕を補ってもらえるなら間違いなく費用を稼げるはずです」


「つまり、私が作った義手でお金を稼いでから費用を払うってこと?」


「はい」


 言ってることは無茶苦茶なのに混じりけのない純粋無垢な笑顔で頷くリオノーラさん。

 これはダメそうだとため息をついて顔を上げたら、マイラさんはリオノーラさんをみて目を真ん丸とさせていた。


「え、もしかしてだけど、君って鮮血姫だったりする?」


「そう呼ばれることもありますね」


「そうなんだ!私、君のファンなんだよ!君が魔道具ってものを一切分かっていない顔だけがでかい奴の鼻っ柱を折ってくれたからさ!」


「……そのようなことをした記憶はありませんが?」


 リオノーラさんは本当に分かっていなさそうな感じで首を傾げた。


「とぼけないでいいって!この街の奴らは君のことを常識知らずだとか言って罵っていたけど、私はふんぞり返っていた奴らを成敗したヒーローだと思っているからさ!」


「……あんた、そんなことしてたの」


「そのようなことは……。ただ、ここにいた時にふと一人でいることが物寂しく思ってしまいまして。一緒に横を歩いてくれる方を探していたことはあります」


「何?辻斬りみたいなことをしたの」


「いえ、プロポーズをしただけですよ。……今考えれば、とてもはしたなかったです……!」


 なぜ、プロポーズしただけでマイラさんの言うふんぞり返っていた奴らを懲らしめることになるのだろうか。リオノーラさんは頬を染めているが全く可愛らしく見えない。クローディアさんはリオノーラさんがプロポーズをした後に血で血を洗うようなデートが繰り広げている場面を想像したのか、おでこを右手で当てながら首を振った。

 一人の世界に入っていたマイラさんは幸いにも二人のやり取りが聞こえていなかったみたいで、推しのアイドルと出会ったファンみたいな勢いで話し始める。


「鮮血姫がいるなら信用できるよ!それにエリザベスお嬢様の推薦もあるわけだしね!いいよ!私が世の中の魔道具師をあっと言わせるような義手を作ってあげる!」


「……あの、普通に使えるものでいいですからね」


 このテンション高いテンションを見て先ほどタケノコ槍を背負って立ち去った狼顔の男の姿がよぎり、しっかりと要望を伝えておく。


「普通にいいものを作るから任せて」


「その、世間一般から見て違和感のないというか、義手って普通こういうものだよなってものでいいですからね」


 機嫌を損ねることになったら嫌だからあまり要望を出したくはないのだが、義手なんてものは一生付き合っていくような代物だから念押しする。


「うん、わかったわかった」


 二回分かったと言うのは分かっていない時の反応にしか見えないのだけれども、マイラさんのことを信じ…………ようか。狼顔の男とタケノコ槍のことは忘れよう。



お読みいただきありがとうございます

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