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第百五十五話 パーティメンバーを探しに


「何よ、用事があるからって!いつもはうっとうしいぐらい引っ付いて来るのに肝心な時にいなくなるなんて!」


 冒険者ギルドに向かう道中、クローディアさんはぷりぷりと怒っていた。俺たちは今頃ダンジョンに潜っているはずだったのだが、案内役をしてくれる予定だったリオノーラさんが急遽用事があると言い出したことで、冒険者ギルドでダンジョンのことを良く知っていそうな冒険者を仲間に誘うことにしたのだ。

 でも、虫の居所が悪いクローディアさんを見て仲間になりたいとは思わないだろうから、なだめた方が良いんだろうけど……。そもそも、ダンジョンで一獲千金を狙う理由が俺の義手の費用を稼ぐためでしかないから、クローディアさんが手伝ってくれるのは善意なわけで。口出しするのは気が引けるんだよな……。

 

「まあ、これで良かったんじゃないですかね。リオノーラさんについて来てもらうのはズルい感じがしますし」


「……ズルいってどういうこと」


「その、リオノーラさんって、トレジャータウンのダンジョンを良く知っていて実力的にもオーバースペックなわけじゃないですか。この街でボロボロになりながらダンジョンから出てくる冒険者たちを見ていると、ああ自分はこんな風にはならないで安全にダンジョンを進めるんだろうな、って思ったら引け目を感じてしまっていて」


「いつからアンタはそんな殊勝になったのよ」


 ジト目を向けるクローディアさん。

 適当言ったけど、リオノーラさんがついてこない理由ってそういうことだったりするんだろうか。……なわけないか。

 こじつけに近い想像をしていると、クローディアさんはため息を吐いて怒りのボルテージを下げていた。


「……こんなところでぐちぐち言っても仕方ないわね」


 そう言って首を振り、いつの間にかたどり着いていたこの街の総本山とでもいえる冒険者ギルドの扉を開く。一度訪れた場所なためもう驚いたりはしないが、荒事に慣れていそうな顔つきや服装をした奴らでばかりで、最初ここに来た時はマフィアのアジトってこういうところなんじゃないかと思った。まあ、ただのイメージだから実際は全然違うのかもしれないけど。

 冒険者ギルドはこの街で一番大きく、訓練場やレストラン街、銭湯、武器屋、雑貨品、宿舎などと何でも取り揃っている。武器の貸し出しがあったり宿もほぼタダ同然で借りられるみたいで、冒険者になりたてのお金なんて一文もないようなぺーぺーにも良心的らしい。こんな荒くれものばかりの街に冒険者になりに来るのなんて、この街の気性と合う奴か普通の暮らしさえできないようなレールから外れた奴か並々ならぬ野心家だろうし、恩義を売っておくというのは賢いのかもしれない。


「一獲千金を狙う骨のあるやつを探しているわ!我こそはってやつは私たちと未確認領域へ行こうじゃないの!」


 冒険者ギルドの中に入ると、クローディアさんが叫び出した。突然のことで俺はあわあわとするが、冒険者たちはこっちを一瞬だけ見ただけだったから安堵の息を漏らす。

 クローディアさんが口にした未確認領域とは、その名の通り冒険者たちがまだ開拓していない場所を指す。開拓されていないため、秘宝などが隠されていることもあったりするんだとか。実際ここのダンジョンで一山当てて作られたのが冒険者ギルドらしいし。ただ、この街には五十年ほどの歴史があり、それでもなおいまだに攻略されていない領域ということは、それ相応の理由があるわけだ。


「たく、タマのあるやつらがいないわね!」


「ちょっと、こっち見てますって……!」


 口の悪いクローディアさんを慌てて止めに入る。冒険者なんて血に飢えた獣のようなもので、こんなことを続けていたら絶対に厄介ごとになるだろうから。


「だからなんなのよ?」


「いやだって……。別にこんな大声で叫ばなくても、ギルド側で紹介してくれたりするかもしれないですし」


「……あんたねぇ、そんな向こうから紹介されるのを連れて行っても仕方ないでしょ。本当に実力がある奴、それも一獲千金を狙う野心家を探さなきゃいけないんだから。ここで名乗り出るぐらいのクレイジーさが必要なのよ」


 やれやれと首を振るクローディアさんに無茶苦茶だと思う一方で納得もあった。ギルドに紹介してもらうという行為は、ソシャゲのガチャを単発で回しているようなもので、大金を稼がなければいけないという目的がある以上、自分から人材を探し出すべきなのかもしれないと。


「おうおう、威勢がいいじゃねえか嬢ちゃんたち」


 クローディアさんの意見に賛同しかけていたが、体長が二メートル近くありそうな恰幅のいいヤクザのドンみたいな男に声を掛けられて、やっぱりそんなことないなってなった。

 ガチャ結果がノーマルレアだったとしても、命まではベットしたくない。


「あら、仲間の立候補でもしてくれるのかしら?」


「ハッ!誰がてめえらみてえなけつの青いガキと。ピヨピヨ騒いでるから、舐めるなよって忠告しにきてやったんだ」


「私たちが何を舐めているっていうの」


 クローディアさんはムッとした様子で言う。

 俺は心の中で、自分は喧嘩するつもりはないですよ、と思いながら話の行く末を見守る。


「てめえら、ランクはいくつだ?」


「私はなりたてだからFランクよ」


「自分はEです」


「そんなランクで未確認領域に挑戦するっていうのは、舐めているんじゃなきゃ何だっていうんだ?」


 ヤクザのドンみたいな男の発言は全くもってその通り過ぎて反論の余地もない。しかしながら、クローディアさんの目つきは鋭く全くもって折れていなさそうだ。


「腕前をランクだけで見るなんて視野が狭いんじゃないの?」


「ランクが強さのすべてじゃないってか?ああ、確かにその通りだ。お前は生意気だがその口を聞いていいくらいの実力はありそうだしな。まあ、隻腕の男は足りていないように見えるが」


「見る目がないね。こいつは魔術師であたしよりも腕が立つわよ」


「ほう」


 ヤクザのドンみたいな男はじろじろと俺のことを観察する。本当にたいしたことないので勘弁してください。


「なんにしても、帝国の六天将であったとしてもダンジョンのことを何も知らねえ奴を仲間にしてぇとは思わねえなぁ」


「はぁ?」


「それが理解できてねえから、ダンジョンとこの町の冒険者を舐めているって言ってんだ」


 ヤクザのドンみたいな男は言葉では否定しているが、俺とクローディアさんをじろじろと見てから一瞬口元を歪めた。

 改めてこの男の容姿を確認してみると、もじゃもじゃな髪の毛でひげもぼーぼに生やしていて体躯は縦横共にめちゃくちゃでかいのだが、瞳は冒険心を忘れていない少年のようだ。武器は持ち込んでいないようで、これからダンジョンに潜る予定がないか、もしかしたらクローディアさんと同じように拳で戦うのかもしれない。

 そんな男は冒険者ギルドの扉に手を掛けて振り向く。


「ついて来い」


 それだけ口にして出て行ってしまった。


「もう、なんなのよ!」


「どうします?」


「……行くしかないでしょ!」


 やけくそ気味に叫ぶがついて行くつもりはあるらしい。

 俺もついて行くことには異論がなく、いつの間にかあのヤクザのドンみたいな男への恐怖心がなくなっており、あの男が俺たちに何するつもりなのかが気になっていた。

お読みいただきありがとうございます

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