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遥か昔、神を殺した勇者がいた。何か大切なものを取り戻す為に、犠牲を強いた神に逆らったそうだ。理由はどうあれ、神を失った世界は混迷を極めた。
空は濁り、台地はひび割れ、人が住める土地はほんの僅かになった。だが同時に、魔王を倒してもなお世界を闊歩していた魔物も一斉に姿を消した。
人々は逞しく生き抜き、世界はやがて息を吹き返す。神殺しの勇者が神になって世界を甦らしたなどと言う一説もある。
勇者が善だったのか悪だったのか、未だに結論は出ない。ただ、神殺しの勇者のお陰で現在の我々が魔物に怯える必要が無いという事。それだけは確かであった。
勇者のその後は杳として知れない。しかし神殺しをも成し遂げる者がそうそう死ぬとも思えないので、ひょっとすると、本当に神にでもなったのかもしれない。
いずれにせよ私に出来る事と言えば、神話の世界に想いを馳せ、今の平穏を享受する事だけだった。