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「夕凪」外伝〜あの時の僕は…  作者: 乙花
第1章
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7/14

本当に大切なもの

新規事業は着々と準備が整っていった

最終的に純平の企画が採用されることになり

商品披露イベントの日程も決まった


純平は採用が決まって初めてのイベントということですごく張り切っていた


もちろん僕も企画を出していたが、選ばれなかったことを悔しいとは思わなかった


純平の努力をずっと見てきたからだと思う

人の功績を純粋に喜べるなんて

正直、初めてだったかもしれない


イベントが無事終了したら

夕凪で打ち上げすることも決めていた


だが…その打ち合げに

主役が顔を見せることは永遠にない


純平は…

イベントの準備中に倒れて…帰らぬ人となってしまった

 


その日

イベントの開始時刻が迫っていたが、トラブルが続いて思うように準備が進んでいなかった


僕は焦っていた

絶対このイベントは成功させたい

ただその一心でひたすら動いていた


純平も一緒だった

司会を任されていたから、流れの確認をしていたようだが、それが終わると他の人の手伝いに入ったりしていた


無事、イベント開催の見通しがたちそうになったころ


純平が

「晴人……ごめん

ちょっとトイレ行ってくるわ」と声をかけてきた


高瀬

「あぁ、じゃあ戻ったらこっち頼む」


僕は、純平の顔も見ずにそう返事をした



もし、あの時僕が顔を上げていたら…

その異変に気がついて

純平を休ませてあげられていたら…


今も一緒に新商品を作っていたかもしれないし…

「夕凪」でバカを言い合っていたかもしれない



トイレに行ってくるとしか言わなかった純平


かなりしんどかったはずだ

それを

僕にも何も言わずに…

一人でなんとかしようとしたんだろう


どうして言ってくれなかったんだ……

僕にくらい…言ってくれてもよかったじゃないか……


僕は

自分の情けなさを

純平にぶつけることしかできなかった


あの時の僕は

何をしていたんだろうと

今でもずっと思い続けている


本当に大切なものを

大切にできていなかったんだ



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