「立ち上がる理由」
「ルクス!」
ドクの声だった。
ルクスは瓦礫の中で顔を上げる。身体中が痛い。腕もまともに動かない。正直もう戦いたくなかった。
さっきから怖い。
ずっと怖い。
先輩達は死んだ。
自分も死にかけている。
こんなの無理だ。
ルクスはその場に座り込んだ。
するとゼルクロノスがゆっくり近付いてくる。重い足音が響くたびに地面が揺れた。
レグルス達も迎撃している。
だが押されていた。
雷が落ちる。
台風が暴れる。
隊員達が吹き飛ばされる。
ルクスはその光景を見ていた。
そして思った。
別に俺じゃなくてもいいじゃないかと。
レグルスは強い。
幹部も強い。
俺はただの新人だ。
なんで俺が戦うんだ。
そう考えた時だった。
「ルクス!」
またドクの声が聞こえた。
見るとドクは必死な顔をしていた。
今まで見たことがないくらい。
不安そうな顔だった。
その瞬間だった。
ルクスは気付く。
ドクは自分が死ぬと思っている。
だからあんな顔をしている。
その事実を理解した時、胸の奥が少し熱くなった。
ルクスは立ち上がる。
足は震えている。
それでも立つ。
勇気が出た訳じゃない。
覚悟が決まった訳でもない。
ただ。
ドクにそんな顔をさせたくなかった。
それだけだった。
ゼルクロノスはそんなルクスを見下ろしている。
興味深そうに。
まるで観察するように。
すると突然ゼルクロノスが消えた。
ルクスは目を見開く。
次の瞬間。
真横にいた。
速い。
反応できない。
殴られる。
そう思った。
だが。
その時。
身体中の回転が勝手に動いた。
ゼルクロノスの拳に触れた瞬間、回転が流れ込む。
拳の軌道が逸れる。
攻撃が外れた。
ゼルクロノスが初めて動きを止める。
ルクスも驚いていた。
今のは狙っていない。
勝手に身体が動いた。
レグルスもそれを見ていた。
「なるほどな」
小さく呟く。
回転は攻撃だけじゃない。
防御でもない。
流れそのものを変える。
そんな可能性を秘めていた。
そして初めて。
ゼルクロノスはルクスへ向かって一歩踏み出した。
先程までの観察ではない。
試しでもない。
明らかに。
敵として認識し始めていた。
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