「襲来」
ルクスがレグルスと話してから数日後だった。
ドクの無実を証明する。その目標は変わらない。だが今の自分では何もできないことも理解していた。だから訓練を続けていた。
その時だった。
突然デヴァイス中に警報が鳴り響く。
赤い警告灯が点滅し、職員達が走り出す。今まで見たことのないほど慌ただしい空気だった。
「緊急事態発生。地球外知的生命体を確認」
「全戦闘員は直ちに配置につけ」
ルクスも外へ飛び出した。
空を見上げる。
そして言葉を失った。
そこにいたのは生物とは思えない存在だった。
全身は銀色と黒色の結晶で覆われている。身体中から巨大な黒い棘が突き出し、頭部には王冠のような結晶が何本も伸びていた。
周囲には雷が走る。
空そのものが悲鳴を上げているようだった。
まるで宇宙が怪物になった姿。
誰も名前を知らなかった。
だからデヴァイスは仮名称を与える。
地球外生物No.45。
ゼルクロノス。
ゼルクロノスはゆっくりと施設を見下ろした。
次の瞬間だった。
空が割れたような雷鳴が響く。
巨大な雷がデヴァイス本部へ落下した。
轟音。
爆発。
建物の一部が吹き飛ぶ。
さらに暴風が発生する。
いや違う。
台風だった。
巨大な台風が突然生み出されたのだ。
車両が宙へ舞う。
建物の壁が剥がれる。
隊員達が吹き飛ばされる。
幹部達はすぐに異変へ気付いた。
「本部を狙っている」
「知能があるぞ」
「危険な対象を優先して排除している」
ただ暴れるだけの怪物ではない。
考えて行動している。
それが何より恐ろしかった。
レグルスは部隊を率いて前へ出る。
そしてルクスを見る。
「お前は見学だ」
ルクスは思わず聞き返す。
「は?」
「まだ新人だ。戦うな」
「でも!」
「命令だ」
レグルスはそれだけ言うと前線へ向かった。
ルクスは拳を握る。
納得できない。
だが命令違反はできない。
だから遠くから戦場を見るしかなかった。
先輩達が能力を使う。
炎。
氷。
重力。
様々な攻撃がゼルクロノスへ放たれる。
しかし。
全く通用しなかった。
ゼルクロノスが片腕を振る。
台風が牙を剥く。
先輩の一人が飲み込まれた。
悲鳴すら短かった。
骨が砕ける音。
肉が裂ける音。
血が宙へ散る。
一瞬だった。
ルクスの顔から血の気が引く。
さらに一人。
また一人。
先輩達が死んでいく。
紙切れみたいに。
虫みたいに。
バサバサと。
ルクスは震えた。
恐怖だった。
怒りだった。
分からない。
ただ一つだけ確かなことがあった。
このまま見ていられない。
ドクがいる。
先輩達がいる。
レグルスがいる。
守りたいものがある。
気付けば。
ルクスは走り出していた。
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