「罪」
ドクが生後数か月になった頃。
社会では大きな議論が起きていた。
新聞。
テレビ。
ネット。
どこでも同じ話題だった。
赤子による超重犯罪。
そんな見出しだった。
人々は怒った。
「赤ちゃんだぞ?」
「罪なんてあるわけない」
「可哀想だろ」
大多数はドクを擁護した。
当たり前だった。
ドクは何も知らない。
何もできない。
ただ生まれただけだ。
それなのに。
母親を死なせた原因になった。
だが。
裁判の結果は変わらなかった。
能力悪用による死亡事故。
超重犯罪認定。
そして。
国家特務厳重機関デヴァイスへの収容。
誰もが首を傾げた。
異常だった。
赤子を犯罪者扱いするなど。
本来ありえない。
だが。
人々は知らなかった。
裁判官。
検察。
関係者。
その多くがデヴァイスの幹部だったことを。
当時のデヴァイスは人員不足だった。
宇宙からの脅威は増える一方。
危険な能力者も足りない。
だから。
欲しかった。
強力な能力者が。
その結果。
ドクは収容されることになった。
理不尽だった。
だが誰も止められなかった。
そして年月が流れる。
ドクは成長した。
施設の中で。
監獄の中で。
犯罪者達に囲まれながら。
ある日。
幼いドクは職員へ尋ねた。
「どうして私はここにいるの?」
職員は少し黙った。
そして言う。
「お母さんを殺したからだ」
その一言だった。
ドクは何も言わなかった。
泣きもしなかった。
ただ。
その言葉だけを信じた。
自分が母を殺した。
自分が父を不幸にした。
自分が悪い。
それだけを。
ずっと信じ続けた。
裁判の裏側も。
デヴァイスの事情も。
何も知らない。
だからドクは誰かに過去を聞かれても。
いつも同じ言葉しか返さない。
「運が悪かっただけだよ」
そう笑う。
本当は違う。
運ではない。
理不尽だった。
だが。
ドクはまだその事実を知らなかった。
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