「夢の続き」
観察層は静かになっていた。
銃声も。
警報も。
怒号も。
もう聞こえない。
無限回転はまだ回り続けている。
終わることなく。
永遠に。
だが戦いは終わっていた。
レグルスはその場へ座り込む。
身体が重い。
意識も霞む。
無限回転を受け継いだ代償が少しずつ現れ始めていた。
頭の奥で回転が続いている。
まるで自分自身が渦へ飲み込まれているようだった。
ラモンが近付く。
「大丈夫か」
レグルスは苦笑した。
「たぶん」
全然大丈夫ではなかった。
だが不思議と心は軽かった。
世界は残った。
地球も残った。
仲間も残った。
それだけで十分だった。
少し離れた場所でゼルクロノスが立っている。
静かだった。
四万年の旅。
五十万回のやり直し。
ようやく終わった。
レグルスは立ち上がる。
そしてゼルクロノスの隣へ行く。
しばらく二人は何も話さない。
やがてレグルスが口を開く。
「ありがとう」
ゼルクロノスは少し驚いた顔をした。
そして笑う。
「礼を言われることじゃない」
「俺も守りたかっただけだ」
その言葉には嘘が無かった。
レグルスは空を見上げる。
静かな宇宙だった。
あの日ルカが見せた夢を思い出す。
回転する星。
無限回転。
あの時は意味を間違えた。
自分には無理だから誰かを頼れ。
そう言われたと思っていた。
だが違った。
ルカは最初から知っていたのかもしれない。
一人じゃないことを。
人は支え合えることを。
だから今。
ここにいる。
レグルス。
ラモン。
ゼルクロノス。
三人とも違う道を歩いてきた。
それでも最後は同じ場所へ辿り着いた。
風が吹く。
観察層の白い空を抜けていく。
レグルスは目を閉じた。
そして。
遠くで声が聞こえた気がした。
「頑張ったね」
ルカの声だった。
気のせいかもしれない。
本当に聞こえたのかもしれない。
それでも。
レグルスは笑った。
昔より少しだけ強く。
昔より少しだけ前を向いて。
宇宙にはまだ無数の星がある。
まだ見たことのない世界もある。
これから何が起きるか分からない。
それでも。
レグルスは歩き出した。
夢を守るために。
人を守るために。
そして。
自分自身の未来を生きるために。
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