「リセット」
三人が並ぶ。
その光景を見て観察層は動揺していた。
特にゼルクロノスの存在は想定外だった。
本来なら過去へ帰ったままのはず。
それなのに再び現れた。
しかも以前より遥かに強い。
「目標ゼルクロノスを危険度最高位へ変更」
「ラモンも同様」
「戦力を再編成します」
命令が飛び交う。
だが遅かった。
ゼルクロノスが腕を振る。
無数のブラックホールが発生する。
軍艦が潰れる。
兵器が砕ける。
都市が崩壊する。
ラモンは無限回転を放つ。
飛んできた攻撃を吸い込み。
そのまま何倍にもして返す。
観察層の軍隊は押され始めていた。
レグルスは前へ進む。
命を弾く。
世界を弾く。
兵士達は近付くことすらできない。
圧倒的だった。
誰も三人を止められない。
その時だった。
観察層の中央施設。
最奥の会議室。
処分派の代表が立ち上がる。
顔色は悪かった。
「負ける」
誰かが呟く。
誰も否定できない。
このまま戦えば。
本当に負ける。
観察層の人類が。
自分達が見下していた実験体に。
そこで一人が言った。
「使用許可を申請します」
部屋が静まり返る。
誰も言葉を発しない。
それは禁句だった。
絶対に口にしてはならない名前。
だが。
追い詰められていた。
「リセットボタンの使用を提案します」
空気が凍る。
反対派の男が立ち上がった。
「やめろ」
即座に言う。
「それだけは駄目だ」
だが処分派は聞かない。
「世界より我々が優先だ」
「観察層の存続を選ぶ」
反対派の男は机を叩いた。
「ふざけるな!」
怒号が響く。
しかし。
投票は始まった。
賛成。
賛成。
賛成。
反対。
賛成。
結果は決まった。
使用可決。
反対派の男は目を閉じる。
もう止められなかった。
その頃。
レグルス達は異変に気付いていない。
戦い続けていた。
ゼルクロノスが軍艦を潰す。
ラモンが敵軍を飲み込む。
レグルスが前線を突破する。
その瞬間だった。
世界が白く染まる。
全員が動きを止めた。
空も。
大地も。
宇宙も。
全てが白くなる。
「なんだ……?」
レグルスが呟く。
次の瞬間。
世界に亀裂が走った。
空が砕ける。
星が砕ける。
宇宙が砕ける。
存在そのものが壊れていく。
レグルスは絶句した。
ゼルクロノスも。
ラモンも。
初めて顔色を変える。
これは攻撃じゃない。
破壊ですらない。
世界そのものを初期化している。
そして観察層から声が響く。
「抵抗をやめろ」
「さもなくば全てをリセットする」
脅しだと思いたかった。
だが違った。
目の前で世界が壊れている。
現実だった。
レグルスは拳を握る。
何もできない。
止める方法が分からない。
守るべき世界が。
崩れていく。
そして。
ゼルクロノスはその光景を見つめていた。
長い沈黙。
やがて。
静かに笑う。
狂ったような笑いではない。
何かを思い出したような笑みだった。
「なるほど」
そう呟く。
そして。
自分の胸へ手を当てた。
レグルスが振り返る。
嫌な予感がした。
ゼルクロノスは空を見上げる。
「まだ終わってない」
次の瞬間。
ゼルクロノスは自らの心臓を貫いた。
レグルスの目が見開かれる。
ラモンも叫ぶ。
だが。
遅かった。
ゼルクロノスは崩れ落ちる。
その顔には恐怖は無かった。
ただ静かな決意だけがあった。
そして。
世界が暗転した。
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