「開戦」
無限回転を手に入れてから数日後。
レグルスは一人で宇宙を見上げていた。
夜空の向こう。
観察層。
上位存在達の世界。
そこには世界を消そうとしている者達がいる。
もう逃げない。
レグルスは静かに手を伸ばした。
能力を発動する。
宇宙と宇宙を繋げる。
世界と世界を繋げる。
空間が裂けた。
空が割れる。
巨大な亀裂が地球上空に出現した。
その向こうには別の空があった。
見たこともない世界。
観察層へ続く道だった。
警報が鳴り響く。
観察層の都市。
白い建物。
白い道路。
白い空。
そこに赤い警告灯が点滅する。
職員達が慌て始める。
「次元境界に異常発生!」
「侵入者です!」
「観測対象レグルス!」
誰かが叫ぶ。
しかし。
もう遅かった。
レグルスは歩き出した。
境界を超える。
観察層へ足を踏み入れる。
その瞬間だった。
数百人の武装した人間が現れる。
普通の人間だった。
だが武器だけは異常だった。
重力砲。
次元兵器。
対能力者装備。
観察層が積み上げてきた技術の結晶。
銃口が一斉に向けられる。
レグルスへ。
「停止しろ」
「これ以上の侵入は認めない」
レグルスは答えない。
ただ歩く。
発砲。
光線が放たれる。
だが。
レグルスは右手を上げた。
弾く。
その一言だった。
放たれた攻撃が反転する。
数百発の砲撃が発射地点へ戻る。
爆発。
建物が吹き飛ぶ。
兵士達が吹き飛ばされる。
レグルスは止まらない。
さらに奥へ進む。
次々に敵が現れる。
千人。
一万人。
十万人。
数が増えていく。
レグルスは戦う。
重力を弾く。
命を弾く。
空間を弾く。
圧倒的だった。
誰も近付けない。
観察層の軍隊が崩壊していく。
だが。
敵は減らない。
いくら倒しても現れる。
次から次へ。
終わりが見えない。
レグルスは歯を食いしばる。
上位存在は弱い。
一人一人なら。
だが数が違う。
文明全体を相手にしている。
その時。
空が黒く染まった。
巨大な軍艦。
数万。
数十万。
観察層の主力艦隊だった。
ミサイルが発射される。
光線砲が撃たれる。
大地が吹き飛ぶ。
レグルスは防ぎ続ける。
弾き続ける。
それでも。
限界は近付いていた。
疲労が溜まる。
身体が重い。
相手は無限に近い。
レグルスは理解する。
一人では無理だ。
その時だった。
背後で空間が歪む。
聞き覚えのある声が響いた。
「随分と無茶してるな」
レグルスは振り返る。
そこに立っていたのは。
赤と金色の巨人。
白い骨を纏った異形。
ゼルクロノスだった。
レグルスの目が見開かれる。
ゼルクロノスは笑う。
かつて敵だった男。
だが今は違う。
「俺を過去へ送った恩」
「まだ返してないよな」
そう言って。
ゼルクロノスは前へ出た。
無数のブラックホールが出現する。
観察層の艦隊が吸い込まれる。
超重力が都市を潰す。
戦場が一瞬で変わった。
そしてさらに。
別の空間が開く。
そこから現れた一人の男。
レグルスは息を呑む。
ラモンだった。
レグルスの知る姿のまま。
失われた未来ではなく。
過去から来たラモン。
ラモンは笑う。
「師匠を助けてくれた恩は返さないとな」
その背後で。
無限回転が渦を巻いていた。
三人が並ぶ。
レグルス。
ゼルクロノス。
ラモン。
上位存在との戦争は。
ここから本当の意味で始まった。
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