「夢」
レグルスは眠っていた。
何日眠ったのか。
何週間だったのか。
分からない。
起きる気も無かった。
起きたところで何になる。
戦っても勝てない。
世界は実験だった。
上位存在は人類を消そうとしている。
自分には何もできない。
そう思っていた。
だから眠った。
逃げるように。
現実から目を背けるように。
そして夢を見る。
暗い宇宙だった。
静かな宇宙だった。
その中に一人だけ立っている人がいた。
ルカだった。
昔と同じ姿。
病院で笑っていた頃のまま。
レグルスは何も言わない。
言葉が出なかった。
ルカも何も言わない。
ただレグルスを見る。
優しく。
少し心配そうに。
そしてゆっくりと腕を上げた。
宇宙を指差す。
その先には一つの星があった。
レグルスは見つめる。
その星は回転していた。
ゆっくり。
だが確実に。
終わることなく。
永遠に。
無限回転だった。
レグルスは目を見開く。
ルカはそれ以上何もしない。
ただ微笑んでいた。
そして夢が崩れていく。
ルカの姿が遠ざかる。
星も消えていく。
レグルスは手を伸ばした。
だが届かない。
そして目が覚めた。
廃墟だった。
崩れた建物。
割れた道路。
人のいない街。
レグルスはぼんやりと空を見る。
胸が苦しかった。
夢を思い出す。
ルカが指差した星。
無限回転。
レグルスは顔を伏せる。
「そういうことかよ……」
声は震えていた。
ルカは言いたかったのだ。
自分では無理だから。
ルクスを頼れと。
無限回転を持つルクスを頼れと。
自分は弱い。
自分にはできない。
だから誰かに任せろと。
そう言われた気がした。
レグルスは拳を握る。
悔しかった。
情けなかった。
何もできない自分が嫌だった。
その時だった。
突然。
頬に衝撃が走る。
レグルスの身体が吹き飛ぶ。
何が起きたのか分からない。
気付けば地面に倒れていた。
目の前には男が立っている。
生き残った人類だった。
男は怒っていた。
レグルスの胸ぐらを掴む。
「何寝てるんだ!」
怒鳴り声が響く。
周囲を見ると。
他にも人がいた。
大勢いた。
生き残りだった。
レグルスは呆然とする。
男はさらに怒鳴る。
「お前しかいないだろ!」
「お前がやらなかったら誰がやる!」
別の人も叫ぶ。
「立てよ!」
「レグルス!」
「諦めるな!」
レグルスは理解できなかった。
なぜ怒っているのか。
なぜ期待するのか。
自分は失敗した。
何もできなかった。
それなのに。
人々は怒鳴り続ける。
「できるだろ!」
「お前なら!」
「だから立て!」
レグルスは黙っていた。
最初は責任を押し付けられているだけだと思った。
だが。
違った。
彼らの目は本気だった。
本当に信じていた。
自分を。
レグルスを。
その瞬間。
胸の奥が熱くなる。
消えていた火が戻る。
ルカの夢。
市民達の言葉。
全てが頭の中で繋がった。
そしてようやく気付く。
ルカはルクスを頼れなんて言っていなかった。
そうじゃない。
ルカは。
「一人で抱え込むな」
そう言いたかったのだ。
他人を頼れ。
仲間を頼れ。
助けてもらえ。
それだけだった。
レグルスは空を見上げる。
少しだけ笑う。
何年ぶりか分からない。
自然な笑顔だった。
そして静かに立ち上がる。
まだ終わっていない。
今度こそ。
逃げないと決めた。
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