「意識の共有」
無数の光の線が宇宙へ広がる。
レグルスは両手を前へ突き出した。
この宇宙と別宇宙を繋ぐ。
本来なら不可能なことだった。しかしレグルスの能力は繋げること。空間も、重力も、エネルギーも、世界さえも繋げることができる。
ゼルクロノスの表情が僅かに変わる。
次の瞬間、宇宙が揺れた。
見えない何かが引っ張られる。
ゼルクロノスの周囲に亀裂が走る。まるでガラスが割れるように空間が砕けていく。そしてその向こう側から巨大な影が現れた。
それが本体だった。
今まで戦っていたゼルクロノスは、次元を超えた先にある存在の一部に過ぎなかった。
「引きずり出したぞ」
レグルスは荒い息を吐く。
全身が悲鳴を上げていた。
それでも止まらない。
ここで終わらせる。
そのために戦ってきた。
ゼルクロノスは静かに笑う。
「よくここまで来たな」
「まだ終わってない」
レグルスは叫ぶ。
そして能力を発動した。
今度は空間ではない。
意識だった。
レグルスの意識。
ゼルクロノスの意識。
二つを無理やり繋げる。
瞬間。
レグルスの視界が崩壊した。
知らない星が見える。
知らない空が見える。
知らない人生が見える。
何万年という時間が一気に流れ込んできた。
レグルスは膝をつく。
脳が焼けるように痛い。
だが耐える。
ゼルクロノスを知るために。
説得するために。
レグルスは記憶の中へ飛び込んだ。
そこには荒廃した宇宙があった。
誰もいない。
何もない。
ただ一人。
ゼルクロノスだけが歩いていた。
何千年も。
何万年も。
孤独だった。
仲間もいない。
故郷もない。
救いもない。
ただ彷徨い続ける。
レグルスは思わず息を呑む。
四万年。
言葉で言うのは簡単だ。
だが実際に見せられると違う。
永遠にも等しい時間だった。
レグルスはゼルクロノスへ手を伸ばす。
「もうやめよう」
「戻ろう」
「まだやり直せる」
ゼルクロノスは振り返る。
その目は冷たかった。
「分かったようなことを言うな」
静かな声だった。
だが怒りが滲んでいた。
「お前は四万年一人で歩いたことがあるのか」
「お前は全てを失ったことがあるのか」
レグルスは言葉を失う。
ゼルクロノスは続ける。
「そんな若造の言葉で俺は止まらない」
記憶の世界が震える。
説得は失敗した。
だが。
レグルスにはまだ一つだけ手段が残っていた。
最後の技。
ゼルクロノスと過去の世界を繋ぐ。
失われた時間へ返す。
本来いるべき場所へ帰す。
レグルスは能力を発動する。
無数の線が広がる。
過去。
現在。
未来。
全てが一本の道へ変わっていく。
その瞬間だった。
レグルスの頭へ別の記憶が流れ込んできた。
今まで見たことのない記憶。
ゼルクロノス自身ですら忘れていた記憶。
空白の時間。
脳が拒絶していた真実。
そしてレグルスは見てしまった。
本当の敵を。
ゼルクロノスではない。
もっと上にいる存在を。
その事実を。
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