「前の無限回転」
怪物の核がラモンを認識した。
その瞬間だった。
巨大な眼の奥。
黒い中心部が脈打つ。
まるで危険を察知したように。
初めてだった。
怪物が反応を見せたのは。
レジェンドも気付く。
七つの眼が見開かれる。
「そうか」
小さく呟く。
何度も死に進み。
何度も世界の終わりを見た。
その果てに辿り着いた答え。
やはりラモンだけだった。
ラモンは空中を進む。
落下しているはずなのに。
前へ進んでいる。
身体の奥で回転が加速する。
止まらない。
終わらない。
どこまでも続いていく。
それは単なる力ではなかった。
意思だった。
諦めない心だった。
積み重ねてきた全てだった。
怪物の核が黒く輝く。
次の瞬間。
無数の黒い光が放たれる。
今までの比ではない。
空が埋まる。
大地が埋まる。
世界そのものが攻撃へ変わったようだった。
ラモンへ向かって降り注ぐ。
回避は不可能。
防御も不可能。
レジェンドは動こうとする。
だが間に合わない。
その時だった。
ラモンの周囲で空間が歪む。
小さな渦。
小さな螺旋。
最初は僅かだった。
だが次第に大きくなる。
黒い光が触れる。
そして。
逸れた。
弾かれたのではない。
破壊されたのでもない。
流された。
回転によって。
レジェンドが目を見開く。
ラモン自身も驚いていた。
理解はしていない。
だが身体が知っていた。
進むための力を。
止まらないための力を。
無限回転。
それは破壊の力ではない。
進み続ける力だった。
黒い光が次々と襲う。
ラモンは止まらない。
回転は強くなる。
大きくなる。
世界を巻き込み始める。
風が渦を描く。
雲が回転する。
空間すら捻じれていく。
怪物の核がさらに脈打つ。
初めて焦っているようだった。
危険だと理解したのだ。
ラモンの存在を。
巨大な眼が開く。
今までで最大の黒い光。
王都全体を消し飛ばせるほどの一撃。
それが放たれる。
世界が暗く染まる。
終わりの光だった。
だが。
ラモンは止まらない。
拳を握る。
ただ前を見る。
師匠がいた。
守りたい人達がいた。
未来があった。
だから進む。
無限回転がさらに加速する。
光と衝突する。
轟音。
空が砕ける。
衝撃で海が揺れる。
山脈が崩れる。
それでも。
ラモンは進む。
少しずつ。
確実に。
黒い光を押し返していく。
レジェンドは息を呑む。
王都の人々も空を見上げる。
誰も言葉を失っていた。
ラモンは進む。
一歩。
また一歩。
そして。
ついに怪物の目前へ到達する。
巨大な眼。
その奥にある核。
回転していない唯一の場所。
ラモンは拳を引く。
身体中の力を集める。
無限回転が拳へ収束する。
空間が悲鳴を上げる。
世界が震える。
怪物が初めて後退した。
恐怖したのだ。
ラモンの拳を。
その瞬間。
レジェンドは確信した。
勝てる。
初めてそう思えた。
ラモンは叫ぶ。
今まで溜め込んできた全てをぶつけるように。
そして。
無限回転を纏った拳が。
怪物の核へ向かって放たれた。
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