「放たれた一撃」
怪物の黒い光が放たれた。
空が裂ける。
大地が崩れる。
王都の城壁が蒸発する。
たった一撃で世界が壊れていく。
レジェンドは前へ出た。
六本の腕を交差させる。
「ドミニオンオーバーヘブン」
天地が揺れる。
無数の山脈が持ち上がる。
大地そのものが盾となって怪物の攻撃を受け止める。
だが長くは持たない。
黒い光は全てを削り取っていく。
山も。
岩も。
空間すらも。
存在を許さないかのように。
レジェンドは理解していた。
この攻撃は防げない。
何度も死に進んだから分かる。
何度試しても結果は同じだった。
だから目的は一つ。
時間を稼ぐこと。
ラモンへ繋ぐこと。
「ラモン!!」
レジェンドの声が響く。
「中心だ!!」
ラモンの瞳が開かれる。
やはり。
師匠も気付いていた。
あの一点。
巨大な眼の奥。
世界の流れから外れた場所。
唯一回転していない場所。
そこだけが異質だった。
黒い光がレジェンドへ迫る。
黄金の装甲が砕ける。
腕が一本吹き飛ぶ。
それでもレジェンドは退かない。
ラモンは拳を握る。
心臓が激しく脈打つ。
怖かった。
失敗したら終わる。
自分より強い師匠ですら勝てない相手だ。
だが。
レジェンドは何度も死んだ。
何度も世界の終わりを見た。
その果てに自分へ託した。
なら。
応えなければならない。
ラモンは前へ出る。
一歩。
二歩。
三歩。
怪物へ向かって走る。
巨大な眼がラモンを見る。
世界が重くなる。
膝が軋む。
それでも止まらない。
レジェンドが叫ぶ。
「進め!!」
次の瞬間。
黒い光の一部がラモンへ向きを変える。
レジェンドは咄嗟に飛び込む。
残った腕で受け止める。
轟音。
さらに二本の腕が吹き飛ぶ。
それでも笑った。
「行け」
ラモンは歯を食いしばる。
走る。
全力で。
怪物との距離が縮まる。
だが遠い。
圧倒的に遠い。
その時だった。
身体の奥で。
無限回転が強くなる。
今までで最も。
激しく。
大きく。
世界そのものと共鳴するように。
ラモンは目を見開く。
景色が変わる。
今まで一本だった線が増えていく。
無数の流れが見える。
空の流れ。
大地の流れ。
命の流れ。
そして。
怪物の中心へ向かう流れ。
全てが一点へ集まっていた。
ラモンは理解する。
あれが核だ。
怪物を成立させている中心。
回転していない場所。
世界に存在してはいけない異物。
そこを壊せば終わる。
ラモンは跳ぶ。
翼はない。
空も飛べない。
それでも跳んだ。
全てを賭けて。
怪物の巨大な眼が開く。
今までで最大の黒い光が集まり始める。
王都の人々が絶望する。
レジェンドも動こうとする。
だが間に合わない。
誰も届かない。
ただ一人を除いて。
ラモンだけが前へ進む。
身体の奥で回転が加速する。
まだ名前はない。
まだ完成もしていない。
だが確かに存在していた。
終わらない回転。
無限回転。
ラモンは拳を握る。
怪物の中心を見据える。
あと少し。
あと少しで届く。
そして。
怪物の核が。
初めてラモンを認識した。
面白ければブックマーク、評価お願いします




