表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/168

「核の中の怪物」


時の核が砕け散った。


空へ無数の破片が舞い上がる。


その光景は美しかった。


だが誰一人として見惚れる余裕はなかった。


ラモンは拳を握ったまま前を見据える。


終わっていない。


そう直感していた。


ジークテンポラーもまた崩れた時の核を見つめている。


その表情は絶望に近かった。


四百年間。


絶対だと信じてきた力。


それが今。


目の前で砕け散った。


そして。


砕けた核の中心から黒い液体のようなものが溢れ始める。


最初は小さかった。


だがすぐに増殖する。


まるで生き物だった。


黒い液体は空中へ浮かび上がる。


集まる。


膨れ上がる。


巨大化する。


王都の人々も異変に気付いていた。


誰もが空を見上げる。


そして恐怖した。


黒い月だった。


山より大きい。


城より大きい。


生物とも機械ともつかない異形の塊。


その中心には巨大な眼が一つだけ存在していた。


ゆっくりと開く。


瞬間。


世界が震えた。


山脈が崩れる。


空が揺れる。


海の彼方では巨大な津波が発生していた。


存在するだけで災害だった。


ラモンは息を呑む。


ジークテンポラーですら驚いていた。


「何だ……」


その声は震えていた。


ラモンは聞き逃さなかった。


ジークテンポラーも知らない。


つまりこれは。


時の核の中に元からいた何かだ。


巨大な眼がゆっくり動く。


見ている。


世界を。


命を。


全てを。


その視線だけで空気が重くなる。


生き物としての格が違う。


レジェンドも表情を変えていた。


七つの眼が見開かれている。


ラモンは初めて見る。


師匠がここまで警戒する姿を。


「まさか……」


レジェンドが呟く。


その声には驚愕が混じっていた。


「残っていたのか」


ラモンは振り返る。


「知ってるんですか」


レジェンドはすぐには答えなかった。


巨大な眼を見つめ続ける。


やがて口を開く。


「昔話だと思っていた」


風が吹く。


黄金の翼が揺れる。


「世界が生まれる前」


「時そのものを喰らう怪物がいたと言われている」


ラモンの表情が変わる。


レジェンドは続けた。


「神話の存在だ」


「だがもし本当なら」


そこで言葉を切った。


続きを言う必要がなかった。


誰もが理解してしまったからだ。


巨大な眼が開き切る。


その瞬間。


世界中から音が消えた。


鳥の声。


風の音。


木々の揺れる音。


全て。


消えた。


そして。


王都の外壁が崩れ落ちる。


何の前触れもなく。


何の攻撃もなく。


ただ時間だけが消されたかのように。


人々が悲鳴を上げる。


兵士達が逃げ出す。


レジェンドの顔が険しくなる。


「まずい」


ジークテンポラーは後退していた。


恐怖していた。


ラモンは気付く。


あの怪物は。


ジークテンポラーすら恐れている。


その時だった。


巨大な眼がジークテンポラーを見る。


本当にそれだけだった。


何もしていない。


何も放っていない。


ただ見ただけ。


なのに。


ジークテンポラーの左腕が消えた。


跡形もなく。


血も出ない。


肉も骨も残らない。


最初から存在しなかったように。


完全に消滅した。


ジークテンポラーが悲鳴を上げる。


ラモンの背筋に寒気が走る。


今のは攻撃ですらない。


視線だった。


ただ見られただけだった。


巨大な眼が再び動く。


今度は王都を見た。


レジェンドが飛び出す。


空気が爆発する。


八本の腕が広がる。


黄金の翼が羽ばたく。


神話の英雄が本気で動いた。


ラモンは初めて見る。


師匠の全力を。


「ラモン!!」


レジェンドが叫ぶ。


「今は倒すことを考えるな!!」


「生き残れ!!」


次の瞬間。


巨大な眼から黒い光が放たれた。


世界が割れた。


空が裂ける。


山脈が蒸発する。


そして。


レジェンドがその前へ立ちはだかった。


八本の腕を交差させる。


黄金の装甲が輝く。


神話最強の英雄。


その全力防御。


だが。


ラモンの顔から血の気が引く。


黒い光は。


止まっていなかった。


レジェンドの装甲を。


少しずつ削り始めていた。

面白ければブックマーク 、評価お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ