「星を滅ぼす力」
空が黒く染まっていた。
山脈は崩れ続けている。
地面には無数の亀裂が走り、遥か彼方まで続いていた。
王都の人々も異変に気付いていた。
戦場から離れているはずなのに空気が重い。
呼吸が苦しい。
まるで世界そのものが悲鳴を上げているようだった。
ラモンは黒い光を見上げる。
巨大時計の中心。
そこに集まるエネルギーは今までとは次元が違った。
本能が告げている。
あれは危険だと。
受ければ終わる。
そんなレベルではない。
星そのものが消える。
そう理解できてしまった。
「ようやく思い出した」
ジークテンポラーが呟く。
その声には怒りも憎しみもなかった。
ただ虚しさだけがあった。
「昔もこうだった」
巨大時計が回る。
黒い光が膨れ上がる。
「守ろうとする者がいた」
「立ち向かう者もいた」
「だが最後には全て消えた」
ラモンは黙って聞いていた。
ジークテンポラーは笑う。
だがその笑みはどこか壊れていた。
「時間は残酷だ」
「夢も希望も愛も」
「最後には消える」
「だから私は時間を支配することにした」
黒い光がさらに大きくなる。
周囲の山々が崩壊する。
岩石が砂になり。
砂が塵になり。
塵が消滅していく。
時間そのものが消されているのだ。
ラモンは拳を握る。
その言葉は少しだけ理解できた。
確かに消える。
命も。
夢も。
幸せな時間も。
全部いつか終わる。
だが。
「だから何だ」
ジークテンポラーの目が細くなる。
ラモンは前へ出た。
傷だらけの身体で。
血を流しながら。
それでも歩く。
「消えるから意味があるんだろ」
「終わるから大事なんだろ」
黒い光が唸る。
ジークテンポラーは黙っていた。
ラモンは続ける。
「俺は怖い」
「死ぬのも怖い」
「負けるのも怖い」
「でも」
一歩踏み出す。
「だから守りたいんだ」
その瞬間だった。
身体の奥で回転が強くなる。
今までで一番。
まるで心そのものが回っているようだった。
ジークテンポラーは顔をしかめる。
気に入らない。
その言葉が。
その目が。
昔の誰かを思い出させる。
だから終わらせる。
今度こそ。
完全に。
巨大時計の針が動いた。
黒い光が放たれる。
世界が消える。
誰もがそう思った。
レジェンドですら翼を広げる。
もしもの時は介入するつもりだった。
だが。
その時だった。
ラモンが走る。
真っ直ぐ。
黒い光へ向かって。
自殺行為だった。
誰が見てもそうだった。
だがラモンは止まらない。
前へ。
前へ。
ただ前へ。
その身体から微かな黄金の粒子が溢れ始める。
黒い光が迫る。
あと数秒。
ぶつかる。
その瞬間。
ラモンは初めて見た。
身体の奥にある回転を。
心のさらに奥。
魂の中心。
そこにあった。
小さな光。
だが無限に回り続ける光。
そしてラモンは理解する。
なぜ自分が時間停止の中で動けたのか。
なぜ老化から戻れたのか。
なぜ攻撃が逸れたのか。
その答えに。
ようやく辿り着いた。
そして。
黒い光とラモンが激突した。
次の瞬間。
世界から音が消えた。
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