表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/151

「隔絶世界」

暗闇だった。


どこまでも続く暗闇。


だが完全な闇ではない。


遠くには光がある。


近付こうとすると消える。


振り返ると別の場所で輝いている。


まるで世界そのものが生きているようだった。


レグルスは立ち尽くしていた。


ルカが消えた。


その光景が頭から離れない。


助けられなかった。


守れなかった。


まただ。


また何もできなかった。


拳を握る。


爪が掌へ食い込む。


痛みが走る。


だがその痛みすら今はどうでもよかった。


胸の奥に残っているのは空洞だった。


大切なものが消えた穴。


それだけが残っていた。


「ルカ……」


呼んでみる。


返事はない。


当然だった。


それでも呼びたかった。


もう二度と聞こえない名前かもしれないから。


レグルスは歩き始めた。


ここがどこなのか分からない。


出口があるのかも分からない。


だが立ち止まる気にはなれなかった。


何もしなければルカの最後まで無意味になる気がした。


しばらく歩く。


何時間経ったのか分からない。


時間の感覚がおかしい。


空もない。


太陽もない。


時計もない。


なのに疲れない。


腹も減らない。


喉も渇かない。


生きている感覚だけがある。


そして歩き続けた先で異変が起きた。


目の前の空間が割れた。


ガラスのようだった。


パキッ。


小さな音。


だがその亀裂はどんどん広がる。


レグルスは思わず身構える。


次の瞬間。


亀裂の向こうから巨大な岩石が飛び出した。


「なっ!?」


反射的に飛び退く。


岩石はそのまま後方へ飛んでいく。


そして消えた。


存在そのものが消滅した。


レグルスは目を見開く。


今のは何だ。


幻覚ではない。


確かに存在していた。


すると今度は別の場所が割れた。


海が見えた。


次の瞬間には砂漠。


さらに次は雪山。


知らない景色が次々と現れる。


そして消える。


世界の断片。


そんな言葉が頭をよぎった。


レグルスはゆっくり近付く。


割れ目の向こうに広がる景色。


どれも本物に見えた。


風が吹いている。


波が動いている。


雪が降っている。


なのに触れようとすると消える。


意味が分からない。


ここは何なんだ。


レグルスがそう考えた時だった。


突然。


足元が揺れた。


空間全体が震える。


まるで巨大な地震。


いや。


もっと根本的な何か。


世界そのものが軋んでいるようだった。


そして。


頭の中へ映像が流れ込んできた。


知らない景色。


知らない空。


巨大な都市。


空飛ぶ建造物。


輝く海。


見たこともない文明。


だが次の瞬間。


全てが崩壊した。


黒い光。


絶叫。


炎。


破壊。


空が砕ける。


大地が裂ける。


文明が消える。


そして最後に見えた。


黒い影。


巨大だった。


惑星ほどではない。


だが山より遥かに大きい。


その存在が空を覆っていた。


レグルスは息を呑む。


見たこともない。


だが本能が告げる。


危険だと。


絶対に近付いてはいけないと。


映像はそこで終わった。


レグルスは膝をつく。


頭痛がする。


今のは何だった。


夢か。


幻覚か。


違う。


あまりにも鮮明だった。


そして何より。


恐怖が残っている。


本物を見た時にしか残らない恐怖だった。


「何なんだよ……」


誰へ向けるでもなく呟く。


返事はない。


静寂だけが広がる。


レグルスは立ち上がる。


その時だった。


遠くに何かが見えた。


塔だった。


黒い塔。


今まで存在しなかったはずなのに。


いつの間にか立っている。


あまりにも巨大だった。


天井のない空間なのに果てが見えない。


どこまでも続いている。


レグルスはしばらく見つめる。


嫌な予感しかしない。


だが。


ここで初めて見つけた目印だった。


他に行く場所もない。


レグルスは歩き始める。


黒い塔を目指して。


一歩。


また一歩。


進む。


すると不思議なことに塔が近付いてくる。


いや。


自分が近付いているのではない。


塔の方が寄ってきている。


空間そのものが捻じ曲がっている。


レグルスは思わず立ち止まった。


その瞬間。


背後から声が聞こえた気がした。


振り返る。


誰もいない。


気のせいだったのかもしれない。


だが確かに聞こえた。


笑い声のようなものが。


冷たい。


不気味な。


人間ではない何かの笑い声。


レグルスの背筋を汗が伝う。


ここは危険だ。


ようやく理解する。


自分は助かったわけではない。


別の場所へ連れて来られただけだ。


そしてその場所には何かがいる。


まだ姿を見せていないだけで。


確実に。


レグルスは再び塔を見る。


巨大な黒い塔。


その頂上付近。


ほんの一瞬だけ。


誰かの影が立っているように見えた。


だが瞬きをした瞬間には消えていた。


見間違いかもしれない。


だが。


その存在だけは確信できた。


この世界には自分以外もいる。


そしてその何者かは。


ずっとこちらを見ている。


レグルスは無意識にインフィニティレガリアへ触れた。


銀色の腕輪は静かだった。


何も教えてくれない。


だから自分で進むしかない。


ルカを失った今。


前へ進む理由は一つしかなかった。


ゼルクロノスを倒す。


そのために。


レグルスは黒い塔へ向かって歩き続ける。


気付かないまま。


その空間での一年が。


現実世界では一瞬にも満たないことを。

面白ければブックマーク、評価お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ