「懐かしい人」
マリアは木の陰から静かに様子を見ていた。
少年は十歳くらい。
黒髪の綺麗な少年だった。
その隣には年上の少女。
そしてもう一人、十五歳くらいの少年が立っている。
「三人組……。」
マリアは呟いた。
その時だった。
別の参加者が三人へ向かって飛び出した。
「死ねぇぇぇ!!」
マリアは反射的に右手を向けた。
白い光の球が生まれる。
「当たれ!」
光の球は一直線に飛んだ。
しかし。
カキィン!!
少年は光の球を弾き返した。
「えっ!?」
マリアは目を見開く。
光の球を弾いた。
そんな能力は聞いたことがない。
さらに少年は静かに指を構えた。
「……。」
パチン。
ただのデコピンだった。
それだけのはずだった。
次の瞬間。
敵が胸を押さえて倒れた。
「ぐあああああああ!!」
まるで剣で刺されたような叫び声だった。
マリアは思わず息を呑む。
「何……あれ。」
恐ろしい。
でも不思議と目が離せなかった。
少年は敵へ近付く。
「お前。」
「仲間になれ。」
敵は震えていた。
「は……?」
「何言ってる。」
「敵同士だぞ。」
「だからだ。」
少年は真っ直ぐ答える。
「俺は皆と和解したい。」
マリアは耳を疑った。
和解。
この殺し合いで。
そんなことを言う人がいるなんて思わなかった。
敵はしばらく黙っていたが、小さく息を吐いた。
「……分かった。」
その瞬間だった。
木の枝を踏んでしまう。
パキッ。
三人が一斉に振り向いた。
「誰だ!」
少女が構える。
マリアは観念して姿を現した。
「私は敵。」
「好きにすればいいわ。」
少年は静かに近付いてくる。
怖かった。
でも少年は攻撃しなかった。
「名前は?」
「……。」
「教えてくれ。」
しばらく沈黙が続いた。
やがてマリアは小さく口を開く。
「マリア。」
「そうか。」
少年は笑った。
「俺はサナージュ。」
「こっちはささ。」
「こっちがロイス。」
その名前を聞いた瞬間だった。
ロイス。
胸がざわつく。
頭が痛い。
誰かが笑っている。
優しく頭を撫でてくれる。
一緒に食卓を囲んでいる。
そんな景色が一瞬だけ浮かんでは消えた。
「……ロイス。」
思わずその名前を繰り返す。
ロイスは首を傾げた。
「どうした?」
「……何でもない。」
思い出せない。
でも懐かしかった。
どうしてなのか分からない。
サナージュは真っ直ぐマリアを見つめた。
「マリア。」
「俺達と一緒に来ないか。」
マリアは少しだけ迷った。
それでも答えは決まっていた。
「……好きにしなさい。」
その日からマリアはサナージュ、ささ、そしてロイスと共に歩き始めた。
まだ誰も知らない。
ロイスこそ、マリアがずっと探していたロイスお兄ちゃんだったことを。
そしてロイス自身も、その記憶を失っていることを。
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