「失われた記憶」
暗闇だった。
何も見えない。
何も聞こえない。
ただ身体だけが熱かった。
「ああああああっ!!」
叫び声と共にマリアは目を覚ました。
そこは見知らぬ森だった。
辺りには木々が並び、焼け焦げた地面が広がっている。
「……ここ、どこ?」
立ち上がろうとする。
頭が痛い。
胸も苦しい。
「私は……。」
思い出そうとした。
家。
お父様。
お母様。
そして――。
「……誰?」
頭の中に誰かの笑顔が浮かぶ。
優しく頭を撫でてくれる男の子。
でも名前が思い出せない。
「誰なの……。」
その時だった。
近くで物音がした。
ガサッ。
マリアは反射的に振り向く。
そこには見知らぬ男が立っていた。
「見つけた。」
男は笑う。
「新人か。」
「新人?」
「何も知らねぇのか。」
男は腰の剣を抜いた。
「隕石に触った時点でお前はプレイヤーだ。」
「プレイヤー?」
「バトルロワイヤルのな。」
意味が分からなかった。
「何を言って……。」
男は最後まで聞かなかった。
剣を振り上げる。
「死ね。」
その瞬間。
ドクン。
マリアの身体から眩しい光が溢れた。
右手の前に白い球体が浮かぶ。
「え?」
球体は勝手に飛んだ。
ドォォン!!
男の身体へ直撃する。
「がぁっ!?」
男は木へ吹き飛び、そのまま動かなくなった。
マリアは震えていた。
「私が……。」
「やったの?」
頭の中へ大量の情報が流れ込む。
能力。
隕石。
参加者。
殺し合い。
生き残る者は一人。
「そんな……。」
理解したくなかった。
その時、小さな金属音が鳴る。
チャリン。
男の懐から一枚の黒い板が落ちた。
マリアは恐る恐る拾う。
そこには文字が浮かび上がっていた。
【能力 光球】
【光の球を生成し放つ能力】
【プレイヤー確認完了】
マリアは息を呑む。
「能力……。」
「これが私の……。」
涙がこぼれた。
何も思い出せない。
家族も。
自分の家も。
さっきまで大切だった誰かの名前も。
全部消えていた。
残っているのは、自分がマリアという名前だということだけ。
「私は……。」
「どうすればいいの。」
誰も答えてくれない。
森には風だけが吹いていた。
それから何日もマリアは森を彷徨った。
生きるために戦い、生きるために逃げた。
光の球を使うたびに少しずつ能力にも慣れていった。
そしてある日。
森の奥で一人の少年を見つける。
その少年の周りには二人の男女。
さらに倒れている敵が一人。
「新人……?」
マリアは木の陰から静かに様子を見始めた。
それがサナージュ達との最初の出会いだった。
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