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「マリア・ルス」

私の名前はマリア・ルス。

いわゆる、お嬢様ってやつだ。

家はお金持ちで、毎日何不自由なく暮らしている。

でも私はあまり興味がない。

ドレスとか宝石とか豪華な料理とか、そういうものより楽しみな日がある。

今日はレグス家との会談の日だ。

ルス家とレグス家は二千年以上も前から交流が続いているらしい。

なんでも、私の苗字の「ルス」は二千年以上前、この国を救った英雄ルクスから受け継がれた名前なんだとか。

詳しくは知らない。

昔話には興味がないから。

伝説ではルクスという人はゼルクロノスという悪いやつを無限の回転になって倒したらしい。

よく分からないけど、昔の人はすごかったんだろう。

一方のレグス家も負けていない。

レグルスという英雄が何度も世界を救い、いろんな宇宙を直し、ゼルクロノスと戦い、最後には和解までしたらしい。

それも全部昔話。

私には関係ない。

私にとって大事なのは一つだけ。

ロイスお兄ちゃんに会えること。

血は繋がっていない。

それでも昔から一緒に遊んできた。

優しくて、料理も作れて、困ったらすぐ助けてくれる。

私が転んだ時も、お腹が空いた時も、泣いた時も、いつも隣にいてくれた。

だから私はロイスお兄ちゃんが好き。

会談なんてどうでもいい。

ロイスお兄ちゃんに会えるならそれだけで十分だった。

「マリア。」

「はい、お母様。」

「今日は粗相をしないように。」

「分かってるよ。」

私は少しだけ笑った。

屋敷の大広間では既にレグス家のみんなが集まっていた。

その中に見慣れた顔を見つける。

「ロイスお兄ちゃん!」

私は思わず走った。

「マリア。」

ロイスお兄ちゃんはいつものように優しく笑う。

「また大きくなったね。」

「えへへ。」

「ちゃんとご飯食べてる?」

「もちろん。」

「偉い。」

そう言って頭を撫でてくれる。

その手が好きだった。

安心するから。

「今日は何食べる?」

「ロイスお兄ちゃんと同じ!」

「じゃあ一緒に食べよう。」

「うん!」

大人達は難しい話をしていた。

昔のこと。

家同士のこと。

世界のこと。

私は全然聞いていなかった。

ロイスお兄ちゃんと料理を食べながら笑っていた。

そんな平和な時間だった。

突然だった。

ゴゴゴゴゴゴゴ……。

屋敷全体が大きく揺れた。

「地震?」

誰かがそう言った瞬間。

天井を突き破り、一つの巨大な隕石が落ちてきた。

「危ない!!」

轟音。

爆発。

炎。

壁が吹き飛ぶ。

天井が崩れる。

悲鳴が響く。

私は何が起きたのか分からなかった。

気付けば床に倒れていた。

視界が赤い。

熱い。

煙で何も見えない。

「お母様……?」

返事はない。

「お父様……?」

動かない。

瓦礫の下で二人は血を流していた。

「いや……。」

涙が止まらない。

その時だった。

「マリア!」

ロイスお兄ちゃんが私の手を掴んだ。

「無事か!?」

「う、うん……。」

「良かった。」

その瞬間だった。

ロイスお兄ちゃんの目の前に隕石が転がる。

「これは……。」

ロイスお兄ちゃんは怒ったような顔で拳を握った。

そして隕石を殴る。

パァァァァン!!

眩しい光が弾けた。

「ロイスお兄ちゃん!!」

次の瞬間、ロイスお兄ちゃんの身体は信じられない勢いで遠くへ吹き飛んでいった。

「いやぁぁぁぁ!!」

私は必死に手を伸ばす。

届かない。

どんどん遠ざかっていく。

私は震える足で隕石へ近付いた。

「ロイスお兄ちゃん……。」

そう呟きながら隕石へ手を伸ばす。

冷たい。

そう思った瞬間。

激しい痛みが身体中を駆け巡った。

そして私の意識は闇へ沈んでいった。

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