「目覚め」
ビッグファミリーは集落へ残ることになった。壊した家を直し、焼いた畑を耕し直し、住民達へ頭を下げながら毎日働いていた。最初こそ住民達も距離を置いていたが、少しずつ笑顔が増えていった。サナージュはその光景を静かに見つめていた。未来では決して見ることのできなかった景色だった。
「少し変わったな。」
ロイスが隣へ立つ。
「ああ。」
「未来ではこんな風にはならなかった。」
ロイスは小さく笑う。
「未来か。」
「俺はまだ全部は信じられないけど、お前が未来から来たって話は本当なんだろうな。」
「信じなくてもいい。」
「俺は変えるために来た。」
ロイスは肩を叩いた。
「なら最後まで付き合う。」
サナージュは少しだけ笑った。
その日の夜だった。
四人は集落で夕食を食べ、静かな時間を過ごしていた。
「今日のご飯美味しい。」
マリアが嬉しそうに言う。
「いっぱい食べなさい。」
ささが笑う。
「子供なんだから。」
「子供扱いしないで。」
「まだ十二歳でしょ。」
「ささも十七歳じゃない。」
四人は笑った。
その時間は穏やかだった。
サナージュは思った。
こんな時間がずっと続けばいい。
そう思った。
その瞬間。
景色が揺れた。
「……え?」
空が歪む。
地面が溶ける。
住民達の姿が白く霞んでいく。
「何だ……。」
ロイスが立ち上がる。
「サナージュ!」
ささが叫ぶ。
「これは違う!」
マリアも周囲を見回す。
「景色が消えてる!」
集落が崩れていく。
人々が光になって消えていく。
サナージュは手を伸ばした。
届かない。
誰にも。
「やめろ!!」
叫んだ。
世界が真っ白になった。
サナージュは勢いよく目を開ける。
「はぁっ!!」
息が荒い。
周りを見る。
そこは集落ではなかった。
暗い洞窟。
割れた隕石。
そして冷たく横たわるささの亡骸。
「……。」
サナージュは動かなかった。
夢ではない。
現実だった。
集落も住民達もビッグファミリーとの和解も全部存在しない。
あれはゼルクロノスが見せた仮想現実だった。
「そうか……。」
サナージュは静かに呟く。
「可能性を見せてくれたのか。」
涙が一滴だけ落ちた。
「ゼルクロノス。」
「いい世界だった。」
「ありがとう。」
その言葉と共にサナージュは隕石へ手を伸ばした。
次の瞬間、世界が再び大きく歪み始めた。
そしてサナージュは、もう一度過去へと戻ることになる。
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