「未来を知る者」
回転する矢がサナージュの目の前を通り過ぎる。
「っ!!」
サナージュは反射的に身体をひねった。
矢はそのまま木へ突き刺さる。
「危なかった。」
少女がサナージュの前へ飛び出してくる。
「大丈夫!?」
その顔を見た瞬間、サナージュの身体が止まった。
「……ささ。」
少女は首を傾げた。
「え?」
サナージュは目を見開く。
生きている。
血まみれではない。
笑っている。
「本当に……。」
涙がこぼれそうになる。
「生きてる。」
少女は困ったような顔をした。
「どうしたの?」
サナージュは何も答えられなかった。
もう二度と会えないと思っていた。
墓まで作った。
それなのに目の前には元気な姿のささがいる。
「よかった……。」
思わず小さく呟く。
「え?」
ささは不思議そうにサナージュを見る。
その時だった。
気絶していた少年がゆっくり起き上がる。
「くそっ……。」
回転の能力者だった。
ささは男を見て構える。
「まだ動けるのね。」
脚に力を入れる。
蹴りを放とうとした瞬間だった。
「待って!!」
サナージュが前へ出る。
「え?」
「姉さん」
「え?なんで知って…」
「その人を殺さないで。」
ささは驚いた。
「なんで?」
「話がある。」
少年は震えながら後ずさる。
「た、助けてくれ……。」
サナージュは男の前まで歩く。
「名前は?」
「ロイス。」
「能力は?」
「回転……。」
サナージュは静かに頷く。
「ロイス。」
「な、なんだ。」
「仲間になれ。」
「……は?」
「サナージュ。」
ささが止めようとする。
「この人さっき私たちを殺そうとしたのよ?」
「知ってる。」
「じゃあ。」
「それでも仲間にする。」
ささは黙り込む。
サナージュの目は真剣だった。
「どうして?」
サナージュはロイスを見る。
「このバトルロワイヤルを終わらせる。」
「殺し合いじゃなく。」
「和解で終わらせる。」
森が静まり返る。
ロイスは呆然としていた。
「何を言ってる。」
「本気だ。」
サナージュは一歩近付く。
「ただし。」
「俺を裏切るな。」
「ささや村の人たちを人質にするな。」
「もしそんなことをしたら。」
サナージュは静かに拳を握る。
「その時は容赦なくお前を倒す。」
ロイスは唾を飲み込んだ。
目の前の少年から、とてつもない覚悟を感じた。
「……分かった。」
「俺は仲間になる。」
サナージュは小さく笑う。
「ありがとう。」
その笑顔を見て、ささはますます不思議そうな顔をした。
「あなた、本当に何者なの?」
サナージュは森の奥を見つめる。
「未来を変えに来た者。」
その言葉だけを静かに残した。
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