「繰り返される絶望」
サナージュは目を見開いた。
目の前には、あの日見た隕石が静かに輝いていた。
「……戻った。」
震える手を見つめる。小さな手だった。
「十歳……。」
周囲を見回す。
森も。
風も。
鳥の鳴き声も。
全てがあの日と同じだった。
「ゼルクロノスの攻撃で……時間が。」
サナージュは隕石を見つめた。
「あれに触れば能力が手に入る。」
だが首を横に振る。
「いや。」
サナージュはそう思った。能力を手に入れたから全てが始まった。ならば触らなければ未来は変わるかもしれない。
「今回は触らない。」
サナージュは隕石に背を向けた。
森を抜け、村へ向かって走る。
「これでいい。」
サナージュはそう信じていた。
村へ戻ると、いつも通りの景色が広がっていた。
子ども達が遊び、大人達が畑を耕している。
「よかった……。」
サナージュは胸を撫で下ろした。
「これなら。」
家へ帰る。
「ただいま。」
誰も返事をしない。
家には誰もいなかった。
「みんな外かな。」
その時だった。
ドゴォォォン!!
地面が揺れた。
村の入口から炎が上がる。
「なっ!?」
悲鳴が響いた。
「逃げろ!!」
サナージュは駆け出した。
目の前では村人達が次々と倒れていく。
炎。
爆発。
光。
あらゆる能力が村を襲っていた。
「やめろ!!」
サナージュは叫ぶ。
しかし能力はない。
ただの十歳の子どもだった。
敵の一人がサナージュを見る。
「まだ生き残りがいたか。」
炎の球が飛んでくる。
サナージュは避ける。
「くっ……。」
もう一発。
避ける。
だが次々に飛んでくる。
能力がない。
弾けない。
走ることしかできない。
「なんでだよ!!」
家が燃える。
畑が燃える。
村人達が倒れていく。
サナージュは何もできなかった。
「誰か……。」
助けられない。
何も守れない。
「嫌だ……。」
最後の一人が倒れた。
静寂。
燃え盛る炎だけが音を立てる。
敵がサナージュへ歩いてくる。
「終わりだ。」
剣が振り上げられる。
「まだ……。」
サナージュは拳を握る。
「まだ終わりたくない。」
剣が胸を貫いた。
激痛が全身を走る。
「がっ……。」
視界が赤く染まる。
膝から崩れ落ちる。
「こんな終わり……。」
意識が遠のく。
サナージュは最後に燃え尽きる村を見た。
「……。」
瞬きをした。
「……え?」
森だった。
目の前にはあの隕石が静かに光っている。
「また……戻った。」
サナージュはゆっくりと隕石へ近付く。
「今度は。」
迷いはなかった。
「触る。」
サナージュが手を伸ばした、その瞬間だった。
ヒュンッ!!
一本の矢が高速で回転しながら飛んできた。
「危ない!!」
少女の声が森に響いた。
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