「侵攻作戦」
数千のレギオンが一斉に動き出した。
地底都市が震える。
避難民たちの悲鳴が響く。
ルクスは前へ出た。
逃げない。
もう決めている。
夢を守る。
そのために戦う。
ただそれだけだった。
レギオンの群れが押し寄せる。
ルクスはスパイラルを発動した。回転が身体の周囲を包み込み、盾となって広がる。激突したレギオンたちが弾き飛ばされる。しかし次の瞬間には別の個体が飛び込んでくる。
終わらない。
まるで波だ。
それでもルクスは退かなかった。
拳を振るう。
回転が相手を巻き込み、まとめて吹き飛ばす。
地面が砕ける。
壁が崩れる。
広場そのものが戦場になっていた。
だがレギオンたちの動きが突然止まる。
全員が後方へ下がった。
道が開く。
その先に立つのは巨大な指揮官だった。
黒い装甲。
赤い瞳。
圧倒的な存在感。
「対象ルクス」
低い声が響く。
「排除を開始する」
次の瞬間だった。
指揮官の姿が消える。
ルクスは反射的にスパイラルを展開した。
轟音。
衝撃が全身を襲う。
身体が吹き飛ぶ。
壁に叩きつけられる。
息が詰まる。
強い。
今までのレギオンとは比較にならない。
ルクスは立ち上がる。
指揮官はゆっくり歩いてくる。
焦りも怒りもない。
ただ任務を遂行する機械のようだった。
「なあ」
ルクスは息を整えながら言った。
「お前らは何なんだ」
返答はない。
だが少しだけ間を置いてから指揮官は答えた。
「我々はゼルクロノスレギオン」
「地球侵攻軍」
ルクスの眉が動く。
侵攻軍。
その言葉が妙に引っかかった。
指揮官は続ける。
「地球は最後の対象」
その瞬間。
ルクスの背筋を冷たいものが走った。
最後。
つまり。
「他にもあったのか」
指揮官は答えない。
だが沈黙そのものが答えだった。
地球だけじゃない。
他にも星があった。
他にも世界があった。
そして。
そいつらは全て滅んだ。
ルクスは拳を握る。
怒りが湧いた。
目の前の敵に対してではない。
そんなことを平然と行う存在に対して。
「ふざけるな」
回転が加速する。
ルクスは踏み込んだ。
拳を叩き込む。
指揮官も迎え撃つ。
衝突。
轟音。
空気が爆発する。
周囲のレギオンたちが吹き飛ぶ。
しかし今度はルクスが押した。
一歩。
二歩。
指揮官が後退する。
赤い瞳が揺れる。
初めてだった。
こいつが動揺した。
「解析不能」
指揮官が呟く。
ルクスはさらに踏み込む。
スパイラルを重ねる。
回転を拳へ集中する。
殴る。
吹き飛ぶ。
殴る。
吹き飛ぶ。
何度も。
何度も。
夢を奪われた人たちの顔が浮かぶ。
少女。
少年。
家族。
地底都市。
全部。
全部守りたかった。
だから止まらない。
そして最後の一撃が炸裂した。
指揮官の装甲が砕ける。
巨大な身体が膝をつく。
広場が静まり返る。
レギオンたちも動かない。
指揮官は壊れた顔を上げた。
「ありえない」
その言葉は初めて感情が混じっていた。
「なぜ」
ルクスは答える。
「お前らが奪おうとしてるものを守りたいからだ」
指揮官は沈黙する。
理解できないという顔だった。
そして最後に空を見上げるように顔を上げた。
「終焉超時空魔皇帝ゼルクロノス様」
その名前が響く。
誰も知らない名前。
だがその一言だけで圧倒的な重みがあった。
「報告します」
指揮官の身体に亀裂が走る。
「地球に」
一瞬だけ赤い瞳がルクスを見た。
「危険個体を確認」
次の瞬間。
指揮官の身体が崩壊した。
沈黙。
そして。
その直後だった。
地底都市全体を揺るがすほどの振動が襲う。
誰もが顔を上げる。
ルクスも見上げた。
遥か上。
地上へ続く巨大な昇降路の先。
そこから見える空間が赤く染まっていた。
まるで空そのものが燃えているようだった。
そして。
無数の影。
一つや二つではない。
数百。
数千。
数万。
それはレギオンだった。
今まで戦ってきた軍勢など比較にならない。
本隊。
本当の侵攻軍。
誰かが呟く。
「嘘だろ……」
ルクスも言葉を失った。
指揮官は先遣隊に過ぎなかった。
本当の戦いは。
今から始まる。
そして赤く染まった空の向こうで。
何かがこちらを見ていた。
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