「コレクションズ」
森の奥を歩いていた。
サナージュは不満そうだった。
「帰りたい」
「無理」
「帰る」
「死ぬ」
「帰りたい」
「しつこい」
ささは呆れたようにため息を吐いた。
サナージュは木の根に座り込む。
「だって意味わかんないだろ。昨日まで普通だったんだぞ」
「みんなそう」
「俺はみんなじゃない」
「でも参加者」
「嫌だ」
「残念」
サナージュは地面に寝転がった。
ささはそんな彼を見下ろす。
「本当に危機感ないね」
「そうか?」
「そうだよ」
ささは腰のポーチから何かを取り出した。
小さな水晶だった。
「ほら」
「何それ」
「コレクションズ」
「こ、れくしょんず?」
「能力を持った道具」
サナージュは起き上がる。
「能力を持った道具?」
「そう」
ささは水晶を握った。
すると光が溢れる。
次の瞬間。
空中に水の球が現れた。
「うおっ!?」
「飲む?」
サナージュは恐る恐る受け取る。
飲む。
普通の水だった。
「すげぇ」
「便利でしょ」
「便利だな」
「これは水を作るコレクションズ」
「そんなのあるのか」
「いっぱいある」
ささはさらに見せる。
小さなナイフ。
傷薬。
片眼鏡。
指輪。
様々な道具。
「全部能力持ち」
「ずるくね?」
「集めた」
「どこで」
「倒した相手から」
サナージュは少し黙った。
倒した相手。
つまり。
殺した相手。
ささは気にした様子もなく続ける。
「私はコレクターだから」
「人を倒して集めたのか」
「うん」
サナージュは複雑な顔をした。
だが今は深く考えなかった。
その時だった。
ガサッ。
茂みが揺れる。
二人は振り向いた。
誰もいない。
だが。
また揺れる。
ガサガサ。
ささの目が鋭くなる。
「いるね」
「敵?」
「多分」
サナージュは緊張した。
心臓が早くなる。
ドクン。
ドクン。
嫌な予感がした。
そして。
茂みから男が飛び出した。
大剣を持っている。
筋肉質な大男だった。
「見つけたぞォ!!」
サナージュは固まる。
男は迷わず剣を振り下ろした。
「死ねぇ!!」
ガァン!!
剣が弾かれる。
男が目を見開いた。
「何!?」
サナージュも目を見開いた。
「あ」
発動した。
能力だ。
無敵。
ささが叫ぶ。
「サナージュ!」
男が再び剣を振る。
ガン!
ガン!
ガン!
全部弾かれる。
だが。
四撃目。
ズバッ。
剣が腕を切った。
「あああああああ!!」
血が飛ぶ。
サナージュは悲鳴を上げた。
男が笑う。
「能力切れか!」
ささが舌打ちした。
「インターバル」
「え?」
「能力に隙がある!」
男はさらに剣を振る。
ズバッ。
太ももが裂ける。
「ぎゃあああああ!!」
サナージュは転がった。
痛い。
熱い。
怖い。
死ぬ。
そう思った。
ドクン。
心臓が跳ねる。
次の瞬間。
ガキィン!!
剣が弾かれた。
能力が戻った。
男が驚く。
「またか!?」
ささが飛び出す。
「はああああ!!」
蹴り。
男の顎が砕ける。
さらに回し蹴り。
骨が折れる音が響く。
男が吹き飛ぶ。
だがまだ生きていた。
「ぐっ……」
「しぶとい」
ささは男の喉元に手を当てる。
サナージュは見た。
ささの目を。
何の迷いもなかった。
ザシュ。
喉が切り裂かれる。
血が噴き出した。
男は崩れ落ちる。
動かなくなった。
静寂。
サナージュは震えていた。
「……死んだ?」
「死んだ」
「お前」
「何?」
「慣れてるのか」
ささは少しだけ空を見た。
「慣れた」
その言葉は妙に重かった。
サナージュは何も言えなかった。
自分の腕から血が流れている。
痛い。
怖い。
だけど。
それ以上に。
目の前で人が死んだことが頭から離れなかった。
そしてささは静かに言う。
「サナージュ」
「……」
「次は自分でやることになる」
サナージュは何も答えられなかった。
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