「帰還」
白い世界に静寂が訪れていた。
最後のゼルクロノスも消えた。
残っているのはゼルクロノス一人だけ。
長かった。
本当に長かった。
何十億時間。
何百億時間。
それ以上かもしれない。
数えることすら途中でやめていた。
ゼクロスとも話した。
ゼルクルスとも話した。
その他のゼルクロノス達とも話した。
怒鳴られた。
殴られた。
恨まれた。
許されなかった者もいた。
それでもゼルクロノスは逃げなかった。
全部聞いた。
全部受け止めた。
そして今。
ようやく終わった。
「終わったか」
声が聞こえた。
ゼルクロノスは振り返る。
そこにいたのはレグルスだった。
ピンク色の髪。
見慣れた姿。
ゼルクロノスは少し笑う。
「ああ」
レグルスも小さく頷いた。
「長かったな」
「本当にな」
しばらく沈黙が続く。
やがてレグルスが言った。
「帰るぞ」
ゼルクロノスは頷く。
次の瞬間。
白い世界が崩れ始めた。
役目を終えた世界。
自我を繋げる世界。
全てが光へ変わっていく。
ゼルクロノスは最後に一度だけ振り返った。
誰もいない。
だが。
どこかでゼクロス達の声が聞こえた気がした。
ゼルクロノスは前を向く。
そして光の中へ歩き出した。
視界が白く染まる。
そして。
気付けば元の時空に戻っていた。
風が吹いている。
懐かしい空気だった。
「帰ってきたな」
レグルスが言う。
ゼルクロノスは空を見上げた。
「そうだな」
その時だった。
遠くから誰かが走ってくる。
「師匠ぉぉぉぉぉ!!」
聞き覚えのある声。
ゼルクロノスは振り返る。
ラモンだった。
全力で走ってくる。
「ラモン」
ゼルクロノスがそう言った瞬間だった。
ゴンッ!!
拳が顔面にめり込んだ。
ゼルクロノスは吹き飛ぶ。
地面を何回も転がった。
「ぐはっ!?」
ラモンは怒っていた。
とても怒っていた。
「師匠!!」
「なんだよ!!」
「なんだよじゃないですよ!!」
ラモンは怒鳴る。
「あなたのせいでどれだけ大変だったと思ってるんですか!!」
「すまん」
「軽いんですよ!!」
「すまん!!」
「俺ブラックホールに吸い込まれたんですよ!!」
ゼルクロノスは黙る。
事実だった。
完全に自分のせいだった。
ラモンはさらに続ける。
「数年間ですよ!!」
「数年間!!」
「俺どれだけ苦労したと思ってるんですか!!」
「本当にすまん」
ゼルクロノスは頭を下げた。
ラモンはしばらく怒っていた。
だが。
やがて大きなため息を吐く。
「はぁ」
そして少し笑った。
「本当に帰ってきたんですね」
ゼルクロノスも少し笑う。
「ああ」
「おかえりなさい」
その言葉に。
ゼルクロノスは少しだけ目を見開いた。
そして。
「ただいま」
そう答えた。
レグルスはその様子を見ながら肩をすくめる。
「ちなみに」
ゼルクロノスが振り返る。
「なんだ」
レグルスは呆れたような顔で言った。
「お前が暴走してた間な」
「……」
「俺は別宇宙に行ってた」
「知ってる」
「知ってるじゃねぇ」
レグルスはため息を吐く。
「お前のエネルギー波のせいで宇宙中が大混乱だったんだ」
ゼルクロノスは何も言えない。
「失ったものの世界と全宇宙を繋げてなかったら被害はとんでもないことになってたぞ」
ゼルクロノスの顔が引きつる。
「そうだったのか」
「そうだったんだよ」
レグルスは本気で疲れていた。
ラモンも頷く。
「本当に大変だったんですからね」
ゼルクロノスはしばらく黙る。
風が吹く。
空を見上げる。
宇宙はまだ存在している。
壊れていない。
終わっていない。
たくさんの人達のおかげだった。
ゼクロス。
ゼルクルス。
レグルス。
ラモン。
そして無数のゼルクロノス達。
ゼルクロノスは静かに拳を握った。
もう逃げない。
もう目を背けない。
もう狂わない。
そう決めた。
「レグルス」
「なんだ」
「ラモン」
「はい」
ゼルクロノスは二人を見る。
そしてゆっくり言った。
「俺はもう狂わない」
レグルスは少し笑った。
「そうか」
ラモンも笑った。
「なら安心ですね」
ゼルクロノスも笑った。
長い旅だった。
本当に長い旅だった。
だが。
ようやく終わった。
終焉超時空魔皇帝ゼルクロノス。
全宇宙の特異点。
ファイナルエンダー。
その物語はここで幕を閉じる。
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