「飲み込まれた弟子」
「師匠ォォォォ!!」
ラモンは叫んだ。
だが声は虚空へ消える。
ブラックホールの重力はさらに強くなっていた。
身体が引き裂かれそうになる。
「クソォォ!!」
全力でエネルギーを放つ。
だが止まらない。
吸引力は増す一方だった。
ラモンは歯を食いしばる。
「こんなところで!!」
必死に抵抗する。
だが。
身体は少しずつ飲み込まれていく。
腕。
脚。
そして。
視界までもが黒に染まっていく。
「師匠!!」
最後の叫び。
次の瞬間。
グブォォォォン。
ラモンは完全にブラックホールへ飲み込まれた。
静寂。
誰もいない宇宙。
ブラックホールだけが回転を続ける。
その頃。
別次元。
ゼルクロノスは変わらず立ち尽くしていた。
「俺は」
小さく呟く。
「誰なんだ」
返事はない。
だが頭の中の声は止まらない。
『何故俺たちを吸収した』
『何故世界を壊した』
『何故生きている』
『何故だ』
『何故だ』
『何故だ』
「うるさい」
ゼルクロノスは頭を押さえる。
「うるさい」
力が漏れ出す。
空間が裂ける。
宇宙が震える。
だが本人は気付いていない。
自分が何をしているのか。
どれほどの被害を出しているのか。
何も。
ただ苦しかった。
だから壊していた。
だから吸い取っていた。
だから暴れていた。
何年もの間。
その暴走は止まらなかった。
ある宇宙では恒星系が消滅した。
ある宇宙では文明が滅びた。
ある宇宙では宇宙そのものが崩壊しかけた。
全て。
ゼルクロノスが無意識に放ち続ける力によるものだった。
そして数年後。
ある別宇宙。
無数の怪物が空を覆っていた。
異形の生命体。
宇宙の意志によって送り込まれた存在たち。
その中心で。
一人の男が立っていた。
ピンク色の髪。
鋭い眼差し。
レグルスだった。
周囲には無数の怪物の残骸。
戦いは終わっていた。
レグルスは大きく息を吐く。
「終わったか」
そして空を見る。
その瞬間。
遠くから異常なエネルギーを感じた。
レグルスの表情が変わる。
「またか」
その力を知っていた。
忘れるはずがない。
ゼルクロノス。
しかも以前より遥かに酷い。
「お前」
レグルスは拳を握る。
「何年暴れてやがる」
周囲の空間が歪む。
レグルスはその場から消えた。
向かう先は一つ。
暴走を続けるゼルクロノスの元だった。
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