「止まらない破壊」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
宇宙が軋む。
ゼルクロノスの周囲には無数のブラックホールが浮かんでいた。
それらは別次元を通り抜け。
様々な宇宙へ現れる。
惑星を飲み込む。
恒星を飲み込む。
銀河を歪める。
だがゼルクロノスは見ていなかった。
いや。
見ていても理解できなかった。
頭の中が混乱していたからだ。
「俺は」
「私は」
「僕は」
「ワシは」
言葉が混ざる。
自我が定まらない。
一人称が変わるたびにエネルギーが暴れる。
「違う」
ゼルクロノスは頭を抱えた。
「違う」
誰の記憶だ。
誰の感情だ。
誰の人生だ。
もう分からない。
何億ものゼルクロノスを吸収した代償は想像以上だった。
その時だった。
頭の中に声が響く。
『何故俺たちを吸収した』
ゼクロスの声。
ゼルクロノスの身体が震えた。
『仲間だと思っていたのに』
また聞こえる。
『お前は何も考えていないな』
今度はゼルクルスの声。
「やめろ」
ゼルクロノスは呟く。
『立てよ』
「やめろ」
『お前は何者だ』
「やめろぉぉぉぉ!!」
ドゴォォォォン!!
エネルギーが爆発した。
周囲のブラックホールがさらに巨大化する。
別宇宙。
ある星系。
そこでは人々が空を見上げていた。
突然。
空間が裂ける。
グブォォォン。
巨大なブラックホール。
誰も逃げられない。
星そのものが引き寄せられる。
都市が崩壊する。
海が空へ吸い上げられる。
そして。
惑星は消えた。
別の宇宙。
また別の宇宙。
同じことが起きていた。
全ての原因は一人。
ゼルクロノス。
暗黒空間の中心で立ち尽くしているだけの存在だった。
「静かになれ」
ゼルクロノスは呟く。
「頼むから」
だが静かにならない。
声は増え続ける。
記憶は増え続ける。
感情は増え続ける。
そして。
その苦しみが破壊となって宇宙へ放たれる。
ラモンは走っていた。
異常が発生した場所へ。
空間を飛び越え。
次元を渡り。
原因を探していた。
だが探すまでもない。
「師匠」
ラモンは拳を握る。
目の前には巨大なブラックホール。
その中心から漏れているエネルギー。
見間違えるはずがなかった。
ゼルクロノスの力だ。
「なんでだよ」
ラモンは悔しそうに呟く。
「せっかく帰ってきたのに」
その瞬間だった。
グブォォォォン。
ブラックホールが膨張した。
「なっ!?」
ラモンの身体が引っ張られる。
重力。
いや。
それ以上の何かだった。
「しまった!!」
急いで離脱しようとする。
だが遅い。
吸引力は凄まじかった。
「くっ!!」
全力で抵抗する。
それでも止まらない。
少しずつ。
少しずつ。
ブラックホールへ近付いていく。
ラモンの顔が歪む。
「師匠!!」
叫ぶ。
届くはずのない叫び。
それでも叫ばずにはいられなかった。
「目を覚ましてくださいよ!!」
だが返事はない。
遠く離れた別次元で。
ゼルクロノスはただ俯いていた。
そして。
ラモンの身体はブラックホールへ飲み込まれていった。
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