「進化特異点」
「うあああああああああああああああああ!!」
ゼルクロノスの叫びは止まらなかった。
身体中が光に包まれている。
骨が砕ける。
肉が裂ける。
魂そのものが作り変えられていく。
だが死なない。
ゼルクロノスコアの力がそれを許さなかった。
壊れる。
再生する。
壊れる。
再生する。
その繰り返しだった。
やがて。
変化が始まる。
赤と金のエネルギーが身体の奥へ沈んでいく。
暴走していた力が一つにまとまり始める。
「はぁ……」
「はぁ……」
ゼルクロノスは膝をついた。
呼吸が荒い。
だが。
分かる。
今までとは違う。
身体の中に宇宙そのものが入ったような感覚。
星の誕生。
銀河の消滅。
宇宙の膨張。
全てが理解できそうだった。
「これが……」
拳を握る。
その瞬間。
パキッ。
遠くの空間が割れた。
ゼルクロノスは目を見開く。
攻撃したわけではない。
ただ拳を握っただけだった。
「なんだよ……」
自分でも理解できない。
力が大きすぎる。
その時だった。
頭の中に声が響く。
――ゼルクロノス。
「誰だ」
――ゼルクロノス。
声はどこからともなく聞こえる。
だが敵意はない。
むしろ静かだった。
「誰なんだ」
――私はコア。
ゼルクロノスは固まった。
「コア……?」
――お前は取り込んだ。
――ならば知ることになる。
次の瞬間。
膨大な情報が流れ込んだ。
宇宙。
別宇宙。
無数の分岐。
無数のゼルクロノス。
そして。
全ての宇宙の終点。
「ぐっ……」
ゼルクロノスは頭を押さえる。
見える。
見えてしまう。
宇宙はいつか終わる。
全ての宇宙が終焉へ向かう。
そして。
終焉の先にある存在。
「なんだ……これ」
声が震える。
――お前だ。
「は?」
――宇宙が終わった時。
――お前になる。
ゼルクロノスの瞳が揺れた。
理解できない。
理解したくない。
だが。
情報は流れ続ける。
無数の宇宙。
無数の終焉。
全ての終点に立つ存在。
ゼルクロノス。
「俺が……?」
――そうだ。
――お前は特異点。
――全宇宙の特異点。
静寂。
ゼルクロノスは何も言えなかった。
その頃。
戦場では異変が起きていた。
「なんだこの圧力!?」
「動けない!」
「宇宙そのものが震えてるぞ!」
無数のゼルクロノス達が空を見上げる。
遠く。
宇宙の彼方。
巨大な赤金色の光が広がっていた。
ゼルクルスは歯を食いしばる。
「やっぱりか」
嫌な予感は当たった。
「あいつ……本当に取り込みやがった」
周囲のゼルクロノス達が振り返る。
「何をだ?」
ゼルクルスは答える。
「ゼルクロノスコアだ」
その瞬間。
空気が凍った。
誰もがその名前を知っていた。
知っているからこそ顔色が変わる。
「あり得ない」
「無茶だ」
「死ぬぞ」
ゼルクルスは首を振った。
「普通ならな」
その時だった。
ゴォォォォォォォォン!!
宇宙全体に衝撃が走る。
次の瞬間。
戦場の中央。
空間が裂けた。
グブォン。
巨大な裂け目。
そこから一人の男が現れる。
赤と金の姿。
だが以前とは違う。
周囲の空間が勝手に歪んでいる。
存在するだけで宇宙が悲鳴を上げていた。
「ゼルクロノス……」
誰かが呟く。
ゼルクロノスは何も言わない。
ただ戦場を見渡した。
無数のゼルクロノス達。
統一派。
個々派。
安定派。
全てを見渡す。
そして。
静かに口を開いた。
「終わらせる」
その一言だった。
だが。
誰も笑わなかった。
冗談に聞こえなかったからだ。
ゼルクルスは拳を握る。
「お前」
ゼルクロノスが視線を向ける。
それだけで空間が軋む。
「邪魔するのか」
低い声だった。
ゼルクルスは初めて感じていた。
恐怖を。
目の前にいるのは。
もう自分達と同じゼルクロノスではない。
何か別の存在へ変わり始めていた。
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