「ゼルクロノスコア」
ゼルクロノスは吹き飛ばされていた。
どれだけ飛ばされたのか分からない。
星々が後ろへ流れていく。
銀河が通り過ぎる。
宇宙そのものが線になっていた。
「ぐっ……」
ようやく勢いが弱まる。
ゼルクロノスは空間に爪を立てるように力を込めた。
ギギギギギ。
周囲の空間が歪む。
そしてようやく停止した。
「はぁ……」
「はぁ……」
口元から血が流れていた。
ゼルクルスの能力。
どこにいようと吹き飛ばす。
単純だが厄介だった。
「クソが」
ゼルクロノスは吐き捨てる。
だが。
怒りよりも別の感情が強かった。
頭の中で声が響く。
――なぜ私達は殺された。
「黙れ」
――なぜ私達は死ななければならなかった。
「黙れって言ってんだろ!!」
ゼルクロノスは拳を振るう。
衝撃波が宇宙を裂いた。
だが声は消えない。
むしろ大きくなる。
――返せ。
――返せ。
――返せ。
「うるさい」
ゼルクロノスは頭を抱えた。
被害者達の顔が浮かぶ。
あの世界で見た顔。
憎しみに満ちた視線。
怒り。
怨念。
全てが頭から離れない。
「力があれば」
ふと呟いた。
「もっと力があれば」
誰にも負けない力があれば。
誰にも否定されない力があれば。
そんな考えが浮かぶ。
その時だった。
遠くで光が見えた。
「……?」
ゼルクロノスは顔を上げる。
巨大な光。
恒星。
だが普通の恒星ではなかった。
赤と金。
まるで自分と同じ色。
そして。
感じる。
膨大なエネルギー。
今まで感じたこともない力。
「なんだ……」
ゼルクロノスは引き寄せられるように近付いた。
近付く。
近付く。
近付く。
やがてその全貌が見えた。
巨大だった。
銀河すら小さく見えるほど。
その中心で燃え続ける光。
まるで宇宙の心臓。
ゼルクロノスは息を呑んだ。
本能が理解する。
これは特別なものだ。
普通ではない。
「ゼルクロノスコア……」
なぜか名前が分かった。
誰かに教わったわけではない。
だが理解した。
ゼルクロノス世界の太陽。
ゼルクロノス達の根源。
その存在だった。
コアから光が漏れる。
呼んでいるようだった。
来いと。
手を伸ばせと。
力を得ろと。
ゼルクロノスはゆっくり近付く。
理性が警告していた。
危険だ。
触れるな。
やめろ。
だが。
別の声が響く。
力が欲しい。
もっと強くなりたい。
負けたくない。
否定されたくない。
「俺は……」
被害者達の声が響く。
――なぜ私達は殺された。
ゼルクロノスは歯を食いしばった。
「うるさい」
――なぜ。
「うるさい」
――なぜ。
「うるさい!!」
怒号が宇宙に響く。
そして。
ゼルクロノスはコアへ手を伸ばした。
触れた瞬間。
ゴォォォォォォォォォン!!
宇宙が揺れた。
「なっ!?」
光が爆発する。
全身が焼ける。
細胞が悲鳴を上げる。
魂が引き裂かれる。
「がああああああああああああああ!!」
ゼルクロノスは絶叫した。
コアが身体へ流れ込む。
止まらない。
膨大なエネルギー。
無限に近い力。
身体が耐えられない。
だが。
止まらない。
「うあああああああああああああ!!」
宇宙中に叫び声が響く。
赤い光。
金色の光。
黒い雷。
全てが混ざり合う。
その時。
遠く離れた戦場。
ゼルクルスが顔を上げた。
「なんだ?」
戦っていたゼルクロノス達も動きを止める。
宇宙の彼方。
巨大な光が見えた。
あり得ない規模のエネルギー。
ゼルクルスの顔色が変わる。
「まさか」
嫌な予感がした。
そして次の瞬間。
宇宙全体が震えた。
ゼルクルスは叫ぶ。
「ゼルクロノス……!!」
遠く離れた宇宙の果てで。
ゼルクロノスはなおも叫び続けていた。
身体の限界を超えながら。
力を求めながら。
進化を始めながら。
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