「選定」
ルクスは目を開けた。
真っ白だった。
空も。
床も。
壁も。
何もかも。
ただ一本。
巨大な塔だけが存在していた。
ルクスは息を呑む。
「……は?」
自分の声だけが響いた。
「ここはどこだ」
返事はない。
「俺は死んだはずじゃ」
その時。
声が聞こえた。
男でもない。
女でもない。
機械でもない。
生物でもない。
ただそこにある声。
宇宙の声。
「まずはお前に苦しみを与える」
ルクスは振り向く。
「誰だ!」
返事はない。
そして。
足元が消えた。
ルクスは落ちた。
真下へ。
塔の上から。
どこまでも。
どこまでも。
落ちる。
風が身体を叩く。
「うああああああああああ!!」
地面が近付く。
死ぬ。
そう思った瞬間だった。
時間が遅くなる。
ゆっくり。
ゆっくり。
ゆっくり。
落下が終わらない。
そして。
地面に触れた。
潰れる。
身体が。
だが終わらない。
激しい衝撃を一瞬で受けるはずなのに。
それが長く続く。
永遠のように。
骨が砕ける感覚。
肉が裂ける感覚。
内臓が押し潰される感覚。
終わらない。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
叫ぶ。
叫ぶ。
叫ぶ。
だが止まらない。
やがて。
時間が元に戻った。
一瞬だった。
だがルクスには永遠だった。
気付けば。
塔の上に戻されている。
無傷で。
「はぁ……はぁ……」
呼吸が乱れる。
震える。
そして。
再び声。
「お前は誰だ」
ルクスは答える。
「ルクスだ!」
即答だった。
宇宙は沈黙する。
そして。
再び床が消えた。
二度目。
三度目。
四度目。
何度も。
何度も。
何度も。
落ちる。
痛み。
恐怖。
絶望。
その全てを味わう。
そしてある時。
足の指に何かが絡みついた。
鋭い鞭のようなもの。
ルクスが見る。
「やめろ」
塔から落とされる。
引っ張られる。
激痛。
絶叫。
ルクスは叫んだ。
だが。
宇宙は聞かない。
ただ見ている。
試験官のように。
いや。
もっと冷たい。
観察者のように。
「お前は誰だ」
また聞かれる。
ルクスは叫ぶ。
「ルクスだ!」
「ルクスだ!!」
「ルクスだぁぁぁぁ!!」
宇宙は何も言わない。
ただ。
再び落とした。
何度も。
何度も。
何度も。
終わらない選定が続いていた。
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