「声」
「デミクロン」
その声を聞いた瞬間。
デミクロンの思考が止まった。
聞き間違えるはずがない。
絶対に。
ありえない。
その声は。
ルクスだった。
「な……」
声が出ない。
Zティターンはゆっくりとこちらへ近付く。
ドシン。
ドシン。
歩く度に基地が揺れる。
デミクロンは反射的にドラゴンヘッドを出した。
二本。
巨大な首。
牙を剥く。
だが。
Zティターンは止まらない。
結晶が光る。
そしてまた。
ルクスの声。
「デミクロン」
「キミはいいやつだ」
デミクロンの顔から血の気が引いた。
それは。
あの日。
塔の上で。
ルクスが言った言葉だった。
「なんで……」
Zティターンは答えない。
ただ歩く。
ルクスはベッドの上で見ていた。
嫌な予感しかしなかった。
あれはゼルクロノスじゃない。
もっと別の何か。
もっと気味の悪い何かだ。
そして。
Zティターンが手を伸ばした。
目標は。
ルクス。
明らかだった。
デミクロンが叫ぶ。
「させるか!!」
ドラゴンヘッドが飛ぶ。
轟音。
一直線。
Zティターンの首へ噛み付く。
ガギィィィィン!!
火花。
だが。
噛み切れない。
硬い。
異常な硬さ。
Zティターンは首を少し傾けた。
まるで観察するように。
そして。
次の瞬間。
空が光った。
バチィィィィィィィン!!!
雷。
だが普通じゃない。
何十本。
何百本。
それらが束ねられ。
一本になっている。
そして。
デミクロンへ。
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
直撃。
基地が吹き飛ぶ。
壁が消える。
床が砕ける。
熱風。
衝撃。
爆音。
ルクスは目を見開いた。
「デミクロン!」
煙。
煙。
煙。
何も見えない。
数秒後。
その中から影が現れる。
ドラゴンだった。
二本の首が球体を作り。
中にデミクロンを包んでいた。
ボロボロだった。
鱗は剥がれ。
肉は裂け。
焼け焦げている。
だが。
生きていた。
デミクロンは膝をつく。
血を吐く。
「がっ……」
腕が震える。
立てない。
それでも。
立つ。
Zティターンを見る。
ルクスを見る。
そして決めた。
「逃げるぞ」
ルクスは呆れた顔をした。
「は?」
「逃げる」
「お前を連れて」
ルクスは笑った。
乾いた笑いだった。
「無理だろ」
「見れば分かる」
右腕が無い。
左足も無い。
満身創痍。
まともに動けない。
だが。
デミクロンはルクスを持ち上げようとした。
その瞬間。
ブォォォォォォォォン。
回転。
ルクスの身体の周囲。
空気が捻れる。
回転が発生する。
デミクロンの手が弾かれる。
「くっ!」
もう一度。
弾かれる。
回転が勝手に防御している。
ルクス自身も制御できない。
Zティターンは近付いてくる。
時間が無い。
デミクロンは辺りを見る。
そして見つけた。
特殊装甲用強力爆弾。
基地防衛用。
戦車すら吹き飛ばす代物。
デミクロンは笑った。
「やるしかないか」
ドラゴンヘッドが現れる。
ボロボロのまま。
それでも現れる。
そして。
爆弾を咥える。
ルクスが叫ぶ。
「やめろ!」
聞かない。
ドラゴンが飛ぶ。
一直線。
Zティターンへ。
Zティターンは避ける。
だが。
デミクロンは笑った。
「一発だと思ったか」
もう一本。
もう一本のドラゴン。
同じ爆弾。
至近距離。
突撃。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
世界が白く染まる。
基地が吹き飛ぶ。
地面が抉れる。
爆風。
熱風。
衝撃。
ルクスの耳が聞こえなくなる。
その中で。
ほんの一瞬だけ。
聞こえた。
「ああああああああああああああああ!!!!!」
デミクロンの声だった。
悲鳴。
叫び。
断末魔。
全部混ざったような声。
そして。
静かになった。
ルクスの目が開く。
身体が震える。
まただ。
また目の前で。
また誰かが。
クソ。
クソ。
クソ。
逃げたい。
全部投げ出したい。
なのに。
どうして。
どうして俺は——
その時だった。
Zティターンが煙の中から現れた。
傷はある。
だが。
生きている。
ルクスは歯を食いしばった。
そして。
叫んだ。
「くああああああああああああああああああ!!!!!!」
回転が暴れ始めた。
面白ければブックマーク評価お願いします




