「Zティターン」
海が割れていた。
文字通り。
巨大な溝が海の真ん中を走っている。
海水は左右へ押し退けられ。
その底が露出していた。
そして。
その中心。
ゼルクロノスが立っていた。
五年前。
封印されたはずの存在。
雷。
台風。
嵐。
その全てを操る怪物。
ゼルクロノスはゆっくり顔を上げた。
生きている。
確かに生きている。
だが。
様子がおかしかった。
空から何かが降ってくる。
燃えながら。
大気を裂きながら。
一直線に。
ゼルクロノスへ。
ドゴォォォォォォォォォン!!!
衝突。
地面が吹き飛ぶ。
海底が砕ける。
世界が震える。
そして。
それはゼルクロノスへ入り込んだ。
胸から。
頭から。
身体の中へ。
ゼルクロノスが咆哮する。
『■■■■■■■■■■■■!!!!』
雷が暴れる。
嵐が暴れる。
だが。
数秒後。
静かになった。
あまりにも静かだった。
そして。
ゼルクロノスが顔を上げる。
顔の結晶。
そこに見たことのない光が灯っていた。
青白い光。
規則的に点滅する。
まるで。
機械のように。
その瞬間。
世界中の通信機器が狂う。
ノイズ。
ノイズ。
ノイズ。
そして。
一つの信号が発信された。
誰にも分からない。
だが。
知能がある。
知性がある。
それだけは分かった。
後に。
人類はその存在をこう呼ぶ。
Zティターン。
その頃。
セートラス軍基地。
警報が鳴り続けていた。
研究員達が走り回る。
兵士達も混乱している。
「観測不能!」
「なんだあれは!」
「ゼルクロノスの反応が変質した!」
「意味が分からん!」
ルクスはベッドの上で聞いていた。
嫌な予感しかしない。
そして。
その時だった。
基地の照明が消える。
バチッ。
真っ暗。
数秒後。
非常灯が点灯する。
赤い光。
気味が悪い。
「停電?」
デミクロンが呟く。
次の瞬間。
基地全体が揺れた。
ドゴォォォォン!!!
天井から砂が落ちる。
研究員が悲鳴を上げる。
兵士達も転倒する。
「攻撃だ!」
「敵襲!」
「どこからだ!?」
通信が飛び交う。
だが。
返事は無い。
そして。
基地外周。
見張り塔。
そこにいた兵士は見た。
黒い影。
空から降りてくる。
ゼルクロノス。
違う。
似ている。
だが違う。
兵士が叫ぶ。
「ゼルクロノスだ!!」
次の瞬間。
雷。
ドゴォォォォォォォン!!!
見張り塔が消し飛んだ。
兵士も消えた。
肉片すら残らない。
警報が鳴り響く。
『敵襲!!』
『敵襲!!』
『正体不明生命体接近!!』
基地中が地獄になる。
ルクスは起き上がろうとする。
無理だった。
右腕が無い。
左足も無い。
身体が言うことを聞かない。
「クソ……」
逃げたい。
だが逃げられない。
その時。
デミクロンが入ってきた。
血相を変えている。
「先輩!」
「なんだよ」
「基地が襲われてます!」
「見れば分かる」
ドゴォォォォォォン!!!
また爆発。
建物が揺れる。
天井に亀裂。
デミクロンの顔が青い。
ルクスは言った。
「何が来た」
デミクロンは答える。
「分かりません」
「でも」
「ゼルクロノスみたいなんです」
ルクスは黙る。
最悪だった。
そして。
その瞬間。
基地の壁が吹き飛んだ。
ドォォォォォォン!!!
鉄筋。
コンクリート。
全てが吹き飛ぶ。
爆風。
砂煙。
デミクロンがルクスを庇う。
そして。
煙の向こう。
立っていた。
巨大な身体。
黒い嵐。
雷。
そして。
青白く光る結晶。
Zティターンだった。
デミクロンは震える。
本能で分かった。
勝てない。
だが。
Zティターンは動かなかった。
ルクスを見ている。
じっと。
ずっと。
不気味なくらいに。
そして。
顔の結晶が光った。
ピカッ。
その直後。
声が響いた。
「デミクロン」
デミクロンの身体が固まる。
聞き覚えがあった。
その声は。
ルクスだった。
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