「回収」
「動いた!!」
ドクが叫んだ。
確かに見た。
ルクスの指が動いた。
ほんの少しだけ。
だけど確かに。
「レグルス!」
「見た!」
レグルスも駆け寄る。
ルクスの顔を見る。
血まみれだった。
右腕は無い。
左足も無い。
だが。
指が動いた。
「生きてる……!」
ドクの声が震える。
涙が溢れる。
「生きてるよ!」
ルクスは意識が無い。
返事もしない。
それでも。
希望だった。
さっきまで絶望しか無かった。
それなのに今は違う。
まだ助かるかもしれない。
まだ話せるかもしれない。
まだ生きられるかもしれない。
ドクはルクスの手を握る。
「ルクス」
「帰ってきて」
「まだ終わってないから」
その瞬間だった。
ドォン!!
大地が揺れた。
全員が顔を上げる。
セートラス軍だった。
装甲車。
兵士。
能力者。
大量の戦力が一気に突っ込んでくる。
レグルスが叫んだ。
「迎撃しろ!!」
日本軍も動く。
銃声。
爆発。
怒号。
戦場が再び動き出した。
その混乱の中。
デミクロンはルクスを見ていた。
生きていた。
本当に生きていた。
胸の奥が少し軽くなる。
だが。
次の瞬間。
別の声が聞こえる。
「確保しろ!」
「回転能力者を回収するんだ!」
セートラス軍だった。
デミクロンは顔をしかめる。
ルクスは重要人物だ。
捕まればどうなるか分からない。
いや。
分かっていた。
情報を吐かされる。
研究される。
解剖される。
それくらいは想像できた。
デミクロンは拳を握る。
そして走った。
レグルスが気付く。
「待て!」
デミクロンは無視する。
ドラゴンヘッドが現れる。
二本。
巨大な首。
咆哮。
ドゴォォォォォン!!
日本軍の進路を強引に塞ぐ。
その隙に。
デミクロンはルクスの元へ飛び込んだ。
ドクが叫ぶ。
「何してるの!?」
デミクロンは答えない。
ルクスを抱える。
重い。
だが持ち上がる。
「返して!!」
ドクが掴みかかる。
デミクロンは振り払う。
「どけ!!」
ドクが転ぶ。
レグルスが飛び出す。
だがドラゴンヘッドが立ち塞がる。
「貴様ァ!!」
レグルスの拳。
ドラゴンの牙。
衝突。
ドゴォォォン!!
地面が砕ける。
だが。
一瞬だけ。
本当に一瞬だけ。
その隙があれば十分だった。
デミクロンはルクスを担いで走る。
ドクが叫ぶ。
「返して!」
「返してよ!!」
涙声だった。
デミクロンの足が止まりそうになる。
だが止まれない。
止まったら。
全部終わる。
ルクスは意識が無い。
血も止まっていない。
今必要なのは感情じゃない。
処置だ。
生き延びることだ。
デミクロンは振り返らずに言った。
「死なせたくないなら」
声が震える。
「今は追うな」
ドクは固まった。
デミクロン自身も驚いていた。
なぜそんなことを言ったのか。
分からない。
敵だろ。
仇だろ。
それなのに。
口から出た。
レグルスが怒鳴る。
「待てデミクロン!!」
デミクロンは振り返らない。
走る。
走る。
走る。
ルクスを背負って。
血が自分の服に染み込む。
温かい。
まだ生きている。
そう思った。
やがて前方に輸送車が見えた。
セートラス軍の車両。
兵士が叫ぶ。
「回収成功か!?」
デミクロンはルクスを乗せる。
医療兵が駆け寄る。
そして。
全員の顔色が変わった。
「重症どころじゃない……」
「なんだこの出血量……」
「よく生きてるな……」
医療兵が応急処置を始める。
デミクロンは車両の外に立つ。
手を見る。
血だらけだった。
ルクスの血。
大量の血。
そしてふと思う。
俺は。
なんで助けたんだろうな。
輸送車が動き出す。
戦場から離れていく。
遠くで。
ドクの叫び声が聞こえた気がした。
だが。
もう戻れなかった。
輸送車はセートラス軍基地へ向かう。
そして。
ルクスの運命はさらに大きく動き始めようとしていた。
面白ければブックマーク評価お願いします




