「停止」
ルクスは動かなかった。
反応が無い。
呼吸も無い。
右腕が無い。
左足も無い。
地面には大量の血。
誰が見ても分かった。
まずい。
そんな言葉では済まない。
ドクが駆け出した。
今度はレグルスも止めなかった。
止める意味が無かった。
「ルクス!」
ドクはルクスの横に膝をつく。
肩を揺らす。
返事は無い。
「ルクス!」
もう一度。
返事は無い。
ドクの手が震える。
首筋に触れる。
脈を探す。
無い。
何度探しても無い。
「……え」
頭が理解を拒否する。
もう一度探す。
無い。
何度も。
何度も。
無い。
「嘘……」
ドクの顔から血の気が引く。
「嘘だよね……」
ルクスは動かない。
レグルスも近付く。
しゃがみ込む。
確認する。
そして。
顔を伏せた。
脈が無かった。
心臓が止まっていた。
ドクは首を横に振る。
「違う」
「違う違う違う」
涙が止まらない。
「起きてよ」
肩を揺らす。
「起きてよルクス」
返事は無い。
冷たくなり始めていた。
デミクロンはその光景を見ていた。
動けなかった。
ドラゴンも消えている。
能力が乱れていた。
自分がやった。
自分が。
腕を奪った。
足を奪った。
そして。
殺した。
「先輩……」
膝が震える。
怒りがあった。
憎しみもあった。
だけど。
本当に死ぬとは思っていなかった。
思いたくなかった。
デミクロンは後退る。
一歩。
また一歩。
息が苦しい。
吐き気がする。
ルクスが死んだ。
その事実が重かった。
レグルスは立ち上がった。
ゆっくり。
本当にゆっくり。
デミクロンを見る。
怒りは無かった。
だから余計に怖かった。
「……」
何も言わない。
ただ見ている。
デミクロンは耐えられなかった。
「俺は」
声が震える。
「俺は」
続かない。
何を言えばいいのか分からない。
復讐したかった。
それは本当だ。
だが。
今胸にあるのは達成感じゃない。
空虚だった。
ただ空っぽだった。
ドクはルクスの胸に耳を当てる。
聞こえない。
心音が。
聞こえない。
「いや……」
小さな声。
「嫌だ……」
ルクスの服を握る。
「やっと」
涙が落ちる。
「やっと普通に話せるようになったのに」
祭りの日を思い出す。
一緒に回った。
笑った。
花火を見た。
隣に座った。
あの時は続くと思っていた。
明日も。
来年も。
ずっと。
続くと思っていた。
「ルクス」
返事は無い。
「起きてよ」
返事は無い。
「お願いだから」
返事は無い。
レグルスは拳を握る。
震えていた。
親友を失った。
ルシカを失った。
ブイゼンも失った。
そして今。
ルクスまで失った。
「クソッ」
地面を殴る。
ドン!!
地面が砕ける。
「なんでだよ」
声が掠れる。
「なんでなんだよ」
誰に向けた言葉か分からない。
戦争か。
運命か。
自分か。
誰にも分からなかった。
その時だった。
ドクが何かに気付く。
「……え」
レグルスが振り向く。
ドクはルクスを見ている。
真剣な顔だった。
「待って」
「レグルス」
「まだ」
声が震える。
「まだ温かい」
レグルスの目が見開かれる。
ドクは再び胸へ耳を当てる。
聞こえない。
だが。
諦めなかった。
「お願い」
ルクスの胸に手を当てる。
「戻ってきて」
涙が落ちる。
「お願いだから」
誰も喋らない。
風だけが吹く。
そして。
ルクスの指先が。
ほんの少しだけ。
ピクリと動いた。
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